ライト・エイド(Rite Aid Corporation)は米国で3番手の薬局チェーン。一時期はタイミングの悪い大型買収の負債過多と業績低迷で赤字続きでウォルグリーンなどの競合に買収されるとの噂が絶えなかったが(一部店舗はウォルグリーンに買収された)経費削減などで黒字に返り咲くと思いきや簡易クリニックやPBMなどの買収に続く買収で高負債が続くなどアバンギャルドで鉄火場な経営が特徴だ。
現在はライバル薬局チェーンWalgreensからの買収提案に合意して当局の認可待ちだ。
米司法省から寡占を指摘され買収は断念され、ウォルグリーンによる店舗の一部取得にとどまり株価も暴落。
2018年追記:
残りの店舗をアルバートソンズが買収。
米国2位のスーパーのアルバートソンが、ウォルグリーン買収が中途半端な形(一部店舗の買収)で終わってgdgdになった米国3位の薬局ライトエイドを買収する予定と報じられた。https://t.co/rPPXVeG1o2
何もエキサイティングな感じはしないけど、ライトエイドやばそうだったからよかったね。— 気になる企業調べる🐘 (@kininaruzou) February 20, 2018
ライトエイド株価チャート
業績好調の時期には配当も出していた頃もあった。
赤字続きだったライトエイド
二けた四半期連続の長期赤字が続いたライトエイドは、後手になりがちな経営戦略とタイミングの悪い買収(と買収したあとの統合スピードの鈍さ)が主な原因だ。
ライトエイドの経営戦略はCVSヘルスとウォルグリーンズの後追いとなる後手の動きであることが多く、お世辞にもロードマップに基づいた戦略が実行されていたわけではなく、そのためタイミングの悪い買収による負債整理が重荷になることが多い。
金融危機直前の2007年に1800店舗以上もの大型買収だった、ブルックス、エッカード・ドラッグ・チェーンの買収の負債とその既存店売上の悪さで圧迫され、不採算店舗の閉鎖を続けた。
買収されるのではないかと噂される中、景気が好転した外部環境の改善と、ウォルグリーンズとエクスプレス・スクリプツとの一時的な契約空白期間に処方箋ボーナスを享受し、CVSのタバコ取扱い終了でもタバコを取り扱うライトエイドは追い風を受けた。
CVSが成果を上げているということで始めたロイヤリティプログラム導入効果は良く、その他他社追随型戦略ではあるが簡易クリニック買収、PBMの買収などCVS的なる何かという薬局チェーンの形にはなっている。
1962年設立のライトエイドは主に東海岸を重点的にカバーしている。
PBM事業を垂直統合
2015年、およそ20億ドルで契約会員数2100万人のPBMであるエンビジョンRXを買収した。
これは先立って競合ドラッグストアのCVSヘルスがPBM(ケアマーク)を買収し、コスト削減と事業のシナジー効果を発揮したことに呼応したものではあるが、買収後の統合力に定評のあるCVSですら、買収してすぐにはシナジーが発揮されず大口の契約を失うなどして苦戦した時期があったことは忘れてはならない。
もう1つのライバルのウォルグリーンズはPBMは切り離したものの、欧州最大のドラッグストアチェーンのアライアンス・ブーツと合併しグローバルソーシングによる医薬品の仕入れのコストダウンを成功させている。ライトエイドはウォルグリーンズ方式ではなくCVS方式のビジネスモデルを取り入れた形だ。
また、PBM以外のコストコントロールの方法として大手薬剤卸のマッケソンとの長期パートナーシップを継続している。
マッケソンとは20年近い関係を維持しており、長期的な仕入れ契約を結んでいる。ライトエイドはマッケソンから毎日店舗への調剤配送を受け、サプライチェーンの効率性を改善している。
ライト・エイドの業績推移グラフ
ライトエイドのリワードプログラム wellness+
リワードプログラムとは要は会員制ポイントプログラムのこと。
ライトエイドのフロントエンド(薬剤以外)売上の8割はwellness+(ウェルネス+)の会員によって占められており、普及している。
たまったポイント数に応じて一般会員からブロンズメンバー、シルバーメンバー、ゴールドメンバーとランクアップしていきそれに応じ特典が豪華になっていく。
また、たまったポイントで無料で健康診断が受けられたり、トレーニングジムの年会費が無料になったり、主に健康促進の別の用途にポイントを交換できることが特徴でもある。
さらにライトエイドは、アメリカンエキスプレス主催のポイント相互交換プログラム Plenti(プレンティ)に参加している。日本で似たような仕組みはPontaのような加盟パートナー企業間の共有ポイントプログラムである。
プレンティで貯まったポイントは他の加盟パートナー企業(Exxon、AT&T、Hulu、メイシーズ等)の購買に利用することができる。ウォルグリーンズやCVSは参加していないことからプレンティは1業種1社というパートナーの選定のようなので、プレンティの活用シーンが広がった場合はライトエイドにプラスの恩恵をもたらすかもしれない。
「wellness+ with Plenti」としてライトエイドのポイントプログラムであるウェルネス+に付随したポイントサービス(例. プレンティのポイントでライトエイドの商品20%オフなど)が受けられる。
簡易診療所レディクリニックの展開
AOL共同創業者スティーブ・ケースが立ち上げたRediClinic(レディクリニック)は、手頃な価格で、予約も不要な人気の店舗内ウォークインクリニックで、簡易診療・予防接種・予防医療を受けることができる。このレディクリニックを2014年にライトエイドが買収した。
競合であるCVSやウォルグリーンズがそれぞれ簡易クリニック事業を展開しているため薬局としての専門性を高めるキャッチアップが必要だったライトエイドにとっては必須の買収だった。
利便性を追求し来店頻度を高め、専門性を高めるために簡易クリニックの買収以外に、ライトエイドはウェルビーイングストア(Genuine Wellbeing store format)への店舗改装プログラムを実行している。
ウェルネス・アンバサダーという顧客の健康相談にこたえるトレーニングをうけた社員が配置された店舗であり、徐々にその比率を増やしている。成果は上がっており、やはり消費者は薬を買う時は専門知識を持った相談員(薬剤師など)がいる場所で購買したいのだ。
Rite Aidに関連する全米の薬局・PBM・医薬品卸
CVSヘルス(CVS)
―CVS Health
―全米2強の薬局チェーン、PBM、店舗内クリニック等
ウォルグリーンズ・ブーツ・アライアンス(WBA)
―Walgreens Boots Alliance Inc
―世界最大、全米2強の薬局チェーン、店舗内クリニックも展開
マッケソン(MCK)
―McKesson Corporation
―米最大手の医薬品卸売業、セレシオ買収で欧州にも卸拠点
―ライト・エイドとは長期戦略関係
エクスプレス・スクリプツ(ESRX)
―Express Scripts Holding Company
―米国1位のシェアのPBM
ユナイテッドヘルス・グループ(UNH)
―UnitedHealth Group Inc
―米医療保険最大手かつ三大PBM
みんなの投資分析とコメント
ライト・エイドがPBMを買収した効果についてはどうなんでしょうかね。
そもそもウォルグリーンがPBMを売却したのは中途半端なサイズだったためバイイングパワーも発揮できずシナジーに欠けたということが大きかったと思います。
すでにPBM業界は3社寡占であり、ライト・エイドにとってどの程度シナジーを発揮できるんでしょうか。負債を考えると残りの小粒PBMをまとめて第4勢力となるぐらい買収するほどの資金力は無いですし。
今日ジム・クレイマーがライトエイド買い推奨してますね。
でもライトエイドは今は無配だし、借金も相当な水準だし、今は他の優良株も大幅下落しているものの多いからあえてライトエイドにこだわる必要ないと思うんですが。
もし自分が買うならもっと下がって下ヒゲつけたところですね。
ウォルグリーンズからの買収提案が近いという記事で40%も株価が上昇。
あの暴落で買い向かった人は報われましたね。