セールスフォース【CRM】マーク・ベニオフの先見の明で、CRMで世界トップシェア。

SALESFORCE

Salesforce.com, inc.【NYSE:CRM】
セールスフォースは1999年の創立以来、従来のデスクトップCRM(顧客管理システム)ソフトウェアをクラウドベースとサブスクリプションモデルに置き換えるアイデアで業界をリードし、CRMで世界トップシェア。

CRMとは?
CRM: Customer Relationship Management

顧客関係管理=顧客に関するさまざまな情報を管理することで、顧客をより深く理解し、営業、サービス、マーケティング、経営戦略などに活かす。

創業者のマーク・ベニオフCEOは「なぜ法人向けソフトウェアは、Amazonで本を買うように簡単に機能を提供できないのか?」と、当時主流だったハードウェアを買ってソフトウェアをインストールする(オンプレミス)モデルではなく、デジタル時代に企業が顧客との理想的な関係を実現するための環境を構築・提供するというビジョンの元、今ではクラウドのリーディングカンパニーに成長させている。

米国最高のCEOに選ばれたセールスフォースのベニオフCEO:

第四次産業革命の中心に位置するセールスフォース

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セールスフォースの中核事業である営業支援サービス「セールスクラウド」や、カスタマーサービス支援の「サービスクラウド」、エンタープライズ向けのPaaSである「セールスフォース・プラットフォーム」、急成長しているデジタルマーケティングプラットフォーム「マーケティングクラウド」など、数多くの買収とあわせ製品群を多様化し、セールスフォースがシェアを取ろうとしていく市場規模が拡大している。

多くの買収で多角化しつつあるが、CRMを基軸にサービスを構築していることからはブレていない。

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営業支援サービスとしての強みがシェアにもあらわれており、それ以外の領域でも市場の成長以上に伸びている。

2015年からは特定業種向けに特化したCRM製品を投入。

金融の「Financial Services Cloud」ヘルスケア業界向けの「Health Cloud」など業種に合ったCRMソフトウエアを簡単に導入できるSaaS製品を、それぞれの業界で強いパートナー企業(システム開発会社)と組んで、顧客企業に最適化したソリューションを提供するようにしている。

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米国と欧州の上位20社のうち17社が、そして製薬会社の世界上位20社のうち15社がSalesforceの顧客。

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ホワイトハウスも米国政府がクラウドへ移行するように奨励しはじめたり、そういった支出の恩恵も少しは期待できるかもしれない。

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幅広い領域で多くの企業と競合しているが、全体的にいえば主な競合はオラクル、SAP、マイクロソフトだが、セールスフォースは積極的な買収でCRM領域において差をつけている。

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セールスフォースが目標としていた「エンタープライズ向けクラウドソフトウエア企業として初めての年間売上100億ドル」を達成した後の目標は、2022年度までに売上高200億ドル以上へ史上最速で到達するというもの。

そのために積極的な買収も含め新製品もぞくぞくと投入。

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なお「Einstein AI」というセールスフォースのAI戦略はSalesforceのデータによって進化し、具体的には顧客が解約する可能性を予測し、その前にアクションを起こせるようにしたり、チャットBotによってサポートコストを抑えたりするなど、データを活用し企業の生産性と顧客の満足度を様々な切り口から高めていくことが期待されている。

セールスフォースのプラットフォーム戦略

セールスフォース・プラットフォームでは世界最高水準のビジネスアプリマーケットプレイス「AppExchange」を展開している。

たとえるならスマートフォンでアプリを探すようにクラウド型ビジネスアプリを簡単に導入したり評価することができる仕組み。

約1500社が3300以上のクラウドアプリケーションを提供しているAppExchangeのアプリによって、Salesforceの機能を拡張できる。

このセールスフォースとパートナーや顧客によるSalesforceエコシステムは、2020年までに世界で8590億ドルの新規ビジネスを創出すると予測されている(調査会社IDC)ほどのインパクトのあるプラットフォームだ。

エンタープライズクラウドマーケットプレイスであるAppExchangeに自社開発ソフトをもつ独立系ソフトウェアベンダー(ISV)やシステムインテグレータ(SIer)が加わるメリットは、低リスクでクラウド・ビジネスを始めることができるというもの。

ISVなどは初期投資コストはほとんどかからずに、AppExchange上でセールスフォースの15万社以上の顧客にリーチでき、販売し売り上げが出た段階で初めて、ISVとセールスフォースで売り上げをシェアする(レベニューシェア)仕組みだ。

顧客はこれにより多様なカスタマイズを施して機能を拡張することができ、ISVも低リスクで顧客にリーチできる、というビジネス的共生環境(エコシステム)を実現しているプラットフォーム戦略となっている。

業務アプリに必要なものが最初から揃っている基盤のPaaS(Application PaaS)であるForce.comが強い上に、2010年にPaaSのHeroku(Webアプリのデプロイ作業を効率化する)まで買収している。

要はスピード重視でB2Bサービスを開発したいスタートアップはセールスフォースのPaaSは有力な選択肢の1つで、マーケットプレイスのエコシステムまで完備されているという話。

また、ベニオフCEOによるとAppleの伝説的経営者であるスティーブ・ジョブズからの助言に影響を受けたと語っている。

セールスフォース・ドットコムの業績と決算

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Salesforceの業績推移グラフ

赤字でも売上と共にキャッシュフローが健全に伸びているので株価もついてきている。

米国の売上比率は60%後半~70%台と、海外における成長余地はまだまだありそうだ。

<その他豆知識>
フォーブスが選ぶ世界で最も革新的な企業1位に何度か選出。

現Salesforceのキース・ブロックCOOはベニオフCEOが直接声をかけてオラクルから引き抜いた。

<セールスフォース・ドットコムの株価>

2015年にはマイクロソフトから買収提案があったが金額が折り合わず破談になったと報道される。

その後2016年にはマイクロソフトが米ビジネス向けSNS大手リンクトインの買収を発表すると猛烈に批判するなど、マイクロソフトとの事業領域が重なってきており関係が悪化している。

また、セールスフォースにとって買収候補だったリンクトインの買収ができなかった上に、買収ウィッシュリストもリークしてしまった。

買収ターゲットとなっていたのはアドビシステムズワークデイサービスナウBOXゼンデスクタブローソフトウェア、ネットスイート(のちに競合Oracleが買収)、ハブスポットなど。

中でもワークデイは両社CEOが公私共に仲がよく、ワークデイ創業時に支援している上、ワークデイのコア領域であるHRM市場の成長がそれほどでもないことから、セールスフォースに買収されるのが良いのではないかと思うのだが、ワークデイは買収防止策をとっているので敵対的買収は不可能だ。

結局のところ、セールスフォースが買収したのはMulesoft買収だった。(2018年3月20日に約65億ドルで買収)

MuleSoft, Inc.【NYSE:MULE】 ミュールソフトは企業があらゆるアプリケーションとデータをAPIベースでクラウドもオンプ...

以下のグラフは2021年の市場規模予想と先日合意したミュールソフト買収によるインテグレーション市場規模の予想だ。

Salesforce_Mulesoft

ミュールソフトの1200社の顧客企業(コカ・コーラやユニリーバ等)のうち60%がセールスフォースの顧客企業と重複しており、より顧客企業のパートナーとして包括的に支援していくことができるようになった。

ミュールソフトの売上成長率は高く、売上成長率+フリーキャッシュフロー・マージンでみるRule of 40 (SaaSの40%ルール)でも優良判定ができていた(これはセールスフォースも同様)。ドル建てのリテンション・レート(既存顧客維持率)も119%と解約よりもアップセルの勢いがある。

Salesforce-Mulesoft-Combination

APIマネジメントの市場は2017年度の成長率が30%以上の成長市場で、2022年までには3500億円に拡大すると予想されている。

APIマネジメントの競合としてGoogleがApigeeを買収しており、スタートアップも勢いがありミュールソフト1強というわけでもなく、多くの報道ではMuleSoftの買収は「割高すぎる」という論調だが、オラクルやSAPなどのセールスフォースの競合のレガシー企業にミュールソフトを買収される方が恐ろしい。

というのもミュールソフトはレガシー企業のシステムにロックされたデータを解放するというコンテキストにあるビジネスで、セールスフォースにとっては攻めの買収でもあり守りの一手でもあると筆者はみている。

セールスフォース決算については特設記事を参照してください。

Salesforceの決算についてまとめます。 Salesforceについては以前に解説記事を書いているのでこちらも参考にしてください...