SaaS企業で構成されるSaaS指数の上昇っぷりがはんぱない。
SaaS: Software as a Service
クラウド型などでサブスクリプションモデル(継続課金モデル)によってレンタルのように企業が直接所有せずサービスとして提供するタイプのソフトウェア
特に2010年~2011年頃からクラウド・SaaS企業達が活気づき、オンプレミス(自社運用サーバにインストール)型からSaaS型・サブスクリプションモデルへ転換する企業が増えてきたのもこの頃だ。
SaaS企業の業績評価の仕方
すでにアメリカ部ではSaaSの40%ルールというSaaS企業の業績のフィルタを紹介しているが、今回はSaaSそのものについての叩き台となる記事を書いていく。
主にここで取り扱うグラフはカバーブラフも含めBattery Venturesの超面白い資料の一部で、要チェック。
SaaSに限った話ではないが、SaaSによく見られる傾向として、売上成長率と利益のトレードオフをどうバランスしていくかというところがある。
つまりSaaSの40%ルールとは、ほとんどの場合は売上成長率+フリーキャッシュフロー・マージン=40%↑が事業の強さの指標だ、ということ。
売上成長率が60%増でFCFマージンが-20%の企業と、売上成長率が30%増でFCFマージンが10%の企業は同じラインに位置する。
詳しくはSaaSの40%ルールの記事に書いてあるのでこのへんにする。
要は、営業利益の推移などではわかりにくいのでPSR(株価売上高倍率)とセットで見るのに使えるフィルタ。
SaaS企業の特徴はほとんどがサブスクリプション・モデルを採用しているためRecurring Revenue(経常収益)の比率が高く、すなわち売上の予測可能性が高いストック型ビジネスで、キャッシュフロー主導型の事業拡大がしやすい。
サブスクリプション・モデルの強みについては「サブスクリプション・エコノミー時代の到来」の記事で説明している。
SaaS企業ではなくてもRecurring Revenue比率を上げるのが優良企業の鉄板の戦略なので、ARR(年間経常収益)にコミットしているSaaSはネイティブに強い構造をしている。
SaaS企業の業績はARRといった主要なもの以外に、売上ベースの既存顧客維持率(Retention rate)とチャーンレート(Churn Rate: 解約率)、LTV(Lifetime Value; 顧客生涯価値)、ARPS(Average Revenue Per Subscriber: サブスクライバーあたりの平均売上高)、CAC(Customer Acquisition Cost: 顧客獲得コスト)などのチェック項目がある。
既存顧客維持率が100%を超えているような状況、つまり解約よりアップセルが上回る(ネガティブチャーン)を達成している場合のコホートは以下のように拡がりのある形になるので参考にしていただきたい。
参考: クラウド型メール配信のSendGridのコホート
SaaS企業のIPOは過熱しており、最近でもコラボレーションツールのSmartsheet、電子署名のDocuSign、サブスクリプション導入支援のZuora、音楽ストリーミングのSpotify、ファイル共有のDropboxなどマーケット環境の良さでここぞとばかりにIPOラッシュが続いている。
そういった過熱もあり株価も危険水域にはいってきている点は注意したい。
SaaSの伸びは世界的潮流である「所有の時代の終わり」とリンク
従来のオンプレミス(自社運用サーバにインストール)から、クラウドベースで提供されるソフトウェアをレンタルするように使うSaaSへのシフトは、セキュリティ対策や複雑でスケーラブルではないソフトウェアの所有の煩わしさからの解放であり、こういった所有の時代の終わりは、企業だけではなく世界的にシェアリングエコノミーが到来していることからも共通の流れだろう。
顧客がかかえるペインポイント(複雑なのをシンプル化したい、効率化したい等)を解決するやり方はCRMならSalesforceや人材管理だったらWorkdayのようにグローバルに幅広く水平展開的にスケールこともできるし、業界に特化して垂直統合的に解決するバーティカルSaaS(製薬業界向けCRMのVeeva Software、臨床試験向けSaaSのMedidata、ヨガやビューティー領域の業務支援をワンストップで垂直統合的に行うMindbodyなど)というやり方もある。
ほとんどのSaaSは1つのプラットフォームで統合するというシンプル戦略をとっており、顧客ごとに細かくカスタマイズしていく(その代り納期は遅く導入しづらい)オンプレミス型とは異なる。
そのバーターで多くのSaaSの弱点として個別のカスタマイズが比較的やりづらいというのがあるが、そこで出てくるのがAPIベースの連携である。
APIとは?
=Application Programming Interfaceざっくりいえば、あるソフトウェアに他のソフトウェアの機能を呼び出して外部から使えるようにするための仕組み。
MuleSoft, Inc.【NYSE:MULE】 ミュールソフトは企業があらゆるアプリケーションとデータをAPIベースでクラウドもオンプ...
APIベースによるソフトウェア同士の連携・統合によって、排他的なスイート(統合製品)に対し、ベスト・オブ・ブリード(Best of Breed: 最善の組み合わせ)あるいはBetter Togetherなカスタマーサクセスを実現できている。
排他的なスイートの問題点は、ベンダーロックイン(その企業の製品から抜け出せないように縛られること)懸念であり、柔軟さが欠ける点だ。
なぜ特化型SaaSが伸びてきたかというと、こういったベスト・オブ・ブリードがフィットした時代という追い風もあるだろう。
ERP(Enterprise Resources Planning)もワントップってことはなくなってきた。 pic.twitter.com/d2ZREuG1f1
— 気になる企業調べる🐘 (@kininaruzou) April 17, 2018
さらに、APIベースの横展開を超えた包括的なプラットフォーム戦略も狙いやすく、たとえばSalesforceはサードパーティ(第三者企業)の業務アプリのApp Storeのようなプラットフォームを構築し、他社アプリでニッチなニーズを埋めるエコシステムを形成している。
ソフトウェアセクターにおけるSaaSの立ち位置などについては、姉妹記事であるソフトウェア企業の時代: “Software is eating the world”も参考にしてください。
米国市場上場SaaS企業リスト
アトラシアン (NASDAQ:TEAM)
プロジェクト管理やリアルタイムコラボレーション
サービスナウ (NYSE:NOW)
企業内のワークフローをクラウドプラットフォームに一元化
アドビ (NASDAQ:ADBE)
サブスク転換成功のクリエイティブ・マーケティング領域の企業
レッドハット (NYSE:RHT)
RHELなどのオープンソースベンダー
Zendesk (NYSE:ZEN)
クラウドベースのカスタマーサービス・プラットフォーム
Workday (NASDAQ:WDAY)
クラウド型HR(人材管理)および財務管理のプラットフォーム
セールスフォース (NYSE:CRM)
CRM(顧客関係管理)で世界トップシェア
Okta (NASDAQ:OKTA)
IDaaS(ID管理SaaS)
ペイコム・ソフトウェア (NYSE:PAYC)
HR+給与計算SaaS
ハブスポット (NYSE:HUBS)
マーケティングオートメーション
クオリス (NASDAQ:QLYS)
クラウドベースの脆弱性診断
Veeva Systems (NYSE:VEEV)
製薬業界向けCRMを中心としたバーティカルSaaS
ミュールソフト (NTSE:MULE)
iPaaS(Salesforceに買収されたAPI統合プラットフォーム)
プルーフポイント (NASDAQ:PFPT)
標的型攻撃対策など電子メールセキュリティ
ニューレリック (NYSE:NEWR)
アプリケーション監視SaaS
Mimecast (NASDAQ:MIME)
電子メールアーカイブ・セキュリティSaaS
AppFolio (NASDAQ:APPF)
賃貸・不動産管理システムの垂直統合SaaS
BlackLine (NASDAQ:BL)
企業の財務会計支援SaaS
Coupa Software (NASDAQ:COUP)
経費管理・企業間調達SaaS
Dropbox (NASDAQ:DBX)
フリーミアムモデルのファイル共有・チームコラボレーション
Alteryx (NYSE:AYX)
データ分析ツール・データ予測分析・自動化ツール
Talend (NASDAQ:TLND)
データ統合ツールを提供するオープンソースベンダー
エバーブリッジ (NASDAQ:EVBG)
緊急イベント対策用プラットフォーム
センドグリッド (NYSE:SEND)
クラウド型メール配信サービスのSaaS企業
Twilio (NYSE:TWLO)
クラウドベースでコミュニケーション機能を提供
Shopify (NYSE:SHOP)
継続課金+手数料モデルなのでハイブリッドSaaSなECサービス
Wix.Com (NASDAQ:WIX)
EC+Webサイト作成サービス
Zscaler (NASDAQ:ZS)
クラウド経由のユーザーセントリックなセキュリティ
Docusign (NASDAQ:DOCU)
電子署名によって紙の署名を不要にするクラウドサービス
リングセントラル (NYSE:RNG)
UCaaS(Unified Communication as a Service)のリーダー企業
SaaSの40%ルールを満たした米国市場上場企業は全て紹介記事を用意しているので↑を参考にしてください。
SaaSでEBITDAマージンだけで単一で比較してもステージによって違うから微妙なところだが一応。 pic.twitter.com/MAEYw0Mp7F
— 気になる企業調べる🐘 (@kininaruzou) February 13, 2018
SaaSの30%ですが何か?企業(売上高成長率+FCFマージン30%付近)のSaaSも以下で徐々にカバー中。
40%未満だから問題があるわけではなくマルチプルと一緒にみる必要があり、持続可能性があるかどうかが結局重要なのではないかと考えている。
<SaaSの40%未満ですが何か?企業>
BOX (NYSE:BOX)
企業向けファイル保存・共有・コラボレーションSaaS
Five9 (NASDAQ:FIVN)
クラウド型コンタクトセンターシステム構築
Zuora (NYSE:ZUO)
サブスクリプション・ビジネスに必要なサービスを包括的に提供
Yext (NYSE:YEXT)
一元的なデジタル・ナレッジ・マネジメントを提供するSaaS
メディデータ・ソリューションズ (NASDAQ:MDSO)
臨床開発に特化したSaaSプラットフォーム企業
Smartsheet (NYSE:SMAR)
共同作業を管理・自動化するコラボレーションツール
インストラクチャー (NYSE:INST)
学習管理システム(LMS)をクラウドベースで学校・企業に提供
2U (NASDAQ:TWOU)
オンライン大学院教育の学位プログラムとコースを提供するEduTech
Avalara (NYSE:AVLR)
クラウドベースの税務コンプライアンス自動化ソフトウェアを提供
Pivotal Software (NASDAQ:PVTL)
クラウドネイティブのソフトウェア開発プラットフォーム
オートデスク (NASDAQ:ADSK)
建築設計者・デザイナー向けの2D/3D・設計ソフトウェアを提供
アルティメット・ソフトウェア (NASDAQ:ULTI)
給与計算やHR/人材管理のクラウドプロバイダ
タブローソフトウェア (NYSE:DATA)
BI(ビジネスインテリジェンス)向けデータ視覚化ツール
ガイドワイア ソフトウェア (NYSE:GWRE)
損害保険会社に特化したソフトウェア(徐々にクラウド転換)
マインドボディ (NASDAQ:MB)
ヨガスタジオなどに予約・決済・従業員管理・顧客管理クラウドを提供
アプティオ (NASDAQ:APTI)
IT投資・IT支出のコスト最適化・分析・プランニング
アナプラン (NYSE:PLAN)
クラウドベースのFP&A(財務計画・分析)プラットフォーム
SaaS企業をフルカバーするため加筆予定です。
以下、SaaS時価総額ランキングも参考まで。