ブロードコム【AVGO】買収によって成長してきた通信用半導体大手

Broadcom

Broadcom Ltd.【NASDAQ:AVGO】
ブロードコムは通信インフラ向け半導体トップシェアでスマホ用通信半導体などのシェアも高いファブレス半導体メーカー(工場を持たない半導体メーカー)

スマートフォン、ネットワーク機器、サーバやストレージ等さまざまな機器向けに幅広い通信用半導体製品を供給。

有線インフラや無線通信事業が中核事業のブロードコム

Broadcom-Revenue

セグメント別売上高を見ての通り有線インフラ、ワイヤレス通信事業が大半を占める。

Wi-Fiやモデム、Bluetoothに強い旧ブロードコムを、RFや光エレクトロニクスに強かったアバゴ・テクノロジーが買収した(買収で新生ブロードコムとして社名変更)ことによって有線インフラ事業および無線通信事業の売上高が急拡大。

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旧ブロードコム買収によって市場シェアがトップとなったセットトップボックス用半導体、ブロードバンド接続機器、スイッチ製品の他、光ファイバー、ASIC(特定用途向け集積回路)など。

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Apple向けRFチップを中心に、Wi-Fi製品、BlueTooth製品、GPS用半導体製品、タッチスクリーンコントローラ、パワーアンプなど。

通信速度の向上や、高速通信の安定化のためのキャリア・アグリゲーションサービス(複数の周波数帯を同時に利用する高速通信技術)の拡大が追い風で、具体的には4G端末1台当たりの製品搭載数が増加。

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データ通信量増加の追い風をうける法人向けストレージ事業。

クラウド需要で伸びるデータセンターにおけるネットワーク全体をカバーするためにブロードコムの製品ラインナップで欠けていたFC SAN製品(ストレージとサーバ間を接続する高速ネットワーク機器)が必要だった。

そのためブロードコムは2016年に、FC SAN最大手の米通信機器大手ブロケード コミュニケーションズ システムズを59億ドルで買収している。

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工場自動化(省人化)や車載インフォテインメント向け、光アイソレータなど。

以下説明するクアルコムを買収することによって付随するNXPが車載半導体トップシェアなので補強できる(買収が実現できれば)。

ブロードコムがクアルコム買収を提案

2018/3/13 追記:
トランプ米大統領によるブロードコムによるクアルコム買収を禁止する大統領令で阻止されてしまった。国家安全保障を損なう恐れがあるという理由で。

実現されれば半導体史上最大の買収となる1300億ドル規模(クアルコムが渋っているため買収額は引き上げられる可能性も高い)。

クアルコムはスマートフォン用プロセッサ・通信用半導体でトップシェアで、ブロードコムが買収するとかなりの独占的企業となるため規制当局が認可するか不確実性がある。

クアルコム買収が成功した場合のブロードコムの買収チャート

Broadcom-acquition-history

ヒューレット・パッカード(NYSE:HPQ)社の半導体事業がスピンオフして1999年に設立されたアジレント・テクノロジー(NYSE:A)の半導体部門がアバゴ・テクノロジー(NASDAQ:AVGO)として2005年に分離。

その際に米ファンドのシルバーレイクとKKRからCEOとして指名されたホック・タンCEO(半導体業界の買収王として注目)が立て続けに買収を行う。

(ちなみに東芝半導体争奪戦でブロードコムはシルバーレイクと連合を組んでいた。)

タンCEO率いるアバゴ・テクノロジーは2014年に、半導体業界では当時最大の規模の買収となる66億米ドルで企業向けHDD・SSD等の半導体大手LSI社を買収。

LSIはストレージ(外部記憶装置)および家電製品向け半導体チップ製造に強かったLSI Logicが、ストレージや携帯機器やネットワーク機器向けの半導体に強いアギア・システムズ(もともとはAT&Tの半導体部門)を2006年に買収してできた企業。

さらにアバゴ・テクノロジーは2015年にはその記録を大きく上回る370億ドルの規模で、モバイル端末向けのWi-Fiチップなどを手掛ける通信機器向け半導体企業の旧ブロードコムを買収し、社名もアバゴ・テクノロジーよりも有名なブロードコムに変更(そのためティッカーシンボルがNASDAQ:AVGOのまま)。

ブロードコムの買収シナジー

アバゴ・テクノロジー(現在のブロードコム)はシンガポールに本社をおくため法人税率が低く、買収による税圧縮効果が大きい。

そのため旧ブロードコムよりも規模の小さいアバゴによる買収ではあったが株主利益に直結した。

ただ、2017年にはタンCEOはトランプ大統領との”ディール”があったのか本社をシンガポールからアメリカに移すと表明している。

ブロードコムは儲かる事業(中核事業)と不採算事業(非中核事業)を明確に線引し、IoT事業など不採算事業は他社に売却・整理しているため利益率が半導体業界でトップクラス。

クアルコムを買収した場合ファブレス半導体業界シェアはダントツの1位となる

Broadcom-qualcomm-NXP

ファブレス(工場を持たない)半導体業界シェアですでに2強のクアルコムとブロードコムだが、買収が成功した場合、圧倒的シェアNo.1となる。

ファブレス半導体業界では他にNVIDIA(エヌビディア)やAMD、台湾のMediaTek(メディアテック)とNovatek(ノバテック)が成長している。

また、クアルコムは2016年10月にオランダのNXPセミコンダクターズを470億ドルで買収すると発表。

NXPセミコンダクターズは車載半導体のトップシェア企業。

ちなみにNXPセミコンダクターズは2015年に、2004年にモトローラ社の半導体部門がスピンオフして設立された米フリースケール・セミコンダクタを118億ドルで買収している。

というわけで、NXPを買収したクアルコムを買収したブロードコムは半導体業界においてインテルとサムスンに次ぐ3位の規模となり、ファブレス半導体業界シェアでは1位となる。

製品の製造はファウンドリ(ファブレスから委託され半導体チップを生産する工場)である委託しているがTSMCの比率がかなり高い。

ブロードコムの業績と決算

AVGO

クアルコム買収が阻止されたため、代わりにCAテクノロジーズを約189億ドルで買収すると発表。

Broadcom-CA

Broadcom-CA-TAM

Broadcom-CA-Acquisition

ブロードコムの年次業績推移グラフ

<ブロードコムの株価>

決算を時系列でまとめる

Broadcom ’18 Q1決算> 2019/3/14
EPS(Non-GAAP) $5.55 予想 +$0.32
売上 $5.79B (+8.6% Y/Y) 予想 -$40M

Broadcom ’18 Q4決算> 2018/12/6
EPS $5.85 予想 +$0.27
売上 $5.44B (+12.4% Y/Y) 予想 +$40M

FY19売上予 $24.5B (予: $22.58B)

Broadcom ’18 Q3決算> 2018/9/6
EPS $4.98 予想 +$0.16
売上 $5.07B (+13.2% Y/Y) in-line

Broadcom ’18 Q2決算> 2018/6/7
EPS $4.88 予想 +$0.12
売上 $5.01B (+19.6% Y/Y) 予想 +$10M

Broadcom ’18 Q1決算> 2018/3/15
EPS $5.12 予想 +$0.08
売上 $5.33B (+28.4% Y/Y) 予想 +$10M

第2四半期ガイダンスでは、ネットワーク機器とエンタープライズストレージ製品に対するデータセンターの需要が堅調に推移する見込み。

「マージンが改善され、売上におけるフリーキャッシュフローの比率が長期目標の40%を上回る」とHock Tan CEO

Broadcom ’17 Q4決算> 2017/12/6
EPS $4.59 予想 +$0.07
売上 $4.84B (+16.6% Y/Y) 予想 +$10M

セグメント別では無線通信が33%増。

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