クラウド成長率においてAWS(Amazon Web Services)がAzure(Microsoft Azure)におされて成長率が半分になってきてオワコンだ的な意見が拡散されており、決算を追っていると違和感があったのでグラフにしてみた。
成長率だけでみればAzure>AWSだが、規模が違う。
>頼みのAWSもライバルのマイクロソフトのアジュールに比べると半分くらいの成長率になってきた。
うーん…この比較みてどう思いますか。AWSの方が先行しシェアが高く、成長率は規模が小さい方が伸び率が高くなりやすいのは当然(たとえばAmazonと比較してWalmartのEC成長率が高い時があるのも同様) pic.twitter.com/tutTEzSi4U
— アメリカ部/米国株投資アンテナ (@america_kabu) October 26, 2018
このグラフのとおり、それをいったら過去数年AWSの成長率はAzureの半分だったわけで、そもそもAzureよりはるかにAWSは規模が大きく先行し、この規模にも関わらず前年比40%以上成長していたということを評価するのが妥当なところ。
Azure(アジュール)のこの1年の前年比成長率が89%から76%になった一方でAWS(アマゾン・ウェブ・サービス)の前年比成長率が42%から46%に上昇している。
もちろん、ここまでの話であってAWSが今後も安泰かどうかなどはまったくわからない。
<最新グラフだけ追記>
クラウド2強の成長率比較
先行し規模がかなり大きいAWS(Amazonのクラウド)も成長率をしっかり維持している。
使われ方は違うものの、Microsoftのクラウド AzureはAWSを追撃中 pic.twitter.com/7OU5ry9MM2
— アメリカ部/米国株投資アンテナ (@america_kabu) January 31, 2019
マイクロソフトも非常に優秀なサティア・ナデラCEOの指揮のもとすこぶる洗練された戦略の企業に進化して、AWSから遅れながらも適切な駒運びをしているため、非常にハイレベルな戦いでウォッチしていて面白い。
なお、設備投資はかさむもののAWSの営業利益率は上昇している。
AWSとAzureとGCP(Google Cloud Platform)の売上高推移は以下のようになる。
クラウドサービス売上高
Amazon + Microsoft + GoogleSource: https://t.co/ncGctOD7wl pic.twitter.com/2lKdVHRl11
— アメリカ部/米国株投資アンテナ (@america_kabu) 2018年5月30日
Azureも伸びてきたが、王者であるAWSの成長率がこの差のある規模で40%を下回らないので差がなかなか縮まらない。
AWSも無敵ではない。たとえばECでAmazonと競合するウォルマートがMicrosoftと5年間におよぶ戦略提携でAzureを中心としたMicrosoftのクラウドソリューションをIT基盤に採用したように、Amazonの脅威をうける企業はAWSではなくAzureを選びそうなものだ(要出典)。
プライベートクラウドで先行するAWSに対し、当初Azureはオンプレミス、自社構築のクラウド基盤とAzureを併存させるハイブリッド・クラウドに強みがあった。マルチクラウド環境の勢いもあり徐々にこのあたりの境界線はぼやけていきそうだ。
Alibabaのクラウドが前年比2倍ペースで拡大しており、Google Cloudを抜く勢い。
先行するAmazonのAWSも成長を再加速させているやばさ。
Source: @WSJ がまとめた調査会社ガートナーとGSによる予想 pic.twitter.com/fC3XgFY1km
— アメリカ部/米国株投資アンテナ (@america_kabu) June 2, 2018
パブリッククラウドの市場シェアにおいてAWSとAzureだけで半分のシェアを占める。そして、2社が占有するシェアがさらに高まっている。
中国で中国当局によって米国勢を排他的に締め出した影響もありAlibaba Cloudが前年比90~100%の勢いで急成長しており、アジア圏だけでなく英国にも進出するという。
米国は先行したAmazonがクラウド(AWS)で強いけど、中国はアリババがクラウドでシェアぐんぐん拡大している。(IaaS=Infrastructure as a Service)
Source PDF: https://t.co/coYEbDXfAH pic.twitter.com/LSLX8UoDC5
— アメリカ部/米国株投資アンテナ (@america_kabu) September 21, 2018
米国の中国締め出し戦略が実行されるならばファーウェイのようにAlibabaも米国影響圏では妨害にあう可能性がある。
パブリッククラウド(Iaas, PaaS)の売上規模と成長率
巨大なAmazonのクラウド「AWS」が相変わらず。
MicrosoftのAzureやGoogleクラウド(GCP)、中国勢だとアリババとテンセントなどのクラウドも伸びている。 pic.twitter.com/NpVZgdez44
— アメリカ部/米国株投資アンテナ (@america_kabu) March 4, 2018
Goldman Sachs資料によると、規模と成長率はこんな感じで、AWSの成長率よりAzureは成長しているが、AWSはこの規模で40%以上の成長をみせているのがすさまじい。
2018年4-6月期におけるプライベートクラウドも含めるシェアは以下のとおり。
クラウドインフラで圧倒的存在感の米国勢だが中国アリババのクラウド(Aliyun)も伸びてる。
中国では米国勢は閉め出されてるから…
Source: https://t.co/dKQdShdSbr pic.twitter.com/u8rBhB1hJs
— アメリカ部/米国株投資アンテナ (@america_kabu) August 26, 2018
2018年1-3月期における同クラウドインフラストラクチャのシェアでもAWSは高止まり。AzureはシェアをとっていっているがAWSからシェアを奪っているわけでもない。
Googleのクラウド伸びてるね。もうすぐIBM抜かれるな…
Source: https://t.co/g1OXTr2jKb pic.twitter.com/ohUKYvJZtw
— アメリカ部/米国株投資アンテナ (@america_kabu) May 17, 2018
2017年10-12月期におけるクラウドインフラ マーケットシェア(IaaS, PaaS, Hosted Private Cloud)を見るとAWSは高いシェアを維持。AzureやGoogleはそれ以外からシェアを奪う。
クラウドインフラサービス マーケットシェア2017年(Q4)
AWS(Amazon)、Microsoft、Google、Alibabaのシェア拡大に対し小規模クラウドはシェアを奪われているトレンドは変わらず。
Source: https://t.co/cfw1xt8Obq pic.twitter.com/ZYuJ5odEBY
— アメリカ部/米国株投資アンテナ (@america_kabu) February 6, 2018
AWS単体でエンタープライズ・テクノロジービジネスで存在感が出てきている。SaaS買収していったら対Microsoftでエンタープライズ・テック領域においても脅威を与えることができそうなものだが。
こうやって比較してみると面白い。
米国防総省の軍事関連含むデータをクラウド移行・管理する100億ドル規模案件JEDIをAmazonのAWSが受注するかどうか注目https://t.co/QuYFJSsdv6
"AWS May Soon Become the 4th Largest Enterprise Technology Business Globally"
Source: https://t.co/04USM4RyPo pic.twitter.com/mBMjXTK4CR
— 気になる企業調べる🐘 (@kininaruzou) October 13, 2018
米国防総省の軍事関連含むデータをクラウド移行・管理する100億ドル規模の巨額政府案件「JEDI」をAmazonとMicrosoftのどちらが受注するかどうか注目。
JEDI(Joint Enterprise Defense Infrastructureクラウドプロジェクト)はAmazonのロビー活動が仕上がった出来レースと批判されていた件で、Googleは降りると予想したがやっぱりという感じだ。
GoogleはAIの軍事利用について社内から反対運動がおこるくらいなのに国防総省の案件に取りにいける地合いではなかった。ましてや中国向けの検閲検索エンジンの開発を認めている状況で中国とやりあっている中の米国政府の心象は悪いだろうし受注確率は低かっただろう。
マイクロソフト社内からも反対の声があがっており、Microsoft ナデラCEOらトップが従業員向けにメッセージを発しており、ざっくりいえば別に全員賛成しろとは言ってないし希望しないなら異動してOKだからと受注に向けて地盤固めをしている。
Amazon ジェフ・ベゾスCEOも「大手企業が米軍に背を向けるのは間違いだ」と語っている。
<おまけ資料>
相変わらずAmazonのAWSは強いがMicrosoft Azure及びGoogle Cloudもキてる。https://t.co/ep93i0qyUY pic.twitter.com/IaAH97a6fb
— アメリカ部/米国株投資アンテナ (@america_kabu) July 11, 2017
2017年9月12日には、これまでIBMとMicrosoftしか認められていなかった米国国防総省のセキュリティ要件Level5をAWSが満たした。
テックBIG5のデータ・セキュリティ関連特許動向。
Microsoftがリード。AmazonとGoogleはクラウドのデータ・セキュリティ中心。
Source: https://t.co/Z2JsfBIkhX pic.twitter.com/mNcU4pNE9D
— 気になる企業調べる🐘 (@kininaruzou) October 6, 2018
データ・セキュリティ特許で先行していたのはMicrosoftだがAmazonやGoogleもクラウド・データ・セキュリティ領域で特許取得が活発。
Googleクラウド(GCP)も比較したいところだがデータが足りなすぎてなんとも…
GoogleクラウドのCOOがたった7ヶ月で辞めた…https://t.co/867p7uL6ko
相変わらずGoogleはトップ人材の定着に課題がありそうだな。従業員のエンゲージメントは高いのに…— 気になる企業調べる🐘 (@kininaruzou) July 3, 2018
Googleクラウドはかなりの設備投資を行っているが、どの程度クラウド事業が伸びているのか分かりづらい。自信があればどんどんデータを開示してくるだろう。
JP Morgan調査: CIOにきいたIT投資動向でレガシー企業(IBMやオラクル)のシェアを奪うクラウド勢という構図。注目はレガシーでもSAPとオラクルで差がついてる点。 pic.twitter.com/RHinOpcAEm
— 気になる企業調べる🐘 (@kininaruzou) June 30, 2018
CIOにヒアリングしたIT投資動向(JPモルガン調査)によるとMicrosoftは最もホット。
ということで、AWS vs. Azureの成長率比較とクラウド動向のまとめの定点観測でした。また次の四半期でデータ更新する予定。
みんなの投資分析とコメント
個人としてはGoogleクラウドは15GBまでは無料で使えるので、画像・動画・様々な個人的に重要なデータをアップロードしている。
ビジネス分野でのGoogleクラウドのシェアがAzureよりも低いのはなぜだろう?
Googleが広告業という枠から脱せていないということの影響があるのだろうか?
Googleは後発だしこんなものでしょう。また、Googleはすぐサービスをやめちゃうイメージが強いので
シェア取れないので撤退しますみたいな流れを警戒して様子見されてるってのもあるんじゃないでしょうかね。
あえてAWSとAzureではなくGCPをチョイスするのは…スタートアップなら分かるけど。
あとエンタープライズ向けに最適化できる大人のMicrosoftに対して取引先としてGoogleは”俺の正しさ”とかこうあるべきものを押し付けてくる感じがします。
(それはそれで素晴らしいし尊敬します)
AzureならWindows無料とかやって欲しい。