従来のタバコよりも加熱式タバコの方が税率が低く、利益率が高いためタバコ会社は儲かるのだ。
さらに日本の場合はタバコ会社によって大きな税率格差がある。
- 従来の可燃紙巻きタバコの税率は63.1%
- フィリップモリスのアイコス(IQOS)のヒートスティックの税率は49.2%
- ブリティッシュ・アメリカン・タバコ(BAT)のgloスティックの税率は36.2%
- JTのプルームテックの税率は14.9%
なぜ加熱式タバコの税率が日本でここまで差があるのかの理由、そして「アイコスのデバイスはクーポンで値引きして売ると赤字」といわれる機器製造コスト、現状のシェア争い状況を含めたタバコ大手3社の競争力について考察する。
意外にもアイコスの税率は従来のタバコの税率に近く、PloomTechのカプセルの税率は圧倒的に安かった
従来のタバコは税金を吸っていると言わんばかりの63.1%もの税金が課されているが、加熱式タバコは日本ではパイプタバコに分類され税率が低いという話だった。
その税率の詳細には驚いたことに、フィリップモリスのアイコスのスティックとJTのプルームテックのカプセルは同じ価格で販売されているが税率は3倍も違うということだ。
以下、上記データのソースとなる国会会議録検索システム「第4号 平成29年4月10日」より該当箇所を抜粋 *太字は筆者による強調
http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/sangiin/193/0015/19304100015004a.html
○松沢成文君 無所属クラブの松沢成文です。
本日最後の質疑者になりますので、よろしくお願いいたします。
私は、恒例の、ちょっとたばこの問題を取り上げたいと思うんですけれども、特に、たばこの税金の問題からお伺いしたいと思います。
財務省のホームページによりますと、日本国内で販売されている主な紙巻きたばこ、一箱四百四十円当たりの税負担割合は、たばこ税と消費税を合わせた税額と税率が二百七十七・四七円で、この税率は六三・一%とありますが、これで正しいでしょうか。○政府参考人(星野次彦君) お答え申し上げます。
先生今御指摘になられましたとおり、一箱四百四十円の紙巻きたばこに係る税負担でございますが、たばこ税が二百四十四・八八円、消費税が三十二・五九円、合計で二百七十七・四七円、負担率は六三・一%でございます。○松沢成文君 ここ数年、この加熱式たばこというたばこが市場に出回ってきていまして、こういうやつらしいんですけれどもね。(資料提示)これ、今市場に出回っているのは三種類あるんですね。フィリップ・モリスのアイコスとJTのプルーム・テック、そしてBAT、ブリティッシュ・アメリカン・タバコのグローというんですかね、これの一箱当たりの価格と税率はそれぞれ幾らになっていますでしょうか。
○政府参考人(星野次彦君) お答え申し上げます。
現在販売されております加熱式たばこに係るたばこ税、消費税の負担率につきまして、各製品の重量一グラムを紙巻きたばこ一本として税額を計算いたしますと、フィリップ・モリス社の一箱四百六十円の製品アイコスの例では二百二十六・三〇円が税でございまして、率として四九・二%、JT社の一箱四百六十円の製品プルーム・テックの例では六十八・三五円の税負担、一四・九%、ブリティッシュ・アメリカン・タバコ社の一箱四百二十円の製品グローでは百五十一・一〇円の税負担で三六・〇%になります。○松沢成文君 いや、驚くべき数字が出てきました。
こっちのシガレット、紙巻きたばこは、JTのメビウス、あるいはPMのマールボロというんですか、それからBATのケント、これも有名な銘柄ですね。これ、大体四百四十円とか四百六十円、四百二十円。それで、当然一本当たり幾らと税は計算しますので、税額一緒なんですよね。二百四十四・八円ですね、これ、たばこ税でいって。
さあ、今度、こちらの加熱式たばこ、加熱式たばこは税額が四倍も五倍も開きがある。PMもJTもBATも、大体この一箱で四百六十円とか、BATだけ四百二十円と安いんですけれども、税を比べると、何とアイコスは四九・二%税取られているんですね、負担しているんです。それで、BATのグローは百五十一円。そして、何とJT、六十八円ですよ。三分の一、たばこ税だけでいうと四分の一ぐらいになっちゃうんですよ。こんな不公平な税制ってあるんですか。
だって、このパッケージの値段はほぼ一緒なんですよ。それなのに、海外からの、フィリップ・モリスやBATはめちゃくちゃ税金取っていて、自国のJTだけは三分の一、下手したら四分の一の税率なんですね。これ、財務大臣、私も今日聞いて初めて知ったんですけれども、こんなことをやっていたら、非関税障壁そのものじゃないですか。
輸入たばこというのは関税ないんですね。ですから、日本の市場の中で、外国産であろうとJT産であろうと、同じイコールフッティングで競争しなきゃいけないんですよ。それなのに、取られる税金は三倍、海外のたばこはJTの国産たばこの三倍取られるわけですよ、この加熱式たばこにおいては。これは私は非関税障壁そのものだと思いますし、こんなに国内のたばこを優遇する税制をしていたら、それこそそのうち国際問題になると思うんですが、大臣、ちょっとまずここの感想を聞かせてくださいよ。いいんですか、こんなことで。○国務大臣(麻生太郎君) 国際問題にしたいのかどうかは知りませんけど、私のちょっと記憶ですけれども、これ、葉っぱのグラム数で決めているんだろう、そうだったな、たしか。葉巻やら何やらで決まっているんだろう。(発言する者あり)うん、それが理由ですよ。
だから、中に入っているたばこの葉の全体量の違い、あるいはタールの量が違うんだと記憶しています。あとは、詳しいことは役人に聞いてください。○松沢成文君 確かに大臣言うとおり、このシガレットの方は一本幾らで税が掛かってくるんですね。こちらの方は、中に入っているたばこの量だというんですけれども、まず、加熱式たばこでこれだけ三社で税率に負担に差があるのはなぜなんですか。そこから聞きましょう。
○政府参考人(星野次彦君) お答え申し上げます。
たばこ税法におきまして、製造たばこを課税対象としておりますけれども、この場合の製造たばことは、たばこ事業法におきまして、葉たばこの原料の全部又は一部とし、喫煙用等に供し得る状態のものと定められております。
紙巻きたばこにつきましては本数に応じた課税を行っておりまして、この一本の中には、葉たばこのみではなくて、例えばフィルターや紙の部分も含まれております。本数で捉えることが困難なパイプたばこにつきましては、紙巻きたばこ一本の重量、これがフィルターや紙も含めましておおむね一グラム程度であったことを踏まえまして、一グラムを紙巻きたばこ一本に換算して課税を行うこととしております。
御指摘の加熱式たばこは、パイプたばこに区分をされております。今申し上げましたとおり、パイプたばこは、その重量一グラムを紙巻きたばこ一本に換算してたばこ税を課税することとされておりまして、現在販売されている加熱式たばこにつきましては、一箱当たり葉たばこの詰められているスティックですとかカプセル、これの重量を見て、この重量に掛けて税率を出している、税金を出しているということでございまして、例えばフィリップ・モリス社の製品アイコスの例ですと、これは十五・七グラム、それからブリティッシュ・アメリカン・タバコ社の製品グローの例では九・八グラム、JT社の製品プルーム・テックの例では二・八グラムと、各社の製品の重量が異なることから税額が異なっているということでございます。○松沢成文君 スティックというのはこういうやつですね。このスティックの中に入っているたばこの葉っぱの量で決めているというんです。
それでは、なぜ小売価格が一緒になるんですか。だって、葉たばこの量で税を決めているのであれば、小売価格が一緒というのはおかしいじゃないですか。みんな四百六十円、小売価格どうやって決めているんですか、これ。○政府参考人(星野次彦君) お答え申し上げます。
繰り返しになりますけれども、このたばこの税、一本当たりの重量というのは、葉たばこの、たばこの量のみではなくて、フィルターですとか、それからスティック、カプセル等々も含めた重さでもって課税をしております。
結果として小売価格、販売価格がどうなるかということは、これ自体はそれぞれの会社の販売戦略等に基づいて価格を決定しているというふうに認識をしております。○松沢成文君 財務省が小売価格を認可するんじゃないんですか。そのときに、なぜ同じ値段になるんですか。だって、たばこの葉っぱの量が違うんでしょう。だから税額が違うんでしょう。それなのに小売価格は同じ四百六十円で認可しているじゃないですか。そこおかしくないですか。
○政府参考人(佐川宣寿君) お答え申し上げます。
たばこの小売定価の認可のお話は、それはたばこの量とかではなくて、まさに消費者に影響を与えないとか、そういう条文がたばこ事業法にございまして、そこに反しない限りは小売定価の認可を認めるということになっておりますので、その販売戦略上の値段が一緒かどうかということについては、別に我々判断している材料ではございません。○松沢成文君 それは余りにも公正な競争としておかしくないですかね。だって、同じ小売価格で売っているんですよ。これ財務省が決める価格ですよ。こっちのたばこの量はすごく少ないから税が安くなる。圧倒的に得するじゃないですか。本数で決めているこちらの方はそういうことになっていませんよ。ちゃんと小売価格が同じだったらたばこの税額同じなんですよ。
これは、政府の特殊会社であるJTが加熱式たばこで随分苦戦しているんです、フィリップ・モリスにどんと先に行かれて。とにかくこの十年、加熱式たばこで追い付かないとJTの経営は厳しくなる。それだったら、このJTがこれから全国販売するプルーム・テックというたばこの税率をぐっと下げて、どうにかJTがうまく商売できて、そしてJTの株価も上がって、財務省は筆頭株主ですから、そこに上がってくる配当金、これ六百億、七百億あります、それを使って財投の各独立法人にお金を回して、どうにかいいたばこ利権は維持していきたい、こう思われても仕方ないんじゃないですか。○政府参考人(佐川宣寿君) お答え申し上げます。
先ほどの話で申し上げますと、たばこ事業法におきましては、個別製品の小売定価認可につきましては、当該申請小売価格による販売が消費者の利益を不当に害することとなると認めるときなどを除き認可しなければならないと、こうなってございまして、各たばこ会社が自分の企業戦略に基づきまして設定しましたその販売価格が、この条文である消費者の利益を不当に害することとなると認めるときとか、そういうことに該当しない限りは認可をするということになっているところでございます。
韓国でもアイコスが販売されはじめたが、アイコスは韓国では電子タバコ扱いで税率が低いことで韓国野党が税金引き上げの法案を提出していた。
もっともタバコに関しては税金をあげてもそれが直接禁煙率につながっているわけではないというデータも多い。
だからこそアメリカの規制当局であるFDAは「ニコチン量規制」という切り口で解決していこうということだろうか。
PloomTechのデバイスはオールドタイプの電子タバコと似たようなシンプルな構造で安価で製造できるはずで、まだカプセルの製造原価は開示されていないものの、ここまで税率に差があるのならば利益率は高そうだ。
一方、アイコスの機器はクーポンによる値引きで売ると赤字
一方、アイコスのデバイスは現状のクーポン値引きだと赤字であることがアイコスの販売元であるフィリップモリス(PMI)の決算で示唆されている。
すでにアイコスはフィリップモリス・インターナショナル全体の8.9%の売上を占めているほどに存在感は増している。
この理由はデバイス収益も含まれているため。
PMIカンファレンスコールによるとRRP(アイコス等)売上高のうち約22%をアイコスデバイスが占めているという。
さらに、「アイコスデバイスはクーポンによる割引で赤字」である(現時点)ことを明らかにしている。あくまで最初のプロモーションのために一時的な値引き(クーポン)で販売しているだけのようだ。
となると、先行したアイコスは先行者利益として既存紙巻たばこからの転換で当初はシェアを獲得できるかもしれないが、低い税率による利益率とデバイスコストで優位性の勝るPloomTech(予測)のJTは長期消耗戦では優位性があるかもしれない。
というのもJTはカプセルさえ売れれば儲かり、デバイスを売る必要は実際ないのだ。ネットではJTのPloomTech本体を入手できない消費者がPloomTechカプセルを吸える互換品でカプセルを購入しているユーザーも少なくない。
一方のアイコスは特許を取得した独自のヒートブレードの構造ゆえ互換品・模造品ではデバイスの代用が難しく、アイコスのヒートスティックを先行拡大し売るためにはPRクーポンでネガティブマージンの本体を売らざるを得ない。定価に戻ったとしても故障率が改善されなければもっと安価なgloに流れる可能性もあり、gloとの競争がある限りクーポンによる値引きを当面やめられないのではないかと推測している。
複雑な構造ゆえのアイコスの故障率の高さは突出しているのでその点でも改善がない場合は本体が足かせになりかねない。
ただ、今後はアイコス以外にもフィリップモリスは開発しているようなので、なんともいえないが。
日本の次に3社が狙うスイスのシェア争い
gloが最初に進出した仙台では8%でシェアが頭打ちしている一方、アイコスは17.1%とまだシェアを伸ばしている。既存紙巻きタバコからの転換率はアイコスに優勢かもしれないという先行データの1つだろうか。
とはいえ、gloを開発するBATは電子タバコで世界最大のシェアを誇り、加熱式タバコでも、先行するアイコスを追ってgloやPloomTechは激戦地スイスでもシェア争いを繰り広げる。
BATのgloは2017年4月からスイスで一気に全国展開をしており、それがアイコスの伸びを阻んだ。
見ての通りgloが進出したスイスではアイコスの伸びが減速している。
もともとスイスでは紙巻きタバコからアイコスへの転換率が他国よりも低かったので国によって好みの差もあるのだろう。
このアイコスのスキマをgloに奪われてはならないと目をつけたのかJTがプルームテックを2017年7月21日からスイス国内1500店舗で発売しスイス加熱式タバコ戦争に参戦した。
日本同様スイスでは電子タバコに使うニコチン入りリキッドの販売が規制されており、加熱式タバコの市場としては魅力的でアイコスにシェアを確保される前に早めに参入が必要と判断したようだ。
JTにとってはスイスが初のプルームテック海外デビューとなる。
PloomTechのカプセルの税率がスイスではどういった扱いなのかはまだ調査中だ。
アイコスのコスト構造は他社より不利かも
生産コストについてだが、前述のようにIQOSはクーポンによる値引きで赤字となるほど思ったより原価が高い(加熱ブレードにGOLDなどを素材につかっているからか…)上に、他社のように互換品で代用できず、中身のスティックを売るためには本体を販売しなければならない(替刃商法だが他社は実際やろうと思えば替刃だけ最初から売れる)。
アイコスも互換品・模造品はあるにはあるが、周りから加熱する方式ではgloと同様で、アイコスの売り中央からの加熱というブランドアイデンティティが失われる。(ちなみに互換品を推奨しているわけではないし、爆発した電子タバコなどの事故もあるので危険である。)
フィリップ・モリスとBATでは既存の紙巻きたばこの製造ラインを、加熱式たばこ用のスティック製造に転用することが可能で、両社は次々に工場の転換や増産を発表している。一方でJTは製造ラインをゼロから作ることが必要。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-06-28/OS936P6KLVR701
Bloombergはこう言っているが、実際のところBATは知らないがフィリップモリスは既存工場をさほど低コストに転用できているわけではない。
金利が高騰すると借金の借り換えに苦戦しそうな中、工場を増やしている。
2017/6/26 2番目のアイコス専用工場
スイス・ヌーシャテルの実験的な小さい規模の開発センターを除けば実質最初のアイコス専用工場だったイタリア・ボローニャのクレスペッラーノ工場を拡張する形で追加で5億ユーロ投資しアイコス工場を拡大。2018年末に完了予定。
2017/3/22 3番目のアイコス専用工場
ギリシャのパパストラトス工場を紙巻たばこ生産からアイコスのヒートスティック専用工場にするために3億ユーロ投資し転換。
2018年1月に生産開始予定。やたら転換が早いのはなぜ。
2017/6/19 4番目のアイコス専用工場
ドイツのドレスデンにアイコスのヒートスティック生産ができるハイテク工場を3億2000万ドルかけて建設。
2017年後半着工で2019年の早い時期には完成予定。
2017/7/25 5番目のアイコス専用工場
これまで紙巻タバコを生産していたルーマニアのオトペニ工場を
アイコスのヒートスティック生産工場に転換するため4億9000万ユーロ投資。
工場の転換は2020年に完了予定。
この設備投資のために(もともとドル高による圧迫で余裕はなかったが)自社株買いもやめている。
BAT経営陣は「PMIは既存紙巻きタバコの販売を将来的に全廃するのが目標といっているが、我々は消費者が求めるものを売る(紙巻たばこを将来的に売らないとは言うつもりがない)」としており、そのあたりのPMIの最大出力の加熱式タバコ一点リソース集中の結果は興味深いものがある。
元々同じ会社だった米国のアルトリア・グループに米国におけるアイコス販売のライセンス供与でライセンス収益を得るはずなので、アイコスが認可された後は資金繰りは多少楽になるだろう。また、ドル安が続けば米国外で販売するPMIには追い風となる。
ただし、米FDAの決定のように海外でもニコチン規制まで踏み込むところが出てくると状況は変わる。
ただでさえプレーンパッケージなど厳しいタバコ規制が進んできているので、米FDAより厳しい規制(そもそもまだパブコメ待ち段階だが)が行われても不思議ではない。
以上で本題の件は終わりだが、先程の質疑応答の続きで興味深い内容もあったので紹介しよう。
○松沢成文君 次に、この加熱式たばこの中に入っている成分、吸ったときにニコチンやタール、これあるんですよね。燃えていませんから毒物は多少少ないと言われています、たばこ会社はそう言っています。でも、中にはニコチンやタールが入っています。
さあ、たばこ事業法で、なぜたばこでニコチンやタールが入っているのにその表示をしないんでしょうか。たばこ規制枠組条約では、たばこはその毒物をきちっと表示しなさいとなっているのに、この加熱式たばこは表示をしていません。その理由は何ですか。○政府参考人(佐川宣寿君) お答え申し上げます。
国内で販売されてございます製造たばこにつきましては、今委員おっしゃいましたとおりで、たばこ事業法に基づきましてニコチンやタールの表示義務がございます。ただ、たばこ事業法のその規則の中に、タール量及びニコチン量の測定が著しく困難であると財務大臣が定めるたばこ等につきましては、その表示義務が除外されております。
それで、紙巻きたばこにつきましては、実はISOという国際的な標準を決める機構がございますが、ISOにおいてこの紙巻きたばこの標準的な測定方法というのが定められてございまして、我が国においてもそれを採用して、大臣の告示でたしか決めて、それを使っております。
他方、この加熱式たばこの製品というのは、新しい製品であるということもありましょう、現状、いまだその標準的な測定方法が確立してございませんので、そういう意味では表示義務からは除外されているところでございます。ただ、加熱式たばこに係る測定方法、今後広がっていけば、国際的な動向もございましょうから、そういうものを見ながら我々もその段階で検討していきたいというふうに考えます。○松沢成文君 たばこの害、喫煙だけじゃなくて、今受動喫煙の害もあるということで法整備もなされていますけれども、やはり、たばこのパッケージに、中に毒物が入っている、それをきちっと表示しないと消費者は誤解するんですよ。それがあって初めて、ああ、加熱式たばこだけれどもやっぱりニコチンやタールはあるんだな、じゃ、吸い過ぎには気を付けよう、あるいは吸うのをやめようということになるんでしょう。それがないなんというのはやっぱり条約上見ても非常におかしいわけで、改善を求めたいというふうに思います。
さて、続いて、税率にもう一度戻りますけれども、たばこ規制枠組条約では、たばこはやっぱり毒性もあるし、できるだけ喫煙率を下げたいということですから、たばこの税率は七〇%以上を目指すようにとなっているんです。日本のシガレットの税率でさえまだ六三%、六五%。これだって本当は七〇%を目指すべきなんですよね、日本も条約に入っているんだから。
さあ、今度、先ほどのアイコスは五〇%近く行っています。しかし、JTのプルーム・テックは何とその三分の一以下ですよね。七〇%を目指すべきたばこの税率で、プルーム・テックは一四・九%。この税率自体、全くもって条約の方針に反しているんですね。
さあ、どうでしょうか。シガレットの税率を上げるだけじゃなくて、このプルーム・テックの税率をしっかりと条約に沿った方向で上げるという方向性はありませんか。○政府参考人(星野次彦君) 加熱式たばこの税率でございますけれども、繰り返しになりますが、先ほど申し上げたように、分類としてはパイプたばこに分類をされて、したがいまして、重量一グラムを紙巻きたばこ一本に換算して課税をすると、その重量自体が葉たばこが詰められているスティックやカプセルが課税対象である製造たばこに該当するということで、この重さでもって課税をし、その税負担は今先生がおっしゃったような負担になっているということでございます。
これを今後どうするかということでございますけれども、加熱式たばこ、まだ出て日も浅い製品でございまして、これについてどのような課税にしていくかということにつきましては、市場における動向等々をよくにらみながら今後検討していく課題だと考えておりますけれども、現時点で取っているルールとしては、これまでの税のたばこにおける分類に則して行っているものでございまして、一定の合理性があるものと考えております。○松沢成文君 たばこの農家がたばこを作っていますよね。たばこ事業法やJT法によって、その農家が作った葉たばこをJTは全量買上げで、それで国内の生産の独占ができるわけですよね。たばこの農家を守っていかなきゃいけない、たばこの内外価格差が解決されるまでは民営化できないというのが政府の民営化しない大きな理由です。
でも、今喫煙率がどんどんどんどん下がっています。ですから、たばこ農家から買うたばこ量もどんどんどんどん減っているんですね。その上、加熱式たばこができて、加熱式たばこは燃やして吸うたばこよりも消費量は必ず落ちます。そうなってくると、たばこの葉っぱの需要がどんどんどんどんなくなるわけですよ。ですから、これ内外価格差を是正するなんというのはできるはずがないわけですね。ですから、こういう理由を立ててJTを民営化できないというのは全くのナンセンスなわけです。
たばこというのは、もう海外では民間の会社が競争しながらやっている市場なんです。今、中国を除いたらOECD諸国でも、たばこ会社を半国営で、特殊法人として抱えているのは日本だけなんですね。JTは今、経営の多角化をして、たばこ以外の医療品だとか食料品もどんどん手を出している。そしてたばこ自体も、加熱式たばこ、あるいは日本で許可されていませんけれども、無煙式たばこといって、新しい商品がどんどん出ているわけですよ。昔のたばこの葉っぱを燃やして吸うシガレット、どんどんどんどん需要が落ちているわけですよ。
もうこういう世の中になって、大臣、ここは大臣答えてもらわないと。なぜJT民営化できないんですか。JTはもう民営化してほしいと言っているんですよ。それに絶対に民営化はさせないと、今のままがいいんだという、固執する大臣の考えが私はどうしても理解できないんですけれども、いかがでしょうか、最後。○国務大臣(麻生太郎君) これは前々から、葉たばこ農業、農家というものの保護というのは、これは極めて大きな要素であって、松沢先生の話だと、簡単に潰しゃいいじゃないかという話のように聞こえるんですが、農家、農業というのはそんな簡単に潰せるものですかね。私のところでも、どうなんだか知りませんけど、結構、九州に限りませずほかのところでも葉たばこの業者というのは多い数なので、これはもう前々から出ていますけど、これ、ある日突然、はい、やめるって、それでどうするんです。騒ぎになったらその部分だけという話にもなりますけれども、私どもは、そういった意味ではなかなかそういった話はいかないんじゃないのか。
また、二兆一千億ですかね、今、税金は。地方税と国税とを合わせて二兆一千億ぐらいあると思いますけれども、そのうち半分が地方税に入ってきますので、私どものような町や市でも数億円のいわゆる交付税というのは結構大きなネタになっていると思いますので、これが簡単になくなると農家とかはえらい困りはせぬかね、あんたのところなんか。俺なんかはそう思いますけれども、隣の町に住んでいるからよく分かるんですけれども。
そういったようなことを考えますと、そんな簡単にできるという話じゃなくて、少しずつ少しずつやっていっているというのが今の実態だと思いますが。○松沢成文君 最後まとめますが、大臣の答弁聞いていると、とにかく既得権は守らないと、これを改革すると困る人がたくさんいるからできないと、もうまさしくそれを代弁しているだけなんですよね。
たばこ農家といいますけれども、たばこ農家というのは、これ、たばこだけを作っている農家は少ないんです。ほかの農作物も作っています。ですから、たばこをやめても、じゃ、農業で失業するかというのは、そうならない農家がすごく多いんですね。ですから、たばこ税をもし上げて、その分の一部税金をたばこ農家の転作支援とか、あるいは農業継続支援に回せばソフトランディングできるじゃないですか。
既得権守るために、それやったらおまえの県も困るだろう、もうこういう古い考えはやめましょうよ。そうしないと、日本は何にも構造改革ができないで終わると思います。
以上です。
よく調べているなこの人はと思ったら松沢成文氏は神奈川県知事時代に日本初の受動喫煙防止条例に取り組んだ経験があり、徹底的なアンチタバコ派の前衛のようだ。
いずれにせよ、加熱式タバコの成分の表示義務が免除されていることが単に政府が「海外の動向を見ながら」後手で対応しようかなという適当感が伝わってくるのはいただけない。
また、税率は今後変わってくる可能性も示唆されている。
ここで触れられていたタバコ農家の転作支援アイデアについてだが、ちょうどタイムリーにこんな記事があった。
バングラデシュ、タバコ栽培全廃へ規制草案 農家に転作促進
http://www.sankeibiz.jp/macro/news/170802/mcb1708020500007-n1.htm
タバコ以外の農産品に転作する農家に対して肥料や種子、農機具の購入などを支援し、タバコ栽培を減らしていく。タバコ生産については、2026年までに栽培面積を半減し、40年までに国内での栽培をなくすという政府目標に沿った措置だ。
このような転作支援による移行などの計画をもった国家もあるようだ。
本記事は喫煙を推奨するものではなく、税制、各国の政策、企業戦略と状況について定点観測を行うためのできるだけ中立的な立場で書かれたものである。
最近のWHOの強烈なタバコ規制への圧力、ロイターの本腰をいれたフィリップモリス批判、そして米FDAのニコチン量規制計画と、流れは明らかにタバコの害への世界的な圧力のコンボが続いている。最強の一角といわれたタバコ会社の巨額のロビー活動でどう骨抜きにされてしまうのだろうか。
おまけ:ニコチン量を制限したタバコの中毒性の研究結果も一応あるようだ。
Randomized Trial of Reduced-Nicotine Standards for Cigarettes
http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMsa1502403