エクソン・モービル(Exxon Mobil Corporation)はスーパーメジャー6社(国際石油資本)のうちの一角であり世界最大の総合エネルギー企業。
原油や天然ガス等エネルギー資源の探鉱・生産から輸送、石油製品・石油化学製品の精製・販売まで垂直統合された総合エネルギービジネスをグローバルに展開している。EssoやMobilなどのガソリンスタンドも運営している。
エクソン・モービル株価チャート
1870年にロックフェラーによって設立されたスタンダード・オイルから独占禁止法による解体された数社のうちエクソンとモービルが1999年に合併し現在に至る。エクソン1社の売上高だけで国家レベルの規模だ。
原油価格下落とエクソン・モービルの収益
原油価格が下落した場合、探鉱や生産を手掛ける上流部門は利益を削るが、精製などを行う下流部門は精製マージンの改善と需要増加に伴う精製量増加で利益が増える上流と下流の統合型ビジネスモデルだ。
基本的に大半の利益は原油価格が大幅下落してしまうと探鉱生産部門ではコストに見合わないリターンしか得られないため全体の利益は痛み、原油暴落局面では株価は軟調になります。それでも、エクソン・モービルは原油価格が下落しても、利益率の低い油田の放出や設備投資削減などのコスト管理によりフリーキャッシュフローを増加させ、確認埋蔵量も豊富のため、配当金の減配のリスクが少ないと言われており、連続増配企業としてもリタイア層に好まれる銘柄である。
エクソン・モービルの業績推移グラフ
外交に翻弄されるエネルギービジネス
原油と戦争は古くから密接に結びついているもので、やはりエクソンのビジネスも外交・政策の変調などの影響を受けることが少なくない(それでもエクソンは国家に従順というわけではない)。
ロシアに対する制裁のため北極海における採掘計画が凍結されるなどの計画変更を余儀なくされることがある。また、米国の原油輸出解禁の動向にも左右される。
エクソン・モービルとシェールガスの苦戦
シェールガス革命で出遅れたエクソンは(エクソンのようなオイルメジャーは数十年単位での長期採掘計画をどっしりと管理するためサイクルの短いシェール井プロジェクト展開でのスピード感に欠けた)米天然ガス探索生産大手XTOエナジーを410億ドルと巨額の買収を仕掛けシェールオイル・シェールガスのメジャープレイヤーとしてのノウハウを得ることができましたが、天然ガスは石油より利益率が低く、また価格の低迷が長引く懸念があります。
シェール採掘に関して、米国外では環境汚染や地盤懸念から欧州などでフラッキング(シェール採掘)の規制が始まってしまい、想定したよりもスムーズな埋蔵確認が進んでいないどころか、国内外でシェール採掘の際の水圧破砕や掘削活動で地震が急増したというデータがつきつけられ訴訟が増加傾向にあります。
その他のオイルメジャーとエネルギー企業
ロイヤル・ダッチ・シェル(RDS.B)
―英蘭Royal Dutch Shell plc
BP(BP)
―英British Petroleum
シェブロン(CVX)
―米Chevron Corporation
トタル(TOT)
―仏Total SA
コノコフィリップス(COP)
―米ConocoPhillips
―下流部門をフィリップス66として分離
オクシデンタル・ペトロリウム(OXY)
―米Occidental Petroleum Corporation
ガスプロム
―ロシア国営
ペトロチャイナ
―中国国営
ペトロブラス
―ブラジル政府が半数の株式を保有
みんなの投資分析とコメント
エクソンほどの借り入れコストの低さ、低水準な純債務からすると買収で希薄化させるよりも自社株買いに勝るものはないので、こうも原油価格が暴落してしまったことを考えるとXTOエナジーの買収は割高すぎたんでしょうか。たしかプレミアムは25%ほどついてたと思います。
エクソン・モービル 2015年4-6月期 Q2(第2四半期)決算
純利益: 1株当たり1ドル
前年同期: 2.05ドル
市場予想: 1.11ドル
売上高: 741億1000万ドル
前年同期: 33%減
市場予想: 724億8000万ドル
探鉱・生産部門利益が昨年79億ドル→今年20億ドルへと、ほぼ4分の1に減少とモロに原油安のダメージを受けています。一方、原油安を追い風に伸びる下流部門で多少はカバーされましたが、精製・化学部門の比率が原油ガス探鉱生産部門を2000年以降初めて逆転するほどのインパクトでした。
本日ゴールドマン・サックスが原油価格が20ドルまで下落するとの予測を発表しましたね。
こういったGSの極端な価格予想で思い出すのは2008年5月6日のGSのリサーチノートで原油価格が200ドルに達すると発表したことを思い出します。XOMの株価も当時の天井付近でした。
要はこういったGSの”極端な”予測は当てにならないということです。
もちろんイランの原油輸出再開や一向にシェール採掘リグカウントが大幅に減らないことなど20ドルまで下がる可能性もありますしどちらかというと皆原油価格に総悲観といったところでしょう。
ロシア制裁の有効性を保つために原油価格を低く抑えておきたいという米国の戦略もあるでしょう。
英国では走行しながら給電できる電気自動車専用レーンまで設置されたり、各国でロボットによる生産性の向上(エネルギー効率の向上)により思ったほど原油需要が想定よりも伸びないかもしれない等、原油が高騰しない理由を上げる方が簡単な状況です。
ただ、これをチャンスとばかりに着々とスポットで原油備蓄を進める中国の動きと、新しい探索プロジェクトも次々と閉じているという点も忘れてはなりません。二番底を確認した後で投資を検討するぐらいですかね。
ロシアの経済相も「もしかしたら原油価格 $20 あるかも」と今日発言してますね。