ゼネラル・エレクトリック(General Electric Company)は発明家トーマス・エジソンが白熱灯用の優れたフィラメントを発見し、1878年にエジソン電気照明会社を設立して以来成長を続けてきた世界最大の多国籍コングロマリット(巨大複合企業体)であり、航空機ジェットエンジン、医療機器、エネルギー・制御事業、水処理、運輸関連事業、石油・ガス産業向けソリューションなどの部門に別れ、それぞれの分野において世界No1かNo2であり続けることを経営戦略として掲げている。
GE株価チャート
NYダウ工業株30種平均の1896年5月26日の算出開始以来唯一残存しているダウ平均採用企業であり、アメリカ合衆国の成長の歴史そのものである。
OIL & GAS(石油・ガス事業部門)
石油・ガス産業向けのガス・蒸気タービン、圧縮機、人工採油ポンプ、圧力容器、バルブ等の機器設計製造などの世界最大手。
ENERGY MANAGEMENT(エネルギー制御・保守事業部門)
発電設備の保守、性能向上サービス事業、プラント資産運用管理ソリューション事業、環境負荷改善サービス事業、送配電、水道、ガスなどのネットワーク設備の設計、運営管理。スマートグリッド製品とその電力システムの提供も。
POWER & WATER(電力・水処理事業部門)
蒸気タービン発電機、風力タービン、ガスタービン、原子力発電所関連製品、沸騰水型原子炉用の燃料の製造と販売、ガスエンジン、バイオマス発電向けイエンバッハガスエンジン、太陽光発電機など自然エネルギー事業等と、それらに付帯するサービス、資産管理システムや環境サービスを提供し、世界的に電力供給。
また、浄水製造や廃水処理のための膜・フィルターの提供などの水処理システムを各種産業向けに100年以上にわたって提供。
AVIATION(航空機ジェットエンジン事業部門)
民間航空会社や政府・軍事・海洋産業向けに航空機エンジンを提供し、エンジン部品の整備・修理・メンテナンスなどをアフターケア(このアフターケアが安定的収益源)。
HEALTHCARE(医療機器部門)
CTスキャナー、MRI、超音波診断装置、X線撮影装置、骨密度測定装置、核医学診断装置、PET、麻酔器、医療用画像ネットワーク、生体情報モニター、分娩監視装置、保育器、などの開発・製造。
TRANSPORTATION(運輸事業部門)
機関車、ディーゼルエンジン、掘削モーター、採鉱設備・駆動システム、ソフトウェア分析ソリューションを、鉄道輸送の管理最適化のため提供。
LIGHTING(照明ソリューション)
産業規模の照明ソリューション世界最大手であり、街灯・ビル・公共施設向けの照明機器、LED等を提供。
GEの業績推移グラフ
BE IN MARKETS WHERE WE WIN
GEといえば、1981年から2001年にかけてCEOとして采配をふるったジャック・ウェルチ元会長の「世界でNo.1かせめてNo.2になれない事業からはすべて撤退する」という方針が有名である。世界で一番手か二番手であれば市場を支配でき、製品を高く売ることが可能だが、それ以下では難しいという見方。
また、現在GEを率いるバロンズ誌が選ぶ「世界で最も優れたCEO」の栄誉に3度輝いたジェフリー・R・イメルト会長兼CEO(1982年にGE入社)の脱金融事業の方針もあわさり、さらに世界最高のインフラストラクチャーと技術の企業を志向し、選択と集中が進む。
そのため近年は、非中核部門であった金融・不動産部門と家電部門とメディア部門を売却し、その一方で仏重電大手アルストムのエネルギー事業の大半を買収、エネルギー・インフラの安定運用のための分析・ソフトウエア分野に投資するなど産業部門の比率を高めている。
1984年: 資源採掘事業売却
1976年に買収していた資源採掘企業ユタ・インターナショナル (UtahInternational Inc.)を、CEOをバトンタッチしたウェルチは上記経営戦略(No1 No2戦略)をふまえ利益がでていたにも関わらず売却し、その売却益でコア事業を強化。
1987年: テレビ事業と医療機器事業交換
GEのRCAブランドのテレビ・家電事業を仏テクニカラー(Technicolor)旧トムソンに譲渡、その代わり医療機器子会社トムソンCGRを取得(事業交換)しヘルスケア部門を主力事業に現在まで成長させ強化。
1992年: 航空宇宙事業売却
衛星レーダーなどの航空宇宙事業をロッキード・マーチン(旧Martin Marietta)に売却
2005年: 保険事業売却
再保険世界5位のGEインシュランス・ソリューションズをスイス・リー(スイス再保険)に売却。
2013年: メディア・コングロマリット売却
NBCユニバーサル(2009年には経営から撤退)全株式をコムキャストに売却
2014年: ガスタービン事業を買収
火力発電設備を中心とするエネルギーインフラと鉄道車両・システムの世界大手であるフランスのアルストムのエネルギー事業の大半を買収し、送配電・再生可能エネルギー(洋上風力発電・水力発電)、蒸気タービン・原子力事業でアルストムと折半出資の合弁会社を設立。一方、自社の鉄道信号事業をアルストムへ売却。ただし、アルストム株式の20%をフランス政府が取得することはGEにとっては大きな縛りになる。
当初予定のアルストムのエネルギー事業の全てを丸ごと買収できず、仏政府に足かせをはめられたのは手痛いものの、ガスタービン事業は世界でもGE、シーメンス、三菱重工、アルストムしか大手プレイヤーがいない非常に参入障壁の高い事業であり三菱重工やシーメンスではなくGEが買収した意味は同社セグメントNo1戦略からすると大きい。
2014年: 家電事業売却(2015年に合意が白紙へ)
利益が出ているにも関わらず、100年以上の歴史がある白物家電事業(洗濯機・LED照明)をスウェーデンのエレクトロラックスに33億ドルで売却予定だったが米司法省からの買収阻止の訴訟もあり合意を撤回。
2015年: 金融・不動産部門売却へ
製品販売に直接関係する金融サービス以外の金融部門を売却し、不動産資産・不動産事業も売却。
AAAの格付けが格下げされた原因であるこれら金融部門整理により、米国政府によるシステム上重要な金融機関の規制対象からはずれる見通し。
2016年: メタル3Dプリンティング大手2社買収
https://www.americabu.com/ge-additive-manufacturing
競合企業・関連企業
独シーメンス
―SIEMENS
―1847年とGEよりも歴史が古い重電
―電力、交通、医療、防衛、情報通信、生産設備などのGEに次ぐ多国籍コングロマリット
日立製作所
―原発(BWR)でGEと提携関係(GE日立ニュークリア・エナジー)
―改良型沸騰水型原子炉(ABWR)
―高経済性単純化沸騰水型原子炉(ESBWR)
―車両の開発、信号・運行管理システム等の鉄道システム事業
東芝
―GEと火力発電システムの共同開発・販売の提携関係
ABB
―スイスの重電大手
―高圧直流送電システム事業等
米ハネウェル(HON)
―Honeywell International Inc.
―航空機エンジン、アビオニクス(航空電子機器)、自動車部品等コングロマリット
三菱重工業
―火力発電設備を中心とした電力システム事業を日立と統合
―加圧水型原子炉(PWR)
―航空機事業MRJ(三菱リージョナルジェット)
仏シュナイダー・エレクトリック
―Schneider Electric
―エネルギー事業等のコングロマリット
仏アルストム
―ALSTOM
―鉄道車両等交通インフラ、送配電、電力インフラ
―欧州高速鉄道TGVの車両製造
ボンバルディア
―Bombardier Inc.
―カナダの重工業コングロマリット
―ニッチ市場のディーゼル機関車(DL)に注力のGEと違い電気機関車(EL)に注力
―飛行機部門(ビジネス航空機やリージョナルジェット等)
米ユナイテッド・テクノロジーズ(UTX)
―United Technologies Corporation
―航空機エンジン等コングロマリット
仏アレバ
―AREVA
―フランスの原子力発電大手
中国南車
―政府系の鉄道車両メーカー(高速車両の長春軌道が傘下)
中国北車
―政府系の鉄道車両メーカー(高速車両の青島四方機車が傘下)
みんなの投資分析とコメント
昨年の家電事業の売却は驚きましたね。GEブランドの家電はアメリカの家庭ではよく見かけますし、利益も400億円程度は出ていましたし(2013年の家電事業の営業利益)。家電部門の製造ラインを中国や新興国から米国に戻した矢先でしたが…。
売却先のスウェーデンのエレクトロラックス(Electrolux)は世界2位の白物家電メーカーですね。GEブランドをそのまま使用する権利も得ていますし、GEの家電事業の売上高は90%を北米が占めますから米国市場での足場を築くにはいい買収だったのでは。ちなみに家電世界1位はワールプール・コーポレーション(Whirlpool Corporation)です。
GEはインフラ企業に特化していく方針が続いていますね。
GEにとって白物家電事業は利幅が小さく、圧倒的No1でいられるような事業にも思えないので整理して利益率の高いインフラに注力するのは理にかなっているのでは。
GEの昨年の家電事業の売上高は全体の6%程度でしたが100年以上の歴史があったにも関わらずキッチリ切り離すところに経営的な強さを感じますね。GEを見習うべき企業は多いのでは。
そういえばGEのNo1 No2経営戦略はシスコの現CEOが方針として参考にしたと言っていますね。実際にそのようなセグメント戦略をしているようです。
ジャック・ウェルチ本は経営者の必読書だったくらいですしね。
ゼネラル・エレクトリック 4Q 決算
この石油・ガス事業部門では2013年に約33億ドルでラフキン・インダストリーズ(油井ポンプ製造会社)を買収しましたが500人ほどリストラするとのこと。さすがに原油安の影響があるようです。
ちなみに民事再生法の適用を申請したお騒がせスカイマークですが、その最大の債権者はGEキャピタルの一部門GEキャピタル・アビエーション・サービスでした…金額は147億…。GEは日本ではレイクを買収し展開していたもののアレを被弾するなどなかなかついてないですね。
仏アルストムは欧州だけでなくアフリカ・中東も主な地盤なのでそういった国は発電所の新設需要が期待でき、大型蒸気タービンの需要があり、関連製品が芋づる式に売れるので、蒸気タービン自体の利益率はそこまで高くなくとも重要なんですよね→合弁会社設立と譲歩したとはいえ。
なにより火力発電設備事業で三菱重工の売上高(統合後およそ1.2兆円)を大きく引き離すことに成功(アルストム統合後およそ3兆円)したわけですし。
重電メーカーの売上規模(2014年時点)
GE 14.8兆円
シーメンス(ドイツ) 10.4兆円
日立製作所 9.6兆円
東芝 6.5兆円
ABB(スイス) 4.2兆円
ハネウェル(米) 3.9兆円
三菱重工業 3.3兆円
シュナイダー・エレクトリック(仏) 3.2兆円
アルストム(仏) 2.7兆円
シーメンスはアルストムの蒸気タービン事業もほしがってましたね。GEと差がついちゃいました。
ハネウェルは2000年にGEが450億ドルで買収を表明(ユナイテッド・テクノロジーズによる買収計画に横槍)し、米国政府は認可したものの欧州委員会からの認可がおりずに断念した経緯もありますね。
1970年代にGEがビジネスコンピュータ事業の撤退(失敗)の際にハネウェルに同事業を売却してますね。その後あれはどうなったんでしょうか?
1960年代後半はほとんどの日本企業のような売上高は上がるが利益率が上昇しない(当時利益率3.3%)なんて時期がGEにもあったんです。
No.1 No.2戦略から数年で従業員の25%が解雇されるほどダイナミックな人員整理だったのが印象的でした。まさにリストラクチャリング。
GEはスリーサークルコンセプトなんてのもありましたね。あの時は13くらいの事業部門で、当時ウェルチは金融事業の買収も好んでましたから強化対象でした。レイクなどが買収されたのもその頃でしたね。
現CEOになってからはどんどん保険・消費者金融、そして不動産・金融部門と売却されていきましたし、あのコンセプトと比較すると今ではさらに絞られちゃいましたが。(たしかウェルチの出身だったプラスチック事業も2007年に売却されている)
原油安で巻き添えくらっているGEもなかなか買い場がやってきつつあるよね。
いいときに金融事業売りさばいたなーGEは。
豊富なキャッシュで自社株買いで、コア事業に集中できる。
ただしエレクトロラックスへの家電売却に米政府規制当局から独占禁止法面で待ったかかってる不透明感(?)
欧州のアルストム買収交渉の不透明感。
昨日GE買ったけどアメリカ株クラッシュしててつかまってしまった。
エレクトロラックスによるGEの家電事業買収計画がGEが合意を撤回して不成立になりましたね。
これでエレクトロラックスの株価が暴落してるのを見るとけっこう買収金額33億ドル自体が美味しすぎたのかもしれないですね。まだちゃんと利益が出てるセグメントではありますし。
いずれにせよUS司法省が買収阻止(消費者向け価格が値上がりする可能性)で提訴してましたし不透明感はあったので、GEはこの家電事業をどうするんでしょうかね。
GEのアルストム買収に関する欧州委員会の審議が9/11までの間でしたっけ?
不透明感はありますが、GEは競争優位性をもっていて(航空ジェットエンジンとガスタービンで同じ先端技術を共有している)まず統合によるシナジー(コスト削減)で目先エネルギー価格の不安定さは気になりますが長期的には問題ないのではと見ていますが。
収益のブレ幅も保守もあるのである程度は安定した経営戦略がとれますし。
月曜の下げは天与の買い場だったと信じて買い向かいました。
配当利回り4%ですよ…
アルストムのエネルギー事業の大半のGEによる買収が深夜に欧州・米国当局双方から承認されましたね。
今回の買収は競争法(独占禁止法)上の懸念から審査に多少の不透明感がありましたが
GEがアルストムの大型ガスタービン製造技術等一部資産をアンサルド・エネルジア(1853年設立のイタリア重電)に売却するという交渉カードをGEが提示したことを欧州委員会が競争上の懸念が後退したとして了承した模様。
一方、そのアンサルド・エネルジーアには昨年、中国国有企業である重電大手「上海電気集団」が40%出資しており、中国の影響下にあるアジアを中心とした新たな競合の気配はします。
GEの’15予想PERだと19倍ぐらいですかね。
2018年までに売却した金融事業等のキャッシュで900億ドルもの自社株買い等の株主還元を行うことと、成長見通しも悪くないので言うほど割安ではないけれども妥当な水準といったところでしょうか。
アクティビストのヘッジファンド(トライアン・パートナーズ)が最近大量にGE株を取得してますね。
ネルソン・ペルツのトライアンってデュポンの分割を求めていたHFだったし、クラフト・フーズとモンデリーズの分割も演出してますし分割が好きなんですね。
今回もGEを分社化要求するのかと思いきや、そうゆうわけでもなさそうで、単純にGEにポテンシャルがあると。彼は2017年の終わりまでにGEの株価は$40-45に達するだろうと予測しています。
GEは商業融資・リース事業をウェルズ・ファーゴに300億ドルで売却とのこと。
思ったより売却スピードが早くて良いですね。GEはIoTでも主要プレイヤーですし期待です。
工業部門の決算、予想より良かったですね。
石油・ガス部門の受注が38%の減少したのは予想通りで、原油価格が底打ちしたならばあとはプラスサイドの期待ができそうです。(逆もまた…)新値とってから株価上がっていけそうな地合いでいいですね。
GEの高い技術で入札に勝ってしまえばあとはメンテナンスで安定した売上が見込めるので、航空ジェットエンジン部門の堅調さは将来的なキャッシュフローをさらに盤石にしますね。
中国ハイアールがGEの家電事業を54億ドルで買収で合意だそうですが、これ最近合意撤回したエレクトロラックスに売却予定の33億ドルの時よりだいぶ評価額が上がってますね。
また司法省から消費者保護のための独占うんたらで横槍いれられないのであれば大きいですね。
風力発電機メーカーのシェアはGEは上の方ですが、ドイツのシーメンスがスペインのガメサ(Gamesa)を買収したことによりシーメンス・ガメサが1位となっていますね。
その他、デンマークのヴェスタス (Vestas Wind Systems)
ドイツのエネルコン(ENERCON)とセンビオン(Cenvion)
中国のゴールドウィンド(金風科技)とシノベルウィンド(華鋭風電科技)
インドのスズロン(Suzlon)
など、なかなか競合がひしめく風力発電マーケットですがGEは買収によってシェアを拡大させていく意向のようです。
最近GEはデンマークのLM Wind Powerを買収していましたね。
再生可能エネルギーにおける風力発電は太陽光発電と同じぐらい重要なので、正しい買収が続いてるように思います。あとはGEの強みとなりつつあるIoTによるスマートメンテナンスのエコシステムをどれだけ構築できるかですね。