ヤンデックスは一言でざっくりいえば「ロシアのGoogle」のような会社で1997年に創業したロシアのテック企業。
記事のハイライト
- ヤンデックスのロシアにおける検索エンジンのシェアは54.8%とAndroidプリインストール戦法でシェアを奪ってきたGoogleに対して互角に戦っている。
- 検索広告を中心に保有するメディアやクライアント網によってロシアの広告マーケットシェアを20%獲得しているメディア・エンターテイメント企業でもある。
- Uberを打倒し、Uberのロシア現地法人を吸収合併する形で配車アプリで単独トップシェア。
ヤンデックス決算
Yandex (NASDAQ:YNDX) Q3
EPS $0.23 予想 +$0.01
売上 $496.6M 予想 +$28.62Mロシア最大の検索エンジン。
株価は時間外で+6%
検索以外の売上高比率が20%になった(主にUber現地法人を吸収合併した配車プラットフォーム事業)https://t.co/6cjuGRUy6T
PDF: https://t.co/NIq2rVY8vF pic.twitter.com/yMW49opw4F— 米国株 決算マン (@KessanMan) October 29, 2018
ヤンデックスは検索とメディア事業が主力
検索でトップシェアであると同時にヤンデックスはロシア最大のネットメディア企業でもあり「Zen」というニュースフィードサービスや、無料のEメール、リアルタイム交通情報と地図サービス、独自ブラウザ(Yandex.Browser)、音楽、ビデオ、フォトストレージなどユーザーがスマートフォンで必要とするようなサービスはほぼ網羅している。
その他、EC事業やUberのような配車アプリ事業なども行う。
ヤンデックスの検索エンジン事業を細かくみてみる
ヤンデックスの検索結果としての性能の評判はよく、Googleと同じく機械学習に基づく検索アルゴリズム(CatBoost)を導入している。
ヤンデックスのベースは独自開発の数理言語学技術で、ヤンデックス開発者のゴールは検索結果をはきだすだけではなく、ユーザーの意図を正確に理解できるアルゴリズムでユーザーの問題を解決するサービス、つまりAIアシスタント寄りの方向性を示唆している。
すでに同社はAI音声アシスタント「Alice」を開発している。
また、ヤンデックスはトルコ語のように検索エンジンとして難易度の高い言語に取り組むことも積極的で、ロシア以外にトルコ、ウクライナ、ベラルーシ、カザフスタンなどの旧ソ連諸国に進出しているがロシアとベラルーシ以外のシェアはGoogleが強い。
Yandexの検索エンジン VS Googleの検索エンジン
2004年にグーグルはロシアに進出した頃には、すでにロシアの検索エンジンはヤンデックスが主流で、Googleはシェアを取れず敗北したかに思われていた。
しかし、スマホ時代に移行し、AndroidスマートフォンにGoogleの検索含むアプリが独占的・優先的にプリインストールするよう圧力がかけられていたことから気づかないうちにデフォルト検索エンジンがGoogleに切り替わり、シェアを奪われていった。
具体的にはヤンデックスの検索エンジンなどGoogleの競合他社のアプリをスマホメーカーがプリインストールすることした場合、GoogleのGoogle Map、YouTube、Gmail、Google Playstoreを使用できなくすると圧力をかけていた。
マイクロソフトのOSでマイクロソフトのブラウザや検索エンジンがデフォルト強制になっているような話。
さすがにこのようなプリインストールの排他的商取引はひどいだろとヤンデックスは2015年にロシア連邦反独占庁(Federal Antimonopoly Service)へ異議申し立て、ようやく2017年にGoogleと和解し、2017年8月からデフォルトの検索エンジンを”自由選択”できるようになった。
その影響でヤンデックスのシェアが微弱に回復しているように見えるが今後のシェアトレンドに注目したい。
中国はGoogleを締め出しており、バイドゥ(Baidu)が独占的検索エンジンのポジションを維持しているが、ロシアはこれだけ制裁され、アメリカがロシア嫌いで叩きまくっているにも関わらずGoogleは締め出されていない。
それどころか、非常に公平にGoogleとYandexの自由競争の土壌を作っているように見受けられる。
「ヤンデックスはロシアでナンバーワンの検索エンジン」というスローガンを掲げて自社広告キャンペーンを開始したのは虚偽・誇大広告を禁止する競争保護法に抵触する可能性があるとして罰金を含め何らかの制裁措置を検討
Source: モーニングスター社(2017/07/28)
ロシア最大の通信事業会社ロステレコムがインターネット検索エンジン「スプートニク」を開設したり、プーチンがヤンデックス自体の独占も懸念しているということもあるかもしれない。
配車アプリ Yandex.Taxi の圧倒的シェア
売上の伸びはすごいが赤字もすごい。
2017年7月時点ではロシア、アルメニア、アゼルバイジャン、ベラルーシ、グルジア、カザフスタンの126の主要都市に進出。
ヤンデックス・タクシーは競合のUberより高いシェアで競争に勝ち、これ以上赤字を垂れ流さず利益率を高めることで合意し2017年7月にUberと合併し圧倒的シェア(8割)の配車サービスとなった。
株式の約6割をヤンデックスが握り経営トップもヤンデックスが指揮する。
最終的には上記動画のような”自動運転のヤンデックスタクシー”がロシア中を駆け巡るのかもしれない。
苦戦のEC事業
ロシアにはロシア版Amazonといわれているozonなど強い競合がいるためEC事業は競争が激しい。
検索+ECで強い企業は見たことがない。ECに関してはGoogleもダメだしバイドゥもダメだし。
決済ではYandex.Moneyを展開していたり、色々手を出してはいるし、競合が強いことを考慮すればEC事業も健闘している。
クラシファイド事業は買収で補強
ヤンデックスが2014年に1億7500万ドルで買収した自動車クラシファイドサイトのAuto.ruを筆頭に、不動産のYandex.Realty(競合は一部Avito.ruなど)、求職のYandex.Jobs(競合はHeadhunter.ruやSuperjob.ruなど)、旅行のPlicelineのようなYandex.Travelなどもある(競合はOktogo.ruなど)。
これがAuto.ruのキャプチャだが、このように三行広告的な売買のプラットフォームを提供している。
パーソナライズド・ニュースフィード・サービスのZen
パーソナライズド・ニュースフィード・サービスで、ニュースを見る時の起点をおさえているのは強い。
ロシア最大のSNSのVKontakteや世界最大のSNSであるFacebookよりもこの領域で伸びているのは期待できる。
ヤンデックスの業績推移
ロシアの制裁や、ロシアの通貨であるルーブルの激しい動きの影響もあるのでなんともいえないが、まずはGoogleとのシェア争いの今後の推移に注目したい。
また、その他事業の展開余地として、自動運転関連やAIスマートスピーカーなども想定されている。
Googleも自動運転(Waymo)に力をいれ、中国の検索大手バイドゥが自動運転のアポロ計画を発表し主要50社を取り込んだように、検索エンジン会社は自動運転に足を踏み込みたがるようで、Yandexも「Yandex.Navigator」というサービスがトヨタやホンダなどの一部車種にされ、ロシア市場向けの車にヤンデックスのロシアに特化したサービスを統合させるメリットを主張している。
ロシアの検索エンジンシェア
AndroidにGoogleの検索含むアプリの排他的プリインストール圧力の件で、ロシア独占禁止当局に異議申し立てしていた件で和解し2017年8月からようやく検索を自由選択できるようになったが、結局Googleがシェアを取り戻しているのが興味深い
Yandexhttps://t.co/1YdIfwOXMq pic.twitter.com/xsoSrm7SLK
— 気になる企業調べる🐘 (@kininaruzou) October 28, 2018
ヤンデックス(YNDX)株価チャート
原油安や制裁によるロシア悲観が底打ちしそれに応じてヤンデックスも再評価され、株価は加熱している。短期的な割安時期は去ってしまった。
米国株中心のアメリカ部ではあるが、Yandexは米国のNasdaqに上場しており、米国以外の市場に目を向けている読者のためにもカバー範囲を拡げていく予定だ。
ロシアの人口は増加中。懸念されていたロシアの出生率が大幅反転した理由は、プーチン大統領が少子化対策を重視し取り組んだ結果導入されたマテリンスキー・キャピタル(母親資本)という制度で、子供を2人産んだら平均年収くらいの用途(住宅と教育)が決まったお金がもらえるというもの。 pic.twitter.com/ZMkulD7JN4
— アメリカ部/米国株投資アンテナ (@america_kabu) 2017年10月4日
ロシアの人口問題は出生率改善で悲観は底打ちし、個別株投資が難しいロシア株においては稀少な存在ではある。
ロシア株はETF投資するとエネルギーと鉱業だけでWeightが半分を超えてしまう。
具体的に、ロシア株式指数RTSに連動させるとWeightはこうなる。