要旨:
- AmazonマーケットプレイスはAmazon以外の企業も出品できるシステムでAmazonの売上の半分を稼ぎ出す
- 米国オンライン売上高の43%を占める”優良立地”のAmazonに出品しない選択肢はない
- それでもAmazon依存に恐怖する企業が求める収益源多様化のニーズをWalmartが満たし始めている<続>
- だが先行者であるAmazonはしっかりと参入障壁を構築している
- スイッチングコストがそれほどないマーケットプレイスにおいてAmazonがもっている強みとは
マーケットプレイスがAmazonの大きな事業の柱・ドル箱となっている
Amazonの売上の半分はAmazon以外の企業が出品する商品からきている。
Source: Marketplace pluse
追記: 2018年現在さらに比率がマーケットプレイス寄りになって53%
Amazonは2000年11月にMarketPlaceを開始した。
Amazonの商品ページに、Amazon以外の企業も出品可能にしたのだ。
マーケットプレイスとはAmazonやWalmart.comのようなサイトの商品ページに複数の企業がそれぞれの商品を販売できる場所のことで、楽天のようなショッピングモールとは違う。
ざっくり言ってしまえば、
マーケットプレイス=出品
- (Amazonの場合)Amazon自体も直接販売
- マーケットプレイスとしてAmazon以外の企業の売上も半分程度ありその利益の一部がAmazonへ
- 別々の企業による出品もまとめて決済
- マーケットプレイスでもその企業がオプションでAmazon倉庫に保管してある商品なら発送はAmazonが行うため早い配送になる
ショッピングモール=出店
- 基本的に決済・発送は店ごとの店の集合体
- そのため配送料が店ごとにかかる
- 楽天などの場合は店ごとにバラバラで統一性がないインターフェースでAmazonのように統一的ではない
- 出店及び売上に対し手数料
米国オンライン売上高の43%を占めるAmazonに出品しない選択肢はない
前回記事にしたように米国で3割の消費者がオンラインで商品を買おうと思った時にファーストチョイスでAmazonを選ぶ。
Source: Marketplace pluse
その上、このように米国オンライン売上高のうち43%のシェアをAmazonがとっている状況で、そんなネット上の優良立地に対して出品しないという選択肢はまず取りづらく、そうやってさらにマーケットプレイスで出品が増え、A to Zでなんでも揃う場所としてAmazon本体とマーケットプレイスの相乗効果で地盤を固めている。
Source: Slice Intelligence
全商品カテゴリをAmazon単独でカバーするには限界があり、圧倒的品揃えのためにはマーケットプレイスは不可欠で、以前のNIKEのように直接販売してくれなかった企業の商品も、近年のスポーツ用品店の大量破綻などで生じた過剰在庫を安価で購入してオンラインで再販する会社(サードパーティー)などによってAmazonにも販売されてきた。
マーケットプレイスでの出品が増えれば増えるほど直接販売を拒んでいた企業が自社ブランド価値のコントロールのためにAmazonで直接販売せざるを得ないという状況だ。(その見返りで正規ルートではないマーケットプレイスでの販売をAmazonが取り締まる)
また、Amazonはマーケットプレイス販売業者との関係強化にも積極的に動いている。たとえばAmazon上での販売実績から独自に信用格付けのできる融資などは今後も拡大する取り組みだろう。
アマゾンは過去1年で2万店のマーケットプレイス(Amazon上で第三者販売)の販売業者に10億ドル以上の融資を実施(金利6-14%)https://t.co/9SoghUtM68
自社媒体での膨大な取引データがあるから信用格付けも独自に可能。— アメリカ部/米国株投資アンテナ (@america_kabu) June 8, 2017
スイッチングコストがそれほどないマーケットプレイスにおいてAmazonがもっている強みは、FBAという販売業者の商品を他のマーケットプレイスで併売させにくい仕組みにある
業者の手元に在庫がある限り、eBayやWalmartなど他社のマーケットプレイスでの併売が可能だ。
これに対し、AmazonのWin-Winどころか三方良しの(消費者にとっても販売業者にとってもAmazonにとっても良い)解決策の1つはFBAだ。
フルフィルメント by Amazon(FBA)
Amazonが商品の保管から注文処理・出荷・配送・返品に関するカスタマーサービスまでを代行してくれるサービス
商品1点から利用ができ、初期投資・毎月の固定費は不要。
FBAの手数料は、出品者の代わりに商品を保管管理する在庫保管手数料と、販売時の出荷・梱包・配送に対して課金される配送代行手数料(出荷作業手数料+発送重量手数料)となる。
つまり、販売業者は手持ちの在庫スペースがパンパンになることを避けることができ、商品が売れた時にはAmazonが全部代行してくれるため、保管スペースコスト・人件費を抑えることができるサービスで、その商品はAmazon Prime対象になるため即日配送(日本)ができ商品が売れやすくなり回転率が上がるという手数料を相殺するメリットがある。
消費者もAmazonマケプレ詐欺のような低品質な業者よりも、安心を求めているのでAmazonが商品に直接介入するFBAの方が安心だろう(決済方法も多様となりPrime対象となることもある)
このFBAによってアマゾンは販売業者の在庫を代わりに保管する代わりに、他のマーケットプレイスでの併売をさせにくい状態となることができ、品揃えに関して容易にキャッチアップできないようにできている。商品を1点しか在庫をもっていない個人事業主や小規模業者はもちろん、ニッチでロングテールな商品ほどこのFBAによる在庫ロックがきいてくる。
これが、スイッチングコストがそれほどないマーケットプレイスにおいてAmazonがもっている強みである。
AmazonのEC売上高の半分以上がマケプレhttps://t.co/IEdWZJhQKz
そのサードパーティ企業のFBA(フルフィルメント by Amazon)の利用率がどんどん上昇
Amazonにロックインされているとも言えるし、中国企業等のFBA利用が増えて売り手のアドレスのボーダレス化も進む
Source: https://t.co/ftV3DT17qF pic.twitter.com/j05r7Xmppg
— 気になる企業調べる🐘 (@kininaruzou) September 15, 2018
また、Amazonの倉庫に商品を保管する仕組みは、中国企業など海外の業者にとっては注文を受けた後の配達時間短縮で現地業者のアドバンテージにキャッチアップできる。実際中国企業のマーケットプレイスでのプレゼンスが高まっている。
<次回> それでもAmazon依存に恐怖する販売企業が求める収益源多様化のニーズをWalmartが満たし始めている