ナショナル・ビバレッジ(National Beverage Corp.)は1985年に紆余曲折を経て設立されたアメリカの飲料メーカー。
アメリカで起きている同社のLaCroix(ラクロワ)というスパークリングウォーターの一大ブームが、全米で注目の的となっている。
アメリカの炭酸飲料離れがとまらない
世界的にも傾向は近いが、アメリカの炭酸飲料離れ、甘味料入りのソフトドリンク離れは止まっていない。
Source: Euromonitor
SNS映えという世界同時トレンドをつかんだLaCroix
その代わりに台頭したボトルウォーターのシェアの高まりと、健康的な飲料を好む嗜好の変化の中、自然派スパークリングウォーターのLaCroixが「SNS映え」という追い風もありブームとなった。
Comment 💚 if you’re sippin’ on some Lime LaCroix today! ☺️ (📸:@tymoss) pic.twitter.com/nirWSUYZr0
— LaCroix Water (@lacroixwater) July 5, 2017
LaCroixのレトロなデザインがなぜか人気がでてSNSで熱狂的に「LaCroixと自分」の画像が拡散されるブームは続いている。
また、Whole Foodsなどでよく「LaCroix wall art」としてディスプレイ展示されるため売り場における存在感は大きい。
それほどの人気があるためか、LaCroix watarは競合他社の類似製品に対しかなり強気の価格設定がされている。
実際にGoogle Trendで見てみると確かに人気だ。
ラクロワ効果のおかげで残念だったそれまでの利益率も上がってきている。
ただし、ライバルと比べるとまた違った印象となる。
Source: Glaucus
LaCroix以外の柱であるSHASTAやFaygoなど他ブランドは伸び悩む
また、売上の約半分を、LaCroix以外のオールドブランドSHASTAとFaygoなどが占めており、これらの売上は芳しくない。
ちなみにFaygoは1907年創業で1987年にナショナルビバレッジから買収され、SHASTAは1889年に創業され1985年にナショナルビバレッジが買収と歴史は古い。
SHASTAは今では業界標準となった卸売チャネルを通じて缶やボトルを食料品店に直接販売するスタイルをはじめてとった飲料メーカーで1947年にはじめてスチール缶を採用したパイオニアでもある。
そういった歴史をうまくブランドに活かそうと、ナショナルビバレッジはSHASTAをSDAs(Soft Drink Alternatives)としてテコ入れしようとしている。
ナショナルビバレッジの業績推移グラフ
会計に疑いの目を向けられたナショナルビバレッジ
2016年、ナショナルビバレッジはGlaucus Research Groupのレポートで、不可解な財務実績を指摘され株価が急落したが同社はその指摘を否定している。
確かに、カンファレンスコールをホストしていなかったり、4大会計事務所による監査を受けていなかったり、デューデリジェンスを拒否したり秘密主義な会社ではある。
ちなみに4大会計事務所(Big 4 audit firms)とは
・アーンスト&ヤング (Ernst & Young)
・デロイト トウシュ トーマツ (Deloitte Touche Tohmatsu)
・KPMG
・プライスウォーターハウスクーパース(PricewaterhouseCoopers)
ナショナルビバレッジの創業者であり会長兼CEOのニック・カポレラ(Nick A. Caporella)が株式の75%を保有しており(IBSパートナーという資産管理会社を含む)、近年の株価高騰で80歳でフォーブス富豪リスト「Forbes400」に載ったりもした。
LaCroixのスパークリングウォーター競合
執筆時点では、LaCroixはコカ・コーラ、ペプシコ、ドクターペッパー、ネスレなどの飲料の巨人に対しても販売シェアを奪っている。
コカ・コーラ
Minute Maid Sparkling, Dasani Sparkling
ペプシコ
Aquafina Sparkling, Perrier(ネスレライセンス)
ドクターペッパー・スナップル
Schweppes, Bai Sparkling
ネスレ
Poland Spring Sparkling Water
ポーラー・ビバレッジ
Polar Seltzer Sparkling Water
ナショナルビバレッジ株価
LaCroixブーム一本打法でブームがいつ落ち着くのか、また、アメリカ以外で流行るかは未知数だ(日本では輸入卸が2016年に販促をしていたがブームにならなかった)。
改めて掲載するが、アメリカ部の記事は全て買い推奨でも売り推奨でもなく企業を知るための叩き台としてニュートラルなスタンスであることをご留意いただきたい。ディスクロージャーとして筆者のポジションはポートフォリオページ及び変動は逐一Twitter/FBで開示している。FIZZの業績がどうなるかは予想できないが、一般的には投資経験の浅い人はこういった情報公開の少ない企業の投資はリスクが高いと考えてはいる。
あくまで、コカ・コーラやペプシコなどの株式を保有している読者の方が多いようなので飲料カテゴリーにおいて最近伸びているこのLaCroixブームと同社について知ることは有益だと判断した。同社についての補足事項があればコメント欄にて補足いただけるとありがたい。