日本でもクロネコヤマトの運送スタッフの重労働・不足問題がありますが、アメリカも配送コストはAmazonもウォルマートも頭が痛い問題だ。
そこで、その運送コスト対策の1つでもありAmazon対策にもなるウォルマートが4月に始めたサービス「ウォルマート・ピックアップ・ディスカウント」に注目したい(記事上部の画像に赤い枠で囲った)。
一言でいえば「客がWalmart.comで注文した商品を店舗に取りに行くと運送料分は割引する」というものだが、意外に奥が深い戦略なのだ。
ウォルマートだからできる運送コスト減かつAmazon対策とは
ウォルマートのサイトでネット注文した商品を最寄りのウォルマートで受け取ると重さ次第で数%の値引きしてくれる「ウォルマート・ピックアップ・ディスカウント」はAmazonキラーというか少なくともAmazonに駆逐されにくくする防波堤となる可能性がある。
というのも、
まず、運送屋をお客に代行させることで宅配コストを相殺させるため、Win-Winな仕組み。
客にとっては少しでも安くしてくれるならどうせ食料品などでウォルマートに寄るつもりだったしと「ついでに」ピックアップしてくれるハードルはそれほど高くない。
逆にネットで注文した商品をピックアップしに訪れた「ついでに」ウォルマートでついで買いしてくれるかもしれない。
この値引きはオンラインだけの商品(つまり受け取りに行く店舗にはない在庫)が対象のため、店舗とネット販売でカニバリ(売上を食い合う)デメリットは無い。
Amazonからすればこのウォルマートのノーコストで割引を実現できるサービスはなかなか無視できない戦略だろう。
もちろんAmazonは利益が大幅に出ているクラウドという金脈があるのでウォルマートに対し送料無料しきい値で絶対に安くする覚悟はあることが最近の送料無料条件緩和に表れているのでそう簡単にAmazonに対抗できるわけではない。
とはいえ最近Amazonを後手にまわすeコマース部門TOPに就任したマーク・ロリー氏に注目だ。
と、ここまでは以前Tweet(FB投稿)した通りなのだが
ウォルマートのサイトでネット注文した商品を最寄りのウォルマートで受け取ると重さ次第で数%の値引きしてくれるウォルマート・ピックアップ・ディスカウントはAmazonキラーですね。運送屋をお客に代行させることで宅配コストを相殺させるわけですから、Win-Winです。 $WMT
— アメリカ部/米国株投資アンテナ (@america_kabu) April 14, 2017
ピックアップディスカウントのメリットを最大化するには商品カバー量と店舗網が必要
本日ウォルマートの決算がでてCEOのコメントもとれたので付け加えると、
昨年の1000万点に比べ今年は5000万点もの商品をWalmart.comで購入することが可能になっており、この品揃えはAmazonに対抗できる二番手のサイトとしては存在感が出てきている。
Amazon.comの最大の武器の1つはマーケットプレイスであり売上の半分以上がサードパーティ(Amazonではない第三者企業)による販売で、そのマーケットプレイス戦略に唯一といっていいほど食いついているのがウォルマートであり、
つまりこの取扱い商品数を誇るウォルマートだからこのピックアップディスカウントのメリットを最大化できる戦略なのだ。
Amazonに対抗するには中途半端では太刀打ちできない。すでに消費者の多くがネットで買う時にGoogleなどで検索せずにAmazonで直接検索しているほどマインドシェアを獲得しているという事実。
しょぼい商品点数ではないからウォルマートなら売っているかも?と少しは選択肢に浮上する。
ウォルマートにとっては顧客の元に届けるよりも、店舗に運ぶ方がコストは安い。
そして、ウォルマートの店舗は米国人口の約90%の10マイル(16km)以内をカバーしている十分な店舗網がある。
これらの要素からウォルマートだからこそピックアップ割引戦略を最大化できるインパクトを有しているというわけだ。
Amazonの侵略でブリック・アンド・モルタル(リアル店舗)はオワコンだという見方があった中、それを逆手にとったウォルマートの次の一手に注目したい。
まとめ:
- 自分が注文した商品を取りに行くことで運送屋に支払われていたコストがそのまま割引となる(Win-Win)
- 普段食料品など買いに行っている層にはピックアップしにいくハードルは低い(ついでにピックアップ)
- ピックアップしにいく「ついでに」購入が期待できる
- マーケットプレイス2番手としての商品点数
- 米国人口90%の商品をピックアップしにいけるポジションに店舗がある
「客が注文した商品を店舗に取りに行くと運送料分は割引する」という発想がロア流で、今後にも期待してしまう。
*当アメリカ部は2017/5/18時点でWalmartを144株(120万円)、Amazonを35株(360万円)保有しています。
長期的に見ればAmazonの方に強気で、Walmartはポートフォリオのディフェンシブ強化目的(配当の安定化)で保有しています。