Stitch Fix, Inc.(NASDAQ:SFIX)
スティッチ・フィックスはAIとスタイリストがユーザーのサイズや好みに合わせた服やアクセサリーを選んで提案してくれるスタイリングサービス。
データ主導型のビジネスモデル
- 2011年創業時からデータ主導型のビジネスモデル
- 85名以上のデータサイエンティスト
- 従業員の大半を占めるのは3700人以上のスタイリスト
- 登録時の質問(サイズなど身体データ、好み、価格帯)に応じてパーソナライズされた提案
- AIとパーソナルスタイリストというデータと人間の相補的な組み合わせで5つの服・アクセを選んで送ってくれる
- 利用料は20ドルのスタイリングフィー(送料・手数料をセンスよく言うとこうなる)
- その20ドルはどれか1つでも購入すると20ドル分割り引かれるので実質無料
- もちろん全て返品可能(20ドルは帰ってこないが、返品時のフィードバックによって次回からマッチング精度が上がるかも。実際ほとんどの顧客がフィードバックしている。)
- 全品購入すれば25%OFFで買える(Stitch Fixからすると送料のコストを顧客に還元、顧客からすると返品が面倒になって全部買う客も。)
- 提携するブランド以外にExclusive Brand(自社ブランド)を混ぜて利益率を上げるビジネスモデル
- データ・イズ・キングの時代で、顧客の需要(と変化)を購買動向やフィードバックでダイレクトにキャッチできる強さからプライベートブランドが好調(特にサイズが大きめの女性など)
- 選択肢過剰の現代。顧客に選ばせるのは5つと絶妙に選択ストレスを軽減し”自分にあった”スタイリング・サービスを行うという発想(競合企業も多い)
スティッチ・フィックスの業績推移
アクティブクライアント数がおよそ274万人まで増加。
詳しくはStitch Fix最新業績データまとめで解説している。
アパレル市場、激変の兆し。
ところで、アパレル業界は劇的に変化が起きている。
Amazonがファッションに本腰になっていること、ZOZOがデータ主導型で面白いことやっていること、Original Stitch(社名は似ているが違う企業)がスマホアプリで画像だけで身体採寸してくれるようになったり、試着を不要化するサービスの高度化で、ファッションECの伸びしろは大きいかも。
先日紹介したOriginal StitchのBodygramの新作アプリがヤバイ。
全身写真2枚で身体採寸してくれるように進化している。
精度次第ではZOZOスーツ不要説きそうだな。Amazonもスマホアプリで身体3Dスキャンする企業の買収をして採寸の研究進めてるけど。
Source: https://t.co/x58XtpUc3G pic.twitter.com/cTQhZ2bLbh
— 気になる企業調べる🐘 (@kininaruzou) 2018年5月8日
Amazon Echo Lookって誰が使うんだ…?って思っていたけど
Primeワードローブ連動を前提としていたのかね?https://t.co/XVuDIVnYmH
・自分の最適なサイズの服の測定
・今着ている服と似たような服
・自分の洋服の好みを認識して提案してくれる
他— アメリカ部/米国株投資アンテナ (@america_kabu) June 22, 2017
Amazon Echo look(カメラつきスマートアシスタント) × Amazon Prime Wardrobe(アマゾン・ワードローブ) でAmazonも本格的にAIベースのスタイリング提案ができるようになりそう。
ファッションに力をいれ複数のAmazonファッション・プライベートブランドを展開するAmazonの場合は(現時点の仕様では)ECの弱みだった試着できない問題を解消するため、送料・手数料無料など顧客の負担をできるだけ抑えながら試着を気軽に行えるようにすることを念頭に、ワードローブボックスで送られた商品を複数を購入した場合の割引特典(10%~20%)によってファッション・ヘビーユーザーを惹き付けようとしている。
その点、スティッチフィックスは従業員のうち大半を占める3500人ものスタイリストによる(AIだけに頼らない)きめこまかいスタイリングサービスがしばらくは差別化要素になっていきそうだ。AmazonがあってもZOZOが成長しているように全てがAmazonに侵食されていくわけでもない。
ただし、何を仕掛けてくるかわからないのがAmazonという巨大な革新企業なので、定期的にAmazonの動きに呼応した株価が冷やされる局面はやってくるだろう。
また、オンライン・パーソナル・スタイリングサービスの同業ではSweatStyleなどフィットネスアパレルに特化型したスタイリングサービスや、子供服に特化したMac & Mia、プラスサイズの(太めの)女性向けのDia & CoやPLVSHなど競争も激しくなってきている。
パーソナライズかレンタルか、アパレルの2つのトレンド
もう1つのトレンドとしては、やはりレンタルの動き。
中でも、爆発的に成長している洋服レンタルサービス「Rent The Runway」は注目に値するサブスクリプション・モデルの企業。
アパレルブランドと着実に提携を増やし、クローゼットがパンパンになった所有の時代から、必要な時に必要なものを一時的に共有する時代の筆頭的企業。
たとえばハイブランド含むRent The Runway上の500以上のブランドのほぼ全てのアイテムを月額139ドルで同時に3着無期限に借りることができ、もちろん1度きたらすぐ次の服にチェンジし放題(ただし返却から宅配までのサイクル上、1週間強のクールダウンはある)の定額サブスク「Rent The Runway Unlimited」や、安価な月89ドルの制限版「RTR Update」も始めている。
他にもレンタルではLe Toteの取り組みも興味深い、レンタルしてみて気に入ったら最大50%OFFで購入できるというもの。(これは家電量販店大手ベストバイが家電レンタルで同様の取り組みをしていた。レンタルの定石かもしれない。)
その他、Adidasやアンダーアーマーなどアパレル企業が直接サブスクリプションを手がけはじめており、所有の時代からの部分的なシフトが加速している点は要チェックかもしれない。
スティッチ・フィックスの株価
創業者のKatrina Lake(カトリーナ・レイク)CEOは女性起業家としては史上最年少(34歳)で米国NASDAQでIPOを達成した。
2016年にメンズ向けをはじめていたが、マタニティやサイズの大きめのプラスサイズ版も好評で、今回の決算ではキッズ版「Stitch Fix Kids」を発表。
<スティッチ・フィックスの決算は以下の特設記事でまとめている>