利便性向上と配送ドライバー不足問題を解決するドローン配送だが、規制も厚く、リスクは解決されたとは言えない。
それでも世界はドローン宅配の実現に向けて前進し続けており、日本政府も2030年までには人やモノの輸送・配送を完全に無人化したいらしい。
「2030年をめどに物流を完全に無人化する」との目標を政府の「人工知能技術戦略会議」が工程表https://t.co/QVM1M0ysjo
13年後…
もう中国では完全無人物流施設が稼働しているのだが…
日本と違って田舎のインフラが貧弱なのでドローン活用しやすいってのもあるけど— アメリカ部/米国株投資アンテナ (@america_kabu) October 22, 2017
世界の配送ドローンを淡々とピックアップしていく。
Amazonの「Amazon Prime Air」は着陸して荷物を置く方式。
Googleが複数のプロトタイプを試しているようにAmazon Prime Airも実際に運用する段階ではまた別のものになっているだろう。
「Google Project Wing」はロープを使って荷物を降ろしていく方式。
Googleが以前発表していたプロトタイプからだいぶドローンの形が変わっている…と思ったが調べてみると複数のプロトタイプを同時並行でテストしているようでこれはその1種。
Amazonのドローンと違い配達地点の上空で静止しロープで降ろしていく方式で、他社のを見てもロープタイプが主流派だろうか。ドローンが捕縛されるリスクやドローンに近づいて怪我をしないような対策で。
なぜGoogleがドローンに取り組むかというと、理由の1つとしてはGoogleは米国で「Google Express」というオンラインショッピングサービスを展開しているため。提携先はWalmartやTargetなど米国の2大実店舗小売チェーンからコストコまで。
Amazon Echo(Alexa)の脅威に対抗し、ウォルマートはGoogle Home(スマートスピーカー)と提携してGoogle Homeから注文できるようにしている。
世界3大運送会社UPSの配送車両に車載したドローン宅配便。
UPSがWorkhorseと提携してテストを成功させたという。ドローンの飛行距離をカバーする車載という発想。
Mercedes-Benz: Vans & Drones
メルセデス・ベンツ・バンをモバイル着陸プラットフォームとしドローン配送と組み合わせている。
ドイツの国際輸送物流大手DHLのDHL Parcelcopter
Cambridge ConsultantsのDelivAir
日本の楽天のドローン配送サービスSORA RAKU(そら楽)
ゴルフ場コース内でのプレイヤーの軽食・飲み物のデリバリーから始めるという。
ドミノ・ピザのドローンデリバリー(テスト)
米セブンイレブンがテストしているflirtey drone
flirteyは米国において連邦航空局(FAA)から企業初の無人航空機配達の認可を取得していた。
・・・など、ほとんどが実際にはまだ許認可問題でテスト段階か小規模な適用範囲で試行錯誤中といったところだ。
ただ、米国では宅配用の「高速ドローン専用空域」構想などもあり法整備次第といったところか。災害時には路面が走行できる状態ではなくなるなど必要性の観点からもドローン活用の幅は広がっていきそうだ。
中国で気になったのはAlibabaと張り合う中国EC2強の一角 JD.comのドローンの取り組みだろうか。
JD.comはNVIDIAと提携し5年以内に”100万台”のドローンを投入すると発表している。
中国13億人の人口の約半分が農村部に住んでおり、農村部のインフラは不十分で物流コストがかさむのでJD.comはドローンに配送ルートを100本用意し、今後も増やしていくという。
ちなみにドローン世界シェア圧倒的No.1は中国企業のDJIなので、量産も余裕だろう。
Amazonの世界進出の脅威の1つである中国のアマゾンことJDドットコムが来年に欧州と米国にも進出を検討しているというのが気になった。てっきりAmazon未進出のところを先にカバーするのかと思っていたが…https://t.co/mYfV4PL2xv
JDの完全無人物流施設の様子。ここから無人ドローンで配送する最終形態 pic.twitter.com/yhzwQMriIf— アメリカ部/米国株投資アンテナ (@america_kabu) December 6, 2017
JD.comは完全無人物流施設から直結してそのままドローンで運ぶ未来に向けて動き出している。
地上ドローン(走行型デリバリーロボット)
ドローンは空中で飛行するタイプのドローンだけではなく地上を走行するタイプのデリバリードローンもある。
たとえば米国バージニア州などでは配達ロボットが合法化されており、主に米国で急成長しているレストラン等のフードデリバリー市場と相性が良さそう。
すでに出前プラットフォームもテストしており、今後消費者の反応次第では配達用地上ドローン比率を増やしていきそうだが、規制(時速16kmなど)があるので、ギグ・エコノミー(Uberのようにインスタント雇用契約で配送する働き方)とのバランス次第か。
Starship TechnologiesのStarship Robot Delivery
米国バージニア州などでは配達ロボットが合法化されており、出前プラットフォームは今後消費者の反応次第では配達用地上ドローン比率を増やしていきそうだが、時速16kmと規制があるので、近隣用とギグ・エコノミーのボトルネックのピークタイム要員かな。 pic.twitter.com/BAow9faLtA
— アメリカ部/米国株投資アンテナ (@america_kabu) 2017年12月14日
このデリバリーロボットを手がけるスターシップテクノロジーズはSkype共同創業者が設立。
Marble Roboticsのデリバリードローン
YelpのEat24(のちにグラブハブが買収)がテストしていたデリバリードローン
ドミノ・ピザのピザ配達用の地上ドローン・コンセプト
ドローンの進化がよくわかる動画集
宅配とは直結しないがドローン全体の進化の度合いも知っておく必要がある。ドローン宅配サービスの考え方そのものを変えるアイデアが別の用途から生まれるかもしれないのだ。
株式会社プロドローンのPRODRONEは強力なアーム付き産業ドローンhttps://t.co/iWvFyEbWQU pic.twitter.com/Oc7bVzagNx
— 気になる企業調べる🐘 (@kininaruzou) May 26, 2018
日本のPRODRONE(株式会社プロドローン)は産業用ドローンなのでデリバリードローンとは違うが、この動画は必見。
2本のアームでとてつもなく力持ち。アームがついたドローンという個性。
まさに芝生のルンバのようなHusqvarna Soleaのドローン。
芝刈りという繰り返し作業はもはやドローン艦隊にやらせる時代に。 https://t.co/FU2jPmZUMF pic.twitter.com/WKtpLEkJvB
— 気になる企業調べる🐘 (@kininaruzou) May 26, 2018
複数ユニットで組織的に自動で芝刈りを行う。ドローンを単体ではなくドローン艦隊として活用するという方向性を示す。
Facebookが買収した太陽光のみで長期間飛行できる通信用ドローン。
Googleも同様の企業を買収していたが売却している。
自撮りがドローンで進化する時代pic.twitter.com/RYarKTp31O
— アメリカ部/米国株投資アンテナ (@america_kabu) February 15, 2018
Skydio R1ドローンはセルフフライングカメラとして複雑なシチュエーションでも完全自動追尾する性能。最近のドローンはこれくらい当たり前に追尾してくる高い性能。
人間の近くで飛ぶことを想定したドローン。次のAmazon Echoモデルに採用しよう。飛べる音声スマートアシスタントで。pic.twitter.com/CPEuvoGiMY
— アメリカ部/米国株投資アンテナ (@america_kabu) December 5, 2017
このFleyeは、人と接触しても問題がないよう設計されている。
人と同じ場所で働く協働ロボットの時代になってきているが(協働ロボットの例はユニバーサルロボットを買収したテラダインの記事で触れている。)ドローンがもっと身近で安全な存在になっていくとこれくらい近くでドローンが稼働する未来もあるのかもしれない。
Airbus Drone Car
コンセプトではあるが、地上走行部分と分離するという発想が面白い。
Airbusも旅客機メーカーとしてだけではなく戦時下では欧州の軍事要員でもあるので、ドローンへの研究開発費は避けられない。
同様に軍需企業の一面を持つボーイングもドローンを開発している。かなり積載量の多いドローンを考えているようだ。
ドローンというか無人ロボットという視点では各産業で様々な無人ロボットが生み出されている。たとえばマシンビジョンで目を持って対象を識別し機械学習と組み合わせ農業の生産性を上げるロボット。
世界最大の農機メーカーのDeereが除草剤を90%削減するAI×農機のブルーリバー買収してたけどhttps://t.co/DBsL3sFqnX
スイスのエコロボティクスは同じくカメラで雑草を認識し農薬使用量を95%カットできるという。https://t.co/c5SdajOrGQ
完全無人でしかもこれ太陽光で動いてるのか…!アツいな。 pic.twitter.com/It3vF7CkL7— 気になる企業調べる🐘 (@kininaruzou) May 24, 2018
ドローン活用の方向性
実際にドローンを運用する際にただ届けるだけではなくそのプロセスも重要だ。車載がいいのか、既存物流施設にドローン発射基地併設がいいのか、ドローン専用施設がいいのか、ドローン中継施設構築がいいのか、リレー方式がいいのか…と。
たとえばこういうアイデアもある。ドローン単体運用よりも拠点としてのトラックおよびトレーラーという移動型ドローン基地でドローンは最後の運び手にするという考え方。
また、様々なドローン活用の視点の中におけるドローン配送という枠組みで見ていくためには、他の取り組みも知る必要がある。
たとえばAmazonはメルセデスやUPSのような車載ドローンの逆でむしろEV(電気自動車)に給電するドローンという使い方も考えているようだ。
Amazonが"ドローンで電気自動車を充電する特許"を申請していた。
PCみたいに自動車も家電化して接続端子搭載で、給電サービスも自動化できる未来があるのかも。
いちいち充電のためにスタンド寄るの面倒だし。
Source: https://t.co/XnXKoM4Lqz pic.twitter.com/Pnp0bxPbHm
— アメリカ部/米国株投資アンテナ (@america_kabu) 2017年10月5日
もっと広い視点でドローンエコシステム形成を考えているのかもしれない。エネルギー不足のドローンを給電する補給ドローン網で密度を高めていったら…などと考えていくのも面白い。
Amazonが特許を取得したAmazonドローンタワーは人口密集地で活用されるかも?https://t.co/9e8Nu29dhk
本命はトラック搭載型だと思っていたけど確かにドローンなら高層建築物でも各階から発射できる。 pic.twitter.com/iiGhj8SuyZ— アメリカ部/米国株投資アンテナ (@america_kabu) June 26, 2017
さらにAmazonの特許をみていくと、ドローンの機動性をふまえたドローンタワーというアイデアも考えているようだ。
また、トヨタの「e-Palette Concept」も面白い。ここまで仕組み化されたらわざわざ全てが飛行する必要もないだろう。こうなるとドローンと乗り物としての完全自立型無人自動車との境界線がなくなっていくから面白い。
配送は配送、移動は移動、と分けて考えない「移動・輸送」というそもそも論から考え直したプラットフォーム的視点がCoolだ。
このeパレットのコンセプト動画でも地上走行型配送ロボットは登場している。
トヨタは車というモノを売る会社からモビリティをサービスとして提供するサブスクリプションモデル型の会社、つまりMaaS(Mobility-as-a-Service)という側面をもっていくのかもしれない。
おまけ:
中国の火を吹くドローン。この使い方の発想はなかった。pic.twitter.com/CV5UocTKW9
— アメリカ部/米国株投資アンテナ (@america_kabu) December 27, 2017
とりあえず叩き台として記事を書いたが、デリバリードローンの興味深い取り組みは今後もこの記事に追記していく予定。