RingCentral, Inc.【NYSE:RNG】
リングセントラルはクラウドベースのビジネスコミュニケーションとコラボレーション・ソリューションを提供するUCaaSプロバイダー。
UCaaS: Unified Communication as a Service
音声通話やビデオ会議、ビジネスチャットといったビジネスコミュニケーションツールをバラバラではなくワンストップで統一的に(ユニファイドコミュニケーション)シームレスで使いやすく、また自社保有せずにサービスとして利用できる形態。
UCaaS市場のリーディングカンパニーのRingCentral
このグラフにあるように、リングセントラルは従来のレガシーベンダーのPBX(Private Branch eXchange:構内交換機、たとえば外線と内線の架け橋)やビジネスコミュニケーションサービス(主にオンプレミス)を置き換えるディスラプターとして成長しており、クラウドPBXのプロバイダーの中でもリードしている。
<従来のレガシーベンダー>
Alcatel-Lucent(仏アルカテル・ルーセント)
Avaya(米アバイア)
Unify(独ユニファイ)
Cisco(米シスコ・システムズ)
シスコは2017年にクラウドPBX・コンタクトセンターソリューションを提供するBroadSoftを19億ドルで買収するなど補強している。
Mitel(加マイテル・ネットワークス)
クラウドソリューションへの移行にさらに重点をおくと発表
このようなレガシー企業に対し、リングセントラルはユーザー中心かつモバイルファーストでチームメッセージングとクラウドPBXを統一プラットフォームで提供し、オープンプラットフォーム戦略で他社のアプリとの統合もディープなのが強み。
固定されたロケーション前提だった従来の電話システムは現在の働き方(モバイル・分散化)のニーズを満たしておらずクラウド導入が勢いづいている。もちろんレガシーベンダーもクラウドに寄せてきているものの完全に断ち切っていないので完全クラウドベースで先行投資しているリングセントラルとはスピードに違いがある。
一例として、レガシーベンダーの従来のソリューションを利用してきたPublic Storage(現在の顧客)が従来は1年かかっていたところリングセントラルでは2週間少々で米国2300拠点に導入できたという。
また、リングセントラルは市場リーダーであり、ビジネスコミュニケーション、チームメッセージング、ビデオ、コンタクトセンターなどコラボレーションを組み合わせることができる統一プラットフォームで、統合ソリューションを求めている企業の引き合いも強いようだ。
Source: ガートナー調査
ガートナー調査による「Gartner Magic Quadrant Leader for UCaaS」でも2015年から2018年にかけてリーダーと評価されている。
競合は8×8, Amazon(Amazon ConnectとAmazon Chime), Dialpad, Fuze, StarBlue, Intermedia.net, j2 Global, Jive Communications, Microsoft(Microsoft Teams), Nextiva, Slack, Vonage Holdings, West Corporationなど。
顧客満足度も高い。
複数の統合されていないツールをバラバラに使用してきた企業がリングセントラルの統一プラットフォームを利用すると20-30%の時間が節約できると同社は主張する。
コホートも優秀で、Land and ExpandのSaaSの鉄板戦略が機能している。
ユーザー数やARPU(顧客あたり売上高)を伸ばす余地があり、そもそもTAM(リングセントラルがアクセス可能な市場規模)自体もまだまだ拡大している。
リングセントラルの最新の業績データ
RingCentral決算まとめ
✓ CiscoやAvayaをディスラプト・ターゲットとするクラウドPBX大手
✓ レガシーベンダーからクラウドシフトを支援するためZoomとも複数年契約を延長
✓ GoogleのAIエージェントと顧客エンゲージメントプラットフォームを連携https://t.co/4TYWXPCAtx
— 米国株 決算マン (@KessanMan) 2019年5月7日
9割以上の高いRecurring Revenue(経常収益/継続収益/定期収益)比率を維持し、マージンも年々改善してきた。
リングセントラルと競合するソリューションを提供することを2016年8月に決断したAT&Tの影響で、成長スピードは一時抑制されていたことが上記グラフからも分かる。コアだと以下のグラフの通り。
SaaS企業はARR(年間継続収益)中心に見るのが基本なので、主力のRingCentral OfficeのARR推移などもピックアップしている。
リングセントラルのプロダクトはコンビネーション力が売り
リングセントラルの主力プロダクトは、グローバルに展開可能な企業向けクラウド型PBXシステム「RingCentral Office」
RingCentral Officeは、高精細(HD)の音声、ビデオ、SMS、メッセージング・チームコラボレーション、ビデオ会議、オンラインミーティング、ファックスまで、あらゆるビジネスコミュニケーションとコラボレーションを統合し提供。
クラウドPBXはデスクトップ、スマートフォン、タブレット、PCなど複数のデバイスやマルチロケーションで単一のユーザーアイデンティティで使いやすく簡単に提供。
ちなみに画像にあるようなデバイスの製造はパートナー企業に委託しておりリングセントラルは製造を行っていない。
メッセージング中心のチームコラボレーションツールGlip(2012年創業)を2015年6月に買収し、RingCentral Glipとして統合。
リングセントラル利用者における2017年の音声サービス使用率は前年比で40%伸びたが、チームメッセージ、ビデオ、サードパーティのAPIコールなど、その他のコミュニケーションサービスはすべて前年比で100%以上の成長しており、クラウドPBXを起点に、適材適所のビジネスコミュニケーションツールの包括的提供でクロスセル(Land and Expand)がうまく出来ていることが分かる。
RingCentral Meetingsは、チームメッセージングと統合されたWeb会議、ビデオ会議などコラボレーティブミーティングソリューションで、スタンドアロンでも利用できる。
RingCentral Contact Centerは、チームメッセージングのRingCentral Glipとの連携が魅力。
コンタクトセンターはかなり伸びている市場で、リングセントラルは2016年に参入。
コンタクトセンター市場での競合はAmazon Connect(簡単に使えるクラウド型コンタクトセンター)、ファイブナイン(Five9)、トークデスク(Talkdesk)、ジェネシス(Genesys Telecommunications)、アスペクト・ソフトウェア(Aspect Software)など。
また、Twilioもドメインは違うが、面白い切り口でコンタクトセンター領域に参戦しており、将来的にリングセントラルとなにかしらかち合う可能性もなくはないので動向ウォッチが必要だろう。
RingCentral Pulse for Contact Centerは、コンタクトセンターのパフォーマンス・KPIの自動モニタリング。
40%ルールを意識しているRingCentral
Appプラットフォームで細かな顧客ニーズを満たし利便性を高めるSaaSの鉄板戦略。
RingCentralのプラットフォームを通じて、サードパーティの開発者および顧客は、RingCentralのソリューションをSalesforceなど主要なビジネスアプリケーションと統合したり、カスタマイズできるなど、シングルプラットフォームであるSaaSの弱点をプラットフォームモデルによってつぶしている。
導入規模が大きい企業に関しては解約率が低く(たいていのSaaSがそうだが)スイッチングコストが高いビジネス。ただしビジネスコミュニケーションは競争も激しい領域。
売上成長率と利益(企業によってはFCFマージンだったり営業利益率だったり)のハードルであるRule of 40(40%ルール)でいえば、ややグロース寄りに重心をおいている。
リングセントラルの場合は売上成長率+営業利益率で見ているようだ。多くの企業は売上成長率+FCFマージンで比較しているが、言わんとする基調部分は成長ステージに合わせた企業の利益と成長の重心の変化を見るのに使えるという点は変わりない。
この記事でも言及しているが40%ルールを下回っているからダメな企業ということではなく、EV/売上高マルチプルなどと照らし合わせて同業企業と比較しながら推移を見る必要がある。
リングセントラルの業績推移グラフ
グラフ調整中。
SaaS企業のRecurring Margin比較
サービスナウとかセールスフォースとかさすがに高いですね。 pic.twitter.com/FT1nkgGIpe
— 気になる企業調べる🐘 (@kininaruzou) September 17, 2018
<RingCentral株価>
リングセントラルの決算を時系列でまとめる
<RingCentral ’19 Q1決算> 2019/5/6
EPS(Non-GAAP) $0.17 予想 +$0.02
売上 $201.49M (+34.0% Y/Y) 予想 +$7.94M
<RingCentral ’18 Q4決算> 2019/2/11
EPS(Non-GAAP) $0.23 予想 +$0.05
売上 $188.62M (+33.6% Y/Y) 予想 +$7.5M
<RingCentral ’18 Q3決算> 2018/11/5
売上 $173.83M (+33.4% Y/Y) 予想 +$7.13M
Non-GAAP EPS $0.19 予想 +$0.03
<Q4ガイダンス>
売上 $179M~$182M (+27~29% Y/Y 予: $175.6M)
EPS $0.17~$0.19 (予: $0.17)
AT&TはAT&T Office HandというRingCentralOfficeプラットフォームをベースとしたソリューションの提携を拡大している。
<RingCentral ’18 Q2決算> 2018/8/6
EPS $0.19 予想 +$0.04
売上 $160.83M (+34.7% Y/Y) 予想 +$5.12M
<Q3ガイダンス>
売上 $165M~$168M (コンセンサス: $163.2M)
EPS $0.15~$0.17 (同: $0.15)
<FY18ガイダンス>
売上 $649M~$656M (同: $643.32M)
EPS $0.66~$0.70 (同: $0.62)
2020年中に売上高10億ドルを目指すとのこと。