ウェイスト・マネジメント(Waste Management, Inc.)は米国とカナダに2100万人以上の顧客を抱える北米のゴミ収集・廃棄物処理最大手。北米に1200カ所を超える廃棄物施設を有し、個人・法人など幅広い顧客にゴミ処理サービスを提供する。
ウェイスト・マネジメント株価チャート
ゴミ埋立地から再生エネルギーを作り出す
埋め立てられたゴミの山に埋め込まれたパイプを通じてゴミが腐敗するなどして出たガス(landfill-gas つまり埋立地のメタンガス等)を取り出し、それを電力として変換。
その電力を50万世帯に電力を供給している再生エネルギープロバイダーでもある。
つまり、家庭ごみのほとんどはエネルギーの元という見方もでき、それゆえ、ゴミ処理は(競争が適度の範囲では)儲かるビジネスとなっている。
それでも、電力販売のボラティリティに左右されないために2014年に子会社のエネルギー販売部門のWheelabratorを売却するなど、あくまでコアは廃棄物処理事業だ。
アメリカでは埋立地は数十年新設されておらず参入障壁も高い。WMは250以上の埋立地を所有している。
実際にランドフィル・ガスを再生エネルギーにする以外にも、固形廃棄物(以下、MSW)をエネルギーとして有効活用するのはWMの出資先パートナーであるファルクラム・バイオエナジー(Fulcrum BioEnergy)だ。
ファルクラムは都市ごみ(MSW)を再生可能なジェット燃料に転換する施設を展開する。
すでに同業のウェイスト・コネクションズ(Waste Connections)が長年ファルクラムのMSW供給パートナーだったが、ウェイスト・マネジメントも2011年にファルクラムに出資し、MSW供給パートナーとなっている。
このジェット燃料は同じくファルクラムの投資元であるユナイテッド航空が環境に優しい航空バイオ燃料として使用する。
リサイクルサービスプロバイダーとして
また、北米個人客向け最大のリサイクルサービスを擁するウェイスト・マネジメントはZERO Waste(日本でいうゴミ0運動)も含め環境に配慮したゴールを手助けするヴィジョンを持ち、2020年までに2000万トンのリサイクルを達成することを目標としている(すでに年1500万トンのリサイクルは達成している)
そうしたことからも、社会の持続可能性を重視したファンドなどから投資先として選出されやすく、一時期はビル・ゲイツ財団の投資先だったこともある。
ウェイスト・マネジメントの業績推移グラフ
ウェイストマネジメント決算まとめ
・北米最大のごみ収集・廃棄物処理企業
・ビル・ゲイツ財団が長期投資
・埋立地ガスが伸びるが住宅向けとリサイクルが伸びていない
・買収で成長。競合他社とはドミナントエリアを分け合う。https://t.co/1Ri7Jdargl— 米国株 決算マン (@KessanMan) February 18, 2019
買収による成長
創業当初はゴミ収集専門だったウェイスト・マネジメントは、1971年の上場以来現在に至るまで数百社以上の廃棄物処理業者の買収による成長を果たし、その規模によるスケールメリット(収集する際は顧客密度が重要となる)を強みとしている。
2008年には米廃棄物処理業界で1位のWMに次ぐ2位のリパブリック・サービシズ(RSG)が当時同業3位アライド・ウェイスト・インダストリーズを買収することをWMが阻止するため、RSGに対し買収提案をしたが拒否され、結局2位と3位の合併を許し、アメリカにおいてはWMとRSGがシェアとして2強という構図となっている。
利益の源泉である米国に回帰
北米で寡占状態にある同社だが、海外にも目を向けていなかったわけではない。
1970年代から、2000年代まで15ヶ国以上に及ぶ処分場の買収や契約の獲得などグローバルな展開をみせていた。
近年は上海に7カ所のごみ焼却発電所と5カ所のごみ処理中継所を所有している2004年設立の上海環境集団有限公司の株式4割を取得し廃棄物分野のBOT事業(民間で施設を建設・運営したあとに官に売却する方式)の展開に期待していたが、結局、上海城投控股(ホールディングス)に持ち株を譲渡(つまり上海城投が買い戻し子会社化)し2013年には撤退した。
現在は北米以外の海外事業は撤退・売却しアメリカにおける足場を強固にすることに注力しているが、WMは今後もM&A戦略は成長ドライバーとして掲げており、医療廃棄物分野にも意欲を示している。
シンプルなゴミ出しと効率的な選別
多民族国家であるアメリカでは複雑なゴミの分別は好まれない。
WMでは資源化の際のクオリティは落ちるとしても、資源化自体の率を上げることを優先する「single-stream recycling」考えの下、缶、瓶、ペットボトル、ダンボール、紙類などの資源ゴミを”すべてひとつのゴミ容器に“まとめて収集し、処理施設で数段階の機械選別によって効率的に分別している。
また、収集はロボットアームを稼働させてドライバーが収集車を降りることなくゴミを回収できる効率の良い方式だ。このロボットアームでの一括回収を容易にするためにも資源ゴミは1つにまとめた方が良いと判断されたのであろう。
天然ガス車の配備で環境に配慮
シェールガス革命により安価になった天然ガスは天然ガス自動車(NGV)の台頭を促した。
WMも2012年から2014年までの間に購入した自社ゴミ収集運搬等のトラックの80%が天然ガス車になった。
これまでのディーゼルトラックよりも高価な天然ガス車だが、1年でその価格差と同等かそれ以上の燃料費の削減を可能とした。
天然ガスはディーゼルやガソリンより大気汚染も抑えられることから、環境に配慮するという企業のヴィジョンにも適合する戦略となっている。
粉飾決算スキャンダル
1998年に発覚した粉飾決算事件で、これまで買収で成長してきたWMは格下だったUSAウェイスト・サービスによって買収される結末を迎えた(社名はWMを引き継いだ)。
財務諸表を1991年にまでさかのぼって修正を余儀なくされ、さらに翌年のインサイダー事件による株主訴訟の和解などでWM史上最大の試練を迎えることとなった。
このWMの危機は、新しくCEOとして迎え入れられた立て直し屋のモーリス・メイヤーズCEOで、彼の指揮の下、非効率なIT設備の刷新による効率化、手書きかつ複雑すぎた財務システムの刷新、ずさんだった顧客サービスを改め顧客第一主義によるマニュアルの構築、全てのごみ収集車にGPSを搭載、経費削減(3.5%のレイオフを含む)などで劇的にWMは蘇った。
競合する主な北米ゴミ処理企業
リパブリック・サービシズ(RSG)
Republic Services Inc.
同業2位のゴミ収集・処理米国2強の一角
ウェイスト・コネクションズ(WCN)
Waste Connections Inc.
カナダのゴミ処理会社プログレッシブ・ウェイスト・ソリューションズ(Progressive Waste Solutions Ltd.)と合併に合意し北米3強に。
みんなの投資分析とコメント
ウェイスト・マネジメントだけではないですがこの業界は毎年少なくない作業員がやめていくため人材の入れ替わりが早いんですよね。社員はできるだけ短期雇用を避けほとんどを正社員として教育頑張っているのですが…
ロボットアームによる収集は現時点で可能となっているので、将来的には自動運転ゴミ収集車でのルート収集は可能だと想定します。処理施設での分別もさらにロボットアームによるAIによる選別が可能になる時代がくると思いますしWMはその恩恵を受けるのでは。