グーグルの先端研究の取り組みは点と点だったものがいつのまにか線となり、面となっていることに驚かされる。
- グーグルの行動補助AIサービス(Now on Tapのようなもの)
- AR(拡張現実技術。例えばメガネをディスプレイとし補助的な情報をそこに表示してくれる)
これらはもともとは別々の技術だったが、組み合わせることによりスマートフォンの先にある新しいポテンシャルを示してくれているのではないだろうか?
Now on Tapというグーグルの行動補助テクノロジー
まず本題に入る前にGoogle Now on Tapというものを以下の動画で知っていただきたい。
このように Now on Tap は、どんな画面においてもスマホ端末のホームボタンを長押しするだけで画面に表示されている情報をAIが解析し”ユーザーが次にとりたいであろう行動”を予測し、調べ物やスケジューリングや予約や経路確認など次の行動をスムーズに簡易化してくれるサービスだ。
ARで何が実現できるのかマジック・リープを知ればいい。
AR(Augmented Realityの略)は拡張現実感・強化現実とも言われている。
このように、実際の視界とARデバイスが見せる拡張現実のビジョンを共に見ることができる。
正確に言えば、上記動画のマジック・リープ社の技術は既存のARの水準を超えている。
2014年にグーグルが主導した5億4200万ドルの投資を受けたマジック・リープ社はかなり秘密主義なスタートアップで我々が知ることができるのは2本の動画だけである。
一般的なARと違いMagic LeapのARは立体的であり、”さわる”ことができる。
消費者向けとしては成功することができなかった初代グーグル・グラスと違い、違和感の無いウェアラブルデバイスを作ることができれば、我々はスマートフォンを持つことなく両手が解放されることだろう。
メガネをかけたように実際の風景はそのまま見えるためフェイスブックのオキュラスなどのVRより没入感は欠けるが、日常的に使えるかもしれないポテンシャルがARウェアラブルデバイスにはあるだろう。
フェイスブックCEOマーク・ザッカーバーグは次世代コンピュータープラットフォームの主流はバーチャルリアリティ(仮想現実技術)であると予想フェイスブック(Facebook Inc)は世界最大規模の実名SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス=人と人とのつながりを促...
FBがオキュラスとVRを本気で普及させようとしているのに対し、グーグルもマジック・リープを本気で実現しようとしている(もちろんグーグルもVR分野は野放しではない)。
マジック・リープへの投資はグーグル本体からの投資であり、役員も送り込んでいる。
Now on TapとARの相性の良さ
次の行動を予見して提案してくれる Google Now on Tapというスマートフォンのコンシェルジュ機能はグーグルが描くビジョンのヒントとなっている。
たとえばNow on Tapのようなサービスをマジック・リープやグーグル・グラスなどのウェアラブルデバイスで、リアルの視界上の物体から自動的に情報を引き出すとしたらどうか?
いちいちスマホを取り出して検索する必要がなくなる時代をグーグルは示している。
教育分野・医療・観光など特定のシチュエーションからの導入が始まり、やがて様々な領域に一般化できるポテンシャルがある。
Now on Tapの紹介動画を見てわかるとおり、大きな波は「勝者総取りの時代」。
つまり、飲食店の口コミ=食べログ、レシピ=クックパッド
その分野で1番のアプリやサービスがこのようなサービスでは重宝され、より伸びていく。
グーグルが取り組む3つのARデバイス
スマホやタブレットをかざしてみる平面型のARが主流だが今後はマジック・リープのような3Dかつタッチアクション可能なものをグーグルは本命としているだろう。
- グーグル・グラスのような新ウェアラブルデバイス
- マジック・リープのような3D-ARデバイス
- スマートコンタクトレンズ
それでは、新しくなったグーグル・グラスプロジェクトとスマートコンタクトレンズに関して紹介する。
Google GlassはProject Auraに改称し新生
ネット接続できる眼鏡型端末として売りだされた初期のGoogle Glass(グーグル・グラス)は消費者向けではプライバシー問題や見た目の問題もあり普及に失敗したが、産業向けには着実に足場を築くポテンシャルがある。
Google Glassは常に視界の範囲内に自然と情報を表示できるため、Google Glassを装着した医師による手術や、医療システムの構築、製造現場などでのツールキットとしてサードパーティによって開発が行われている。
ウェアラブルデバイスの一番のメリットは、他の作業をしながら(両手を拘束されずに)必要な情報を適切なタイミングでリアルタイムで知ることができることだ。
これが周りが見えなくなる完全没入型のVRや、片手は拘束される上に目をそらしてしまうスマートフォンとの違いだ。
コンタクトレンズ型ディスプレイの可能性
デジタル情報を映し出すためにメガネ型デバイスすら不要の世界があるとしたら、コンタクトレンズ型ディスプレイの他にないだろう。
すでにグーグルはスマートコンタクトレンズを医療目的で開発している。
LEDを使ったコンタクトレンズ型ディスプレイを試作したワシントン大学の研究チームの研究者もグーグルのスマートコンタクトレンズ計画に関わっていることから非現実的な話ではない。
グーグル(アルファベット)の先端技術研究所であるGoogle Xが開発したスマートコンタクトレンズはセンサーとチップとアンテナとLEDライトを二層のソフトコンタクトレンズ用素材に挟むという構造で医療用コンタクトレンズとして大手医薬品企業ノバルティスと組んで認可を取得する段階だ。
具体的には涙に含まれる成分をレンズを通して観測することで、糖尿病患者に血液検査などの苦痛なしにラクに連続的な血糖値モニタリングを提供することができるというもの。
なぜノバルティスと組んだのか
ペイジCEOが言うように医療は規制が著しく厳しいため新規参入が難しい。
そしてグーグルのリソースも有限だ。そのためグーグルはテクノロジー面の得意分野に焦点を絞り、自社開発ではなく豊富なノウハウとコネクションのある大手医療機関とレベニューシェアの道を選んだ。
まずはノバルティスはオートフォーカス(遠近両用)レンズを開発する。
老眼だったり、近くを見ている時にふと遠くを見るときの焦点切り替えが難しいというような問題を抱えている人は相当数いるので、この自動焦点調節が可能になるスマートコンタクトレンズが開発できた場合、わざわざ用途別の従来の固定焦点型レンズを不要とするどころか、うまくいけばデジタルカメラ並のピントあわせができるならばスポーツ会場などでの遠距離の視認へのロマンも広がる。大規模なマーケットへグーグルとノバルティスが進出しようとしている。
話はそれたが、スマートコンタクトレンズはこのように臨床段階まで進んでいる現実的デバイスであり、まだ発表されていないものの、これまで紹介してきた技術の延長線上にオートフォーカス機能もついたコンタクトレンズ型ディスプレイという未来もあながち否定はできない。
カバー写真:出所Google (血糖値測定用スマートコンタクトレンズ)
まとめ
グーグル・グラス的なるウェアラブルデバイス、マジック・リープ型3D拡張現実デバイス、スマートコンタクトレンズと、それぞれ別々の技術ではあるが、方向性はすべてグーグルの使命である情報の整理・アクセスである。
グーグルが保有するコンテンツマーケット(YouTubeや検索、アプリ)とそれを整理し提示してくれるAI(Now on Tapの派生)とクラウド、AndroidなどによるOSの市場制圧、各種ウェアラブルデバイス、全て関連しているものであり、組み合わせることによって巨大な市場を築くポテンシャルがある。
みんなの投資分析とコメント
GoogleのInside Searchで先ほど発表された検索エンジンのAIの進化の発表は興味深かったですね。
その内容を要約するとGoogleは、ユーザーが複雑な質問をGoogle検索エンジンに投げかけてもユーザーの検索意図を高度に把握し、欲していたであろう答えだけでなくそのコンテキストすらもそのまま提供できる(つまり検索結果の羅列ではなくそこに表示)サービスに進化しつつあるというものです。はじめは英語からですが。
AIの進化によって、まだまだですが検索エンジンも進化しつつあります。
Now on Tapでも検索結果でサイトのリンクを羅列するのではなく複雑な質問でも回答がそのままポップアップする水準が近いかもしれませんね。
そうなるともはやウェブサイトというものはGoogleのAIが賢くなるためのリソースを提供しているだけで、検索時にGoogleがピンポイントで適切な”答え”を提供できるならば、検索結果のリンクの羅列などクリックする必要もなくなり、検索エンジンからのユーザーの流入には期待できなくなる未来が近い気がします。
当然それほど高度な検索AIが実装できる時期がくれば、その時こそMagic LeapのARグラスやグーグル・グラス的なるものは実用レベルになるかもしれませんね。
このスマートコンタクト関連のGoogleライフサイエンスCEOによる発明特許出願されましたね。
これによって老眼から解放される時代、そして先の話ですが神経回路と直接接続されるサイボーグ的な未来がきたらさらに便利な時代になりそうです。
医療機器メーカーEPGLがAppleとの提携でiPhone連携のAR(拡張現実)で映像を投影できるスマートコンタクトレンズを開発しているそうです。
GoogleとAppleともにAR投影可能のスマートコンタクトレンズ開発に従事しているということは興味深いですね。
「Alphabet傘下のVerily、涙から血糖値を測定できるコンタクトレンズの開発を中止」
https://japan.cnet.com/article/35128843/
血糖値測定コンタクトレンズの開発は中止するみたいですね。
やはり、餅は餅屋なのですかね。。。
らっきょ