スターバックス(SBUX)- 実は単なるコーヒーショップではなかったスタバ

スターバックス

スターバックス(Starbucks Corporation)は世界最大のコーヒーチェーン店

コーヒー豆を焙煎してただ販売していた古巣のスターバックスを買い取り、業態を大幅に転換しシアトルスタイルのコーヒーバー/コーヒーのテイクアウトをアメリカで流行らせたハワード・シュルツによる、コーヒーへのパッションから躍進が始まったスターバックスは今や世界中に2万店舗以上も展開するコーヒーチェーンだ。

スターバックス株価チャート

今やスーパー等でのパッケージ商品販売などの店外販路も開拓し、朝に偏っていた売上(80%)から昼も夜も食事が取れるレストランへとコーヒー以外のドリンク(ビールやワイン、フレッシュジュース)販売の増加やフードの強化も進んでいる。つまりコーヒー以外の売上がほとんどを占める、地域の生活に密着した第三の場に進化したのだ。

スマートフォン戦略で他社に先行

スターバックスはデジタル戦略の強化が飲食店業界ではかなり先行しており、モバイル決済のスクエアとの提携するなど米国のスターバックスの注文の多くがすでにモバイル・アプリケーションによる決済によるものだ。

さらにスターバックスは同社が独自に開発したモバイルアプリケーション「Mobile Order & Pay」を使用して来店前に簡単に注文と支払いを済ませることができ、これにより顧客は店舗のカウンターで並んで待つ必要がなくなり、バリスタへの伝達・聞き間違えによる注文ミスも無くなり、オペレーションスピードが改善される。

このシステムは、同社が以前から導入しているポイントプログラム「My Starbucks Rewards」と連動し、アプリでの注文決済と同時にポイントがたまり、またこのアプリにより一部都市でフード・ドリンクの宅配も可能になる。

この統合された体験をソフトウェアのライセンスについては他社からも照会を受けるほどのインパクトだ。

スターバックスのMobile Order & Payの成功に続けとばかりにチックフィレイ (Chick-fil-A) など他社も同様のサービスをはじめているため突出した競争優位性は次第に同サービスのコモディティ化により薄まるかもしれない。

伸びるコーヒー以外のドリンクの売上高

今でもコーヒーをコアにしたコーヒーチェーンであるスターバックスだが、実はすでに飲料部門でも売り上げの大半はコーヒー以外だ。

店舗でのコーヒー以外のドリンク体験の深化と、将来的な店舗ジャンルの多角化の両方を見据えてフレッシュジュース業界、お茶専門店に進出した。

スターバックスは健康志向の顧客に訴求するために2011年にプレミアムジュースブランド「エボリューション・フレッシュ」を3000万ドルで買収した。

Evolution Freshは、よくある市販のジュースが加熱殺菌であるのに対し、高圧処理を用いて低温圧搾する高圧殺菌法を採用したジュースで、野菜・果物の栄養素をそのまま残すことができる高級ジュース(生ジュース・スムージー)の売上は米国で急成長している。(成長著しいSujaジュースにコカコーラ社が資本参加するなど取り込みが進んでいる)

このEvolution Freshはスターバックス店舗で提供されるのみならず、ホールフーズなどの健康に気を使う顧客の多いスーパーでも販売され、エボリューション・フレッシュの店舗(ジュース以外にヘルシーなパンやサラダ・スープ)もオープンしている。コーヒーでできたことはジュースでも可能という新しい業態の多角化である。スターバックスの店舗でエボリューション・フレッシュ店舗の展開の布石として知名度を上げることができる強みもある。

Jobs with Evolution Fresh Juicery

ジュース以外の多角化は、お茶でも進んでいる。お茶は2番目に飲まれている飲料である。

2012年にお茶専門店のティーバナ・ホールディングスを6億2000万ドルで買収し、紅茶専門店専チェーンのティーバナ(TEAVANA)はすでにスターバックスの新たな柱として伸びてきている。

2017年追記:
モール不況の影響をうけ2017年にティバーナは全店舗を閉鎖しブランドとしてスタバ内に残る。

フードの強化で朝だけでなく昼も夜も来店を促す

現在は「STARBUCKS COFFEE」だったロゴマークから「COFFEE」部分を徐々に外している。スターバックスというブランドでフードなどコーヒー以外の体験も展開したいからだ。

1億ドルで買収したフレンチベーカリーチェーンのLa Boulange(ラ・ブーランジェ)の店舗自体はリターンに見合わないと判断され全店閉鎖されたが、狙いはそのベーカリーであり、全米スタバ店舗でラ・ブーランジュのパンとサンドイッチの取り扱いを始めた。これによりスターバックスの「それなりでしかない」と評判だったフードのクオリティを改善し、ラ・ブランジェのサンドイッチの販売により昼食での売上にも貢献している。

また、スターバックスは夕方以降に食事とアルコール飲料を提供する店舗を大幅に増やしている。朝のカテゴリに強かったスターバックスがサンドイッチで昼をカバーし、夜はアルコールを提供するなど幅を拡げている。

上述したエボリューション・ハーベスト製のスナックバー(軽食用の棒状の菓子)やフリーズドライスナックも展開する。

ブランド力はスターバックスらしい文化から

スターバックスは広告にほとんど頼らないにも関わらず売上を増やし続けてきた。

その理由は、カスタマー・ファーストとして店舗での新商品のテイスティングや、居心地の良い空間作りなど顧客の店舗での体験の質を上げたことで、リピーターが定着しているからで、スターバックスはFacebookやTwitterなどのフォロワー数も突出しており、顧客との良好なリレーションシップの構築に成功している。

スターバックスを知るには事実上の創業者ハワード・シュルツの経営の紆余曲折を綴った「スターバックス成功物語」「スターバックス再生物語」を読むことが一番だ。ビジネス書としても名著であり、スターバックスの文化を理解することができる。

ハワード・シュルツは従業員をパートナーと呼び、パートタイマーであっても福利厚生を厚くするなど、店舗(パートナー)がスターバックスの顔であり顧客との接点であることを重要視し、スターバックスらしさを浸透させた。

リーダーとしての才能と情熱が稀代のものであるハワード・シュルツがスターバックスに徹底して根付かせたいことはスターバックスらしい文化であり、それは非常に時間がかかり困難なもので、実際に彼がCEOを退いた時に停滞(金融危機のタイミングでもあったが)してしまった面もあるが、これほどまでに広告に頼らずファンを獲得してきたことはその文化が定着しつつあることを示しており、それが強いブランド力という数字には表れない資産となっている。

また、その強力なブランドを背景に、スターバックスのギフトカードは人気を集めており、新しい層の開拓にも成功している。

スタバのコアファンを囲い込むロイヤルティ・リワード・プログラム

一部の国でMy Starbucks Rewardsというリワードプログラム(日本でいうところのリピーター用のポイントプログラム)が導入されている。

注文の度にスターを獲得し、そのスターに応じてドリンクやフードと交換できる。

スターバックスの顧客はテクノロジーに明るい層であることから、音楽配信大手のスポティファイや配車サービスのリフト、ニューヨーク・タイムズなどが自社の会員を増やすために「スター」を購入し自社の会員に特典として配るなどの提携を行っている。

スターバックスカードを購入するたびに、北米で10人に生涯ドリンクが提供されるチャンスが付いてくることから話題性としてもクリスマスギフトに人気である。その他のアタリがついているため、日本の年賀状の当選のような効果もあるのだろう。

ギフトカードも社内のデザインチームが100種類も作るなど、ギフトとして見た目を選ぶ楽しみもある。

スターバックスジャパンを買収

スターバックスの北米以外で初の店舗が日本出店だったが、日本企業であるサザビーリーグへスタバのライセンス提供の下、順調に日本で定着し、ついに本社から買収されることになった。

サザビーリーグが株の売却を打診してきたということなのでサザビーはシェイクシャックの展開に戦力を集中したいのだろう。

完全子会社化により、米スターバックスはティーバナやエボリューション・フレッシュなどの日本での展開も拡大できる。

テストし続けるベンチャー精神

前述のモバイル注文・決済アプリの成功にあるように、スターバックスは巨大企業でありながらチャレンジスピリットに富んでいる。現状維持ではなく、失敗も含めて数多くの試みがなされている。

  • 人口密集地でのホットコーヒーのデリバリーサービス(同ビル内あるいは宅配代行サービスとの提携)
  • ドライブスルー窓口併設店舗(米国内店舗のほぼ半数がドライブスルー)
  • コーヒー豆配達サービス(年間契約)
  • スーパーマーケット向け商品の種類も増やしている。特定産地のコーヒーもスーパーで販売、ブランドを考え高級路線で高めの値段設定のようだ。
  • メニューを限定したスピード重視の小型店
  • サードウェーブへの対抗として、希少なアラビカ種のコーヒー「スターバックス・リザーブ」の専門店を展開
  • ヘルシーな炭酸飲料フィジオ(Fizzio)
  • コスタリカにコーヒー農場を購入して新種コーヒーの開発、栽培方法のテスト

スターバックスのリスク

スターバックスは独立した立地の店舗以外に、ショッピングモールなどにも多く出店しているが、ネットショッピングへのシフトが続いたことによりこのような施設への客足が遠のいた場合に巻き添えで影響を受ける。
―この危機感がモバイル注文決済アプリ開発につながる

255種にも増えたメニューの肥大化と秘密のメニューの存在で、バリスタのカウンター内作業が複雑化して提供に時間がかかる可能性もある。
―対策としてモバイル注文による行列の解消がなされた

ブルーボトルコーヒーなどの職人気質のコーヒーショップであるサードウェーブ(第3の波)の影響。
―スターバックスのスペシャルティコーヒー専門店などで対抗中

コーヒー生豆の高騰やコーヒーの葉さび病の影響。
―農場を購入し研究中。

数多くのリスクはあるが、後手ではなく先手を売って対応していると評価されている。

STARBUCKSの業績推移グラフ

グラフの異常値は米食品大手クラフト・フーズ・グループへの賠償金支払いによるもの。食料品店でのスタバブランドのコーヒー販売をクラフトに委託していたがクラフトのやり方に満足がいかなかったスターバックスが契約を解除したことに対する法的措置の結果。

競合のコーヒーショップ・飲食チェーン

スターバックスはバーガーキングのいないマクドナルドと言われるほどコーヒーカテゴリで圧倒的最大チェーン店である。

コスタ・コーヒー
―Costa Coffee
―英国最大級のカフェチェーン
―英国ウィットブレッド傘下
コーヒービーン&ティーリーフ
―The Coffee Bean & Tea Leaf
―米国最古のスペシャルティコーヒーチェーンで世界的に展開
スタンプタウン・コーヒー・ロースターズ
―Stumptown Coffee Roasters
―サードウェーブコーヒーの先駆者
インテリジェンシアコーヒー
―Intelligentsia Coffee
―ダイレクト・トレードの自家焙煎で一杯ずつ淹れるスタイル
ブルー・ボトル・コーヒー
―Blue Bottle Coffee
―日本にも上陸した1杯ずつ入れるスタイルのカフェ
グロリアジーンズコーヒー
―Gloria Jean’s COFFEES
―アジアを中心に展開
マクドナルド
―McDonald’s Corporation
―McCafeでコーヒーに本格参戦し
ダンキンドーナツ
―Dunkin’ Donuts
―スタバに味が勝ったと過激な敵対的比較広告を出す
パネラブレッド(PNRA)
―Panera Bread Co
―ベーカリー界のスタバと言われ急成長。
―スタバもベーカリー類を買収で強化したがどうなるか。

海外でのライセンス契約

テイスト・ホールディングス
―南アフリカでのスタバの25年ライセンス
―テイストはドミノピザとも南アでの契約
タタ・グローバル・ベベレッジズ
―インド
―スタバと合弁会社タタ・スターバックス

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みんなの投資分析とコメント

  1. 匿名投資家 より:

    中国の業績悪化でヤム・ブランズのネガティブ決算でAHで売られまくってるから、同じく中国に出店しまくってるスタバもAHで売られてますね。

    ナイキの決算は中国の業績が良かったし、スタバもYUMほどひどいことにはならないと期待したいが…

  2. 匿名投資家 より:

    ついにスタバ株が$60と新高値とって陽線引けですね。

    コーヒー以外の新ジャンルの開拓と
    モバイルやリワード戦略のスマートさ・・・
    調整したら買いたいと思っていたら高値圏に・・・

    中国の業績はどんなもんなんでしょ

  3. 匿名投資家 より:

    中国のスターバックスの月餅騒動で新値の勢いも沈下ですね。

    すぐに忘れられるようなたいしたことじゃないと思うんですが、マクドナルドしかりサプライヤーの品質管理も課題です。

  4. 匿名投資家 より:

    昨晩、商品先物でコーヒー豆相場が暴落(生育良好との観測)したのでスタバには追い風。

    ネスレとコーヒー豆の取り合いが続いてますね。

  5. 匿名投資家 より:

    スターバックスの地味な優位性は「温かい出来立てのフード」を提供しなくてすんでいることだと思う。

    あくまでメインはコーヒーであって、コーヒーの香りが店舗に充満していることが理想。

    よってハンバーガーや揚げ物などジューシーすぎる商品は店舗内に強いにおいが混ざるので基本的にはNG

    で、スタバの最強戦略であるMobile Order & Payは、注文した顧客が必ずしも出来立てホヤホヤのタイミングで到着するとは限らず、そうするとハンバーガー系の出来立てから時間経過で急速に味が劣化するタイプの商品はなかなか難しい。

    スタバのフード主力であるサンドイッチなどはあたたかくなくても良いので、特に追加措置をとらずとも数分の時間間隔があいても全く問題なし。

    あと、エボリューション・フレッシュの買収は先見の明があると思う。健康のためにサプリに金使う層がこういった酵素を失わない製法のプレミアムジュースには目がないから。

    意識高い系はスムージーわざわざ自宅で作ってるけど、スタバでこれ飲めればラクだからね。本命はSuja Juice(スジャジュース)だと思うけどエボリューション・フレッシュもなかなかですよ。

  6. 匿名投資家 より:

    アメリカのティーンエージャー(13-19歳)が好むレストラン1位がスタバですよ。

    ちなみに2位はチポトレで、3位がChick-fil-A
    驚くことに4位にマクドナルドがランクインして5位にパネラ・ブレッド

    このランキングは2015年秋の米証券会社のパイパー・ジャフレイ(Piper Jaffray)の調査によるものですが、スタバが若い層にも受け入れられているというのが長期投資としても非常に好感が持てましたね。

  7. 匿名投資家 より:

    中国最大のコーヒーチェーンのスターバックスですが今のところ独走状態。

    後続はだんご状態となってますがコスタ、Sana Zoan(中国企業)、パシフィックコーヒー(中国企業)、MAANといった順でしょうか。

    スターバックスコーヒー
    1999年中国進出 店舗数1600店
    2019年までに1800店舗の新規出店計画

    Costa Coffee
    2007年中国進出 店舗数340店
    2020年には900店まで店舗数を拡大する計画

    MAAN COFFEE
    2011年中国進出 店舗数70店
    今後10年以内に3000店に拡大する計画

    Pacific Coffee Company (太平洋珈琲)
    2010年に香港上場する中国政府系コングロマリットである華潤創業(チャイナ・リソーシズ・エンタープライズ)は香港のコーヒーチェーン「パシフィック・コーヒー」の株式80%を取得し、中国でスタバを超える最大のチェーンとすると宣言し、今のところ260店舗だが出店を急いでいる。

    Sana Zoan Coffee
    店舗数は340店

    日本でもこれだけ流行って定着したように中国でもスタバはまだまだ成長できるんじゃないですかね。まだ米国の店舗数の10%程度の出店しかしていませんし。しかも買収したお茶専門店ティーバナでお茶にも理解を深め、プレミアムジュースも傘下ですから、死角はないです。

    ただPERはかなり高くなってますからいくら優良企業とはいえ気をつけたいところです。

  8. 匿名投資家 より:

    スタバの決算はYUMみたいに中国でやらかすかと思ってたら、ぜんぜんそんなことなかったね。

    世界的な既存店売上高は8%増加で特に成熟しているアメリカでも一番伸びたのも好印象。

    Mobile Order & Payもあるし、中国での出店余地もまだまだあるし、まだ成長株です。

    ティーバナの話は多いけどエボリューションフレッシュの話はカンファレンスコールで一切なかったな。けっこう期待してる市場なんだけど。

    SBUX FQ4
    EPS $0.43 予想通り
    売上高 $4.91B (前年比+17.5%) 予想を $10M 上回る

    ガイダンスはちと保守的だったかな。はやく日本でもMobile Order & Pay使いたい…

  9. 匿名投資家 より:

    米国本社も一目おくスタバ日本法人は優秀ですよ。前CEOも今のCEOも。

    日本法人の前CEOが就任したときはリーマン・ショックの頃でしたが、見事に立て直しました。

    例えばマクドナルドのようにクーポンを配ってブランドを毀損するようなことなく、同一店舗以外でもコーヒーおかわり100円(現在は全サイズ)というワンモアコーヒーの施策で値下げすることなく危機を切り抜けています。

    このワンモアコーヒーのポイントは原価負担率は実質ほとんど変わらずに顧客満足度と売上をあげることができる点です。

    というのもスタバはコーヒーは1時間以上たったら顧客に提供する品質を毀損しないために廃棄しているので、ワンモアコーヒー施策によってコーヒーの回転率を上げることは無駄なコーヒーも減るので一石二鳥なのです。

  10. 匿名投資家 より:

    スターバックスは買収によってフードの品質を高める努力を結実させつつあり、
    1日で偏った時間帯に稼ぐビジネスから、
    一日を通して全ての時間帯で居心地の良い空間で適切なフードを提供できる場所になりつつあります。

    たとえば(まだ一部店舗でのテスト)
    朝食にサンドウィッチ
    ブランチにフレンチトーストやキッシュ
    夜はワインなどアルコールを提供

    など。
    既存店売上高は減速している中でもフード売上高は10%成長し、
    全体の売上のうち20%を占めるほどになっており、フード部分での成長余地がかなりあります。
    まさにコーヒーを売る店ではなく、スタバ的なるものを売る店として強いブランド力を発揮できる有利なポジションは崩れていないと思います。

    CMをしなくてもTwitterやインスタでファンが勝手に拡散してくれるのでまだまだ安泰と思います。
    欧州での税金問題は気になりますけどね。

  11. 匿名投資家 より:

    スタバ取締役にMSのCEOのナデラが着任したね。
    ナデラはめちゃくちゃ有能なのでこれはGood
    Mobile Order & Payとかでテクノロジーが重要になってきているしね。