半導体を製造するために必要な半導体製造装置は、半導体産業全体の約15%程度と大きな市場で、半導体製造装置産業は日本と米国だけで約80%のシェアを占めている(*1)
半導体業界の成長ドライバーの多様化で半導体ETF株価もITバブル期の高値まで一気に戻ってきたがいったんこの高値の価格帯は強い抵抗線になり反落の可能性があることに注意。
ITバブルの高値圏まで戻ってきた半導体ETFのチャート
買収や合併である程度の寡占状態までいった半導体製造機器メーカーなどは米司法省から2つの大型買収を阻止されるほど。 pic.twitter.com/gEfjvghnXi
— アメリカ部/米国株投資アンテナ (@america_kabu) October 27, 2017
半導体メーカーは、半導体製造に必要な露光装置、ドライエッチング装置、成膜装置、CMP装置、洗浄装置、検査装置などを半導体製造装置メーカーから購入している。
以下、その半導体製造装置のシェア推移からどういった企業が強いのかを紹介していこう。
世界の半導体製造装置売上高ランキング
Source: 半導体市場調査企業の米VLSI Research
1990年代はアプライドマテリアルズ、東京エレクトロン、ニコンの三強の時代が続いていたが、徐々にASMLが躍進、そして最近はラムリサーチが伸びた。
2016年はほとんどの半導体製造装置メーカーにとって、10nmプロセスや3D NAND、生産能力増強と巨額の設備投資の恩恵をうけ好業績が続いていた。
また、半導体製造の前工程において露光装置の売上高を半導体エッチング装置(後述)が上回ったことが話題に。
これについて半導体装置分野に詳しい和田木氏によると
これまでの半導体製造においては露光機1台に対し、エッチャーはせいぜい1~2台あればよかったのだ。ところが最近ではウルトラナノレベルに微細化が進んでいるために、3重露光、4重露光などが加速している。露光機1台に対しエッチャー8台以上という時代がやってきている。
Lam Researchの製造工場はもはや満杯となっており、3D-/NAND向けが急拡大でとても作り切れない。
「2015年段階でフラッシュメモリの生産ラインは、月1500K程度であった。2020年にはこれが月12500Kに跳ね上がる。48層から64層、さらには96層まで立体化が進んでくる。もしかしたら露光機1台に60台のエッチャーが必要になるかもしれない。そういう流れになれば、エッチャーメーカーにはまさに我が世の春が到来したことになるだろう」
半導体装置業界で2つの大きな買収の白紙化
2013年に東京エレクトロンは首位の米アプライドマテリアルズと経営統合すると発表したが米司法省が独占禁止法(反トラスト法)に抵触すると難色を示したため白紙(2015年)となった経緯がある。
2015年にはラムリサーチが半導体製造前工程におけるマスク検査とウェーハ検査装置の世界最大手であるKLAテンコール(KLA-Tencor)を106億ドルで買収することを発表したが、これも米司法省から独占禁止法に抵触すると抵抗をうけ2017/10/5に買収を断念することを発表している。
KLA-Tencorは計測市場において、圧倒的に優位なシェアを維持しており、ラムリサーチはKLAテンコールを買収すれば半導体のプロセスおよびプロセス制御において業界の圧倒的リーダーとなるという見通しだった。
半導体の製造工程
半導体の製造工程は、ざっくりと説明すると半導体の製造工程は前工程と後工程に分かれている。
半導体製造工程の視覚化 via SCREENホールディングス(洗浄トップシェア)
半導体製造工程 via 東京エレクトロン(コータ/デベロッパでトップシェア)
このように半導体チップは、シリコンの薄い板(シリコンウエハと呼ぶ)の表面に、洗浄・成膜・塗布・露光・現像・エッチング・不純物注入・剥離などの表面処理工程を繰り返して製造する。
さらなる半導体の製造についての詳細は長くなるのでニコン半導体装置事業部の解説や日立ハイテクノロジーズの半導体の製造解説などを参考にしていただいて省略する。
半導体製造装置市場では多くの1位企業が50%以上のシェアを獲得しており、3位企業で市場シェアが20%を超える半導体製造装置市場はなく、1位企業の市場シェアが60%を超えると限界利益率が60%を超え、またその場合不況でも10%以上の営業利益率を維持できるという。(*2)
フロントエンド=半導体前工程(ウェハプロセス)用製造装置シェア
半導体設備投資の70~80%が前工程。
コータ/デベロッパ(フォトレジスト/感光剤の塗布と現像)
東京エレクトロン90%、その他(SCREENホールディングス、セメス)
プラズマエッチング装置
ラムリサーチ48%、アプライドマテリアルズ20%、東京エレクトロン23%、日立ハイテクノロジーズ5%
枚葉式成膜装置
アプライドマテリアルズ52%、ラムリサーチ21%
熱処理成膜装置
東京エレクトロン59%、日立国際電気30%
洗浄装置
SCREENセミコンダクターソリューションズ(SCREENホールディングス)42%、東京エレクトロン24%、セメス19%
ウェーハプローバ(ウェーハの電気的検査の際に使用する装置)
東京精密55%、東京エレクトロン35%、セメス10%
ArF液浸露光装置(現行)
ASML 92%(もはや単独トップ)、ニコン8%(出遅れ)
KrF露光装置(前世代)
ASML 62%、キャノン30%、ニコン8%
i線露光装置(前世代)
キャノン57%、ASML 23%、ニコン20%
フォトマスク欠陥検査装置
レーザーテック50%、KLAテンコール50%
テスト工程=半導体試験装置、後工程シェア
半導体試験装置はテラダイン(Teradyne)と日本の株式会社アドバンテストの2強。
メモリ・テスタ
アドバンテスト42%、テラダイン24%
非メモリ・テスタ
テラダイン53%、アドバンテスト37%
ダイシングマシン(ウェーハを切り分ける)
株式会社ディスコ80%(もともとは砥石のメーカー)
半導体製造装置シェア推移2001年~2010年も興味深い資料。
出所: 日本政策投資銀行
半導体業界の成長ドライバーの多様化で恩恵をうける日米。中国企業による米国半導体企業の買収はトランプが難色を示すほど。
まだ続いているIT革命のバリューチェーン(半導体視点) pic.twitter.com/WzMAKS2Qcs
— アメリカ部/米国株投資アンテナ (@america_kabu) November 27, 2017
*1 出典: 図解入門業界研究最新半導体業界の動向とカラクリがよ〜くわかる本
*2 出典: 徹底解析 半導体製造装置産業
和田木哲哉(著) 横山貴子(著) 奥村勝弥(監修)