Atlassian Corporation Plc【NASDAQ:TEAM】
アトラシアンは2002年にオーストラリアで創業されたコラボレーションツールを開発するソフトウェア企業。
チームによるプロジェクト管理やリアルタイムコミュニケーションなどを支援する、協働作業を効率化するためのコラボレーションソフトウェアを提供。
アトラシアンのサービスを利用している企業にはテスラやスペースX、スポティファイ、エアビーアンドビー、VISA、ブラックロック、シティーグループ、BMW、そしてNASAなど、世界で10万社以上がアトラシアンのツールを利用しており、顧客定着率は98%と高い。
営業社員がいないアトラシアンはサービスが口コミで人気化した
アトラシアンの特徴は「営業社員がいない」という点。
つまり製品はすべてインターネット上で販売を完結している。
もともとオーストラリアのシドニーから米国など海外で営業をかけるのがコストがかかると判断し、創業当時からオンラインでサービスを購入できるようにしたところまたたく間に人気化した経緯があり、それ以来、他社よりもマーケティング・営業コストのかからない順調な経営が続いている。
その最初の人気化したサービスは「JIRA」というバグトラッキングシステム、課題管理、プロジェクト管理ツールで、ウォーターフォール型からアジャイル型へ開発環境が移行する流れで、ソフトウェア開発におけるJIRAの浸透度は高い。
JIRAはプロジェクト管理だけではなく、オープンに他のOSSやクラウドサービスとも連携でき、計画、追跡、リリース、レポートなどソフトウェアの開発プロジェクトをワンストップでトラッキングできる効率面で人気が高い。
JIRAはゴジラから名前をとっているくらいで、アトラシアンにとってもまさにゴジラ級に存在感のある中核のサービスとなっており、ソフトウェアの効率的なチーム開発のために様々なツールと組み合わせる連携機能を強化している。
例えばアトラシアンが提供している企業向けWikiのような「Confluence」や、社内チャットツール「Hipchat」(Slackの方が人気が高いが)などをJIRAと組み合わせることができる。
また、JIRAすらもアトラシアンの新しい企業向けメッセージングツール「Stride」に統合されるなど、方向性としてはチームがコミュニケーションを行うあらゆる方法を1箇所で、という流れ。
今後はタスク管理ツールが統合コミュニケーションツールと一体化する
ビデオ会議ツールのスカイプがメッセージング機能を実装したり、逆にメッセージングアプリがビデオ会議機能を実装したりしているが、アトラシアンはコラボレーションツールの今後はあらゆる機能が統合されていくと見ている。
そこで、アトラシアンの新しい企業向けメッセージングツール「Stride」ではテキスト・音声・ビデオなどチームがコミュニケーションをとる全ての方法を一箇所にまとめた。
社内チャットツールでSlackに人気で負けていたHipchat(アトラシアンが2012年に買収)よりも機能を大幅に向上させたStrideに徐々にHipchatも移行させていく方針。
ライバルのSlackだけではなくWeb会議ツールなどとも競合していく製品となった。
また、アトラシアンと同じ経営スタイルで口コミで爆発的に成長中の2017年1月にプロジェクト・タスク管理ツールの「Trello」を4億2500万ドルで買収している。
Trelloは全世界で2500万人の登録ユーザーを抱え、カンバン方式のオンライン視覚化機能でシンプルだが競争力が高い。
予測可能性の高い経営
営業は一切おらず、口コミやパートナー戦略で業績を伸ばしてきた。
営業がいない分、競争力のある価格で提供し、全ての製品は無料で試すことができ、製品情報も価格も全てサイトで明示されているため、値引き交渉前提の実態価格に不透明感のある従来の営業スタイルの他社との違いがはっきりしており、B2Bの製品をAmazonで購入する感覚に近いB2Cのような販売スタイルで透明性をアピールしている。
アトラシアンの顧客獲得効率の良さがはっきり分かる。 pic.twitter.com/4abeV8FHjZ
— 気になる企業調べる🐘 (@kininaruzou) December 22, 2017
それゆえ顧客獲得効率も高い。
今後は口コミだけに頼らずマスマーケティングも伸ばしていく方針。
また、価格だけではなく、製品に関してもバグや機能要望(ちなみに人事管理クラウドのワークデイも同じく投票制の機能要望スタイル)もオープンにしており、顧客が進捗・現状把握するのが容易で、そういった見通しの良さも顧客定着率にも反映されているかもしれない。
Atlassian Stackというアトラシアンのデベロッパーツールをフルセットで使える年会費制度もはじめており、さらにキャッシュフローの流れが良い経営が実現できそうだ。
R&Dの比較 pic.twitter.com/bHKYZAOOkd
— 気になる企業調べる🐘 (@kininaruzou) December 22, 2017
一方、R&Dには積極的な投入が目立つメリハリのある経営スタイル。
アトラシアンの業績と決算
前年比売上成長が鈍化していない。
ビジネスコミュニケーションおよびコラボレーションソフトウェア市場は、2016年の150億ドルから2020年には280億ドル以上へ成長するだろうと451 Researchは予想している。
アトラシアンの業績推移グラフ
<アトラシアンの株価>
アトラシアンの共同創業者、マイク・キャノンブルックスとスコット・ファーカーは共にフォーブスが選ぶ「グローバル・ゲームチェンジャーズ」に選出されるなど話題に。この2人の持ち株比率は約60%となっている。
アトラシアンの決算は毎回以下の記事でまとめています。