- AmazonのWFM買収の最大の恩恵はデータ
- これまで以上に価格圧力を警戒する必要がある
- 噂されていた薬局への参入も現実味を増してくる
- WFMは洗練されたフォーマットが優秀で、Amazonが学べることは極めて多い
- Amazonサイト上で売られていた”AmazonのPBも実店舗で販売される”という地殻変動
- Prime Nowとスーパーは相性が良い
- AmazonFreshの配送拠点としてもWFMの立地と客層は最適
AmazonがWhole foods Market(WFM)を買収した衝撃
米国最大のスーパークローガーは前日決算でやらかして18%暴落した後にも関わらず、さらにAmazonのWFM買収報道で16%の暴落など小売全体が大幅下落と、とてつもない衝撃が市場を駆け巡りました。
Whole foods Marketは主にアメリカを中心に464店舗展開している高品質スーパーです。
Amazonのフルフィルメントセンターとホールフーズ店舗網を重ねてみると興味深い。https://t.co/DIvNXGGPkt pic.twitter.com/uikwa3rQ3v
— アメリカ部/米国株投資アンテナ (@america_kabu) June 19, 2017
これまで以上にスーパーは価格圧力を警戒する必要がある
ただでさえアメリカのスーパーマーケット業界は競争過多とダラーストア(1ドルショップ)やALDIなどの低コストビジネスモデル格安スーパーの増加で値引き競争が激しくなっていた環境でした。
そんな中、つぶすまで値下げできる強力なキャッシュフローをもったAmazonがWFM買収によってスーパーに参入する意味は大きい。
これまでもAmazonは価格破壊によって競合が財務的に苦しくなったところを買収するなどのやり方でライバルをつぶしてきた実績があります。
もちろん、効率的な物流ノウハウとITのトップランナーとして相乗効果をもたらすでしょう。
今度は別の視点で考えてみる。
Amazonがその書店では「低価格で勝つ」とは真逆の体験重視の店舗を志向しているように、値段は高いが高付加価値のWFMを買収したということは、値下げよりも体験・利便性・価値重視の戦略を志向している可能性も高いので価格戦争懸念で下げた食品株は杞憂かも
— アメリカ部/米国株投資アンテナ (@america_kabu) June 17, 2017
噂されていた薬局への参入も現実味を増してくる
Amazonが薬局に参入するという噂が流れていましたが、実際に400店舗以上のスーパーに本格参戦したことで、私は薬局も本気で攻めてくると確信し、薬局株(CVSとWBA)を処分しました。
CVSもWBA(ウォルグリーン)もオンライン販売力がまともにないので、Amazonが参入した場合リアルとオンラインのシームレスショッピングが可能になることからかなり圧力が加わるでしょう。
もちろんCVSは薬局以外もやっていますが、他社であるターゲット(TGT)内の薬局を買収してしまったことから戦略の組み立て直しが複雑化することを懸念しました。
WBAはどちらかというと美容品の販売に力をいれておりNo7という売れている独自ブランドを保有しています。
ですが、Amazonはコスメ販売も力をいれており、その意味でも薬局参入やらメイクのPBだの有り得るという判断。
ただし、CVSの店舗数は1万店舗弱です。Amazonが参入したところでキャッチアップするのにどれだけ時間がかかるでしょうか?・・・と考えると杞憂のようにも思えます。
世界最大の薬局ウォルグリーンCEO「Amazonが薬局に進出するという噂は正直いってありえない。なぜならAmazonはこのカテゴリ以外に機会があるというのに、規制だらけの薬局事業に参入するには相応のコストが必要だ。もし参入するというのならパートナーとして組む選択肢も否定しないね」
— アメリカ部/米国株投資アンテナ (@america_kabu) June 30, 2017
WFMは洗練されたフォーマットが優秀で、Amazonが学べることは極めて多い
一時期のオーガニックブームが去った、というよりも他社が真似たことで需要が吸収されてしまいホールフーズ自体は苦戦していましたが、小売業界の人にとってはホールフーズマーケットは勉強になる仕掛けの宝庫です。
スーパーや実店舗型の小売に本格的に参入したいAmazonにとってはとてもいい買収です。
WFMで得た知見を元に、WFM以外のフォーマットでも試してくるでしょう。
Amazonサイト上で売られていた”AmazonのPBも実店舗で販売される”という地殻変動
AmazonはHappy Bellyなどプライベートブランドを増やしています。
これが実店舗でも販売される衝撃は大きいです。
ブランドにとって顧客とのリアルな接点ほど貴重なものはありません。
米国最大のスーパークローガーでは売上のPB比率は26%、ドイツ発格安スーパーALDIでは95%です。
店舗でAmazon自体がブランド(というか信頼)を勝ち取っていった場合、相乗効果でネット上でのPBにも好影響でしょう。
特に食品で中途半端なブランドはPB圧力に弱く、パワーブランド以外は対Amazonで厳しい戦いとなるでしょう。
1 消費者が店舗でどのように購入するかは、オンラインとは大きく異なる
2 AmazonのWFM買収の最大の恩恵はデータ
3 それに基づきAmazonはHITするPBを生み出しナショナルブランドを圧迫するhttps://t.co/lgxGhUvSoU— アメリカ部/米国株投資アンテナ (@america_kabu) June 20, 2017
Prime Nowとスーパーは相性が良い
もともとAmazonは他社スーパーと提携して、スーパーの商品を2時間程度で届けることでPrime Nowのサービスを拡充していきました。
コストコのように年会費(月額もあるが)モデルのPrimeメンバーを増やしていくためにはPrimeの付加価値を強化していく必要があるからです。
Amazon自体がスーパーを運営する場合、Prime Nowによって事実上のネットスーパー化するということです。
Prime Now自体で利益は出なくてもPrime会員にはいらないともったいないという状況にさせるには強い武器となるでしょう。
Amazon Prime強化で、ぬけられなくすることでAmazonで買わず他社で買うようなスイッチングをできるだけ抑止したいのです。
AmazonFreshの配送拠点としてもWFMの立地と客層は最適
そもそもAmazonは生鮮食品をカバーしきれていないのが弱点でした。
そのためAmazonFreshなどで生鮮食品への取り組みをはじめていたのですがこれがなかなか苦戦していました。
WFM買収によってAmazonFresh(PickUp)の配送拠点も確保できるし、まさにAtoZなAmazonの完成度が上がります。
なによりWFMの客層は比較的高所得なのでAmazonFreshなどのコストはかかるが便利なサービスに喜んでお金を出してくれることでしょう。
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以上、ザッと簡易で思いつくことをつらつらと書いたが、Amazonはスーパー業界がもっていない武器(ネット販売力、Alexaなどの自宅での顧客接点)を多数保有しています。
Amazon Dashボタンも、いつも買うスーパーのアイテムをプリセットしておいて押すだけでいつも注文している定番の商品が届くなんてことも可能でしょう。
面白い仕掛けが期待でき、またそれによってメディアで報道され、広告しなくても注目されるのですから実店舗の意味は何重にもありますね。
データに基づく考察が魅力のわなみん氏のホールフーズ買収分析記事もオススメ
みんなの投資分析とコメント
Amazonがスーパー2000店舗出店計画があるってリークがあったのは本当だったかもしれないですね。
ちなみにホールフーズは1000店舗出店計画があったんですが業績不調で頓挫していました。