Smartsheet, Inc.【NYSE:SMAR】
Smartsheet(スマートシート)は共同作業を管理・自動化するためのコラボレーション・ハブ「Smartsheet」を開発するSaaSベンダー。
Smartsheetはスプレッドシート・レイアウトで作業割り当て、プロジェクト進捗管理、スケジュール管理、ドキュメント共有などチームにとって何でもひとまとめにしてくれる作業プラットフォーム。
↑ 1分で分かるSmartsheet
シンプルで導入や利用が簡単という点が評価されているが、この解説動画の通りシンプルで直感的なインターフェイスによる納得の使いやすさ。そしてスケーラブル。
組織の意思決定を迅速化させるコラボレーション・ハブ
- タスク割り当てとグループ全体の作業の流れを視覚化し作業遂行に必要な情報や作業ステータスの提供
- APIベースで主要な業務アプリと連携しデータを包括的に収集
- ガントチャートや部門横断で組織の優先順位をビジュアル化
- ボトルネックや効果的なチームやプロセスを可視化
- クライアントやベンダーともリアルタイムで共同作業可能に
- コーディングなしで反復的作業プロセスを自動化
複数のプロジェクトにわたりタスクのタイムラインをリアルタイムに表示することで進捗ミーティングの必要性を削減するなど、効率的な共同作業が促進され生産性を向上し、組織全体の時間を削減することができるという。
Smartsheetの業績推移およびKPI
Smartsheet決算まとめ
・高い成長率を維持してきた共同作業を効率化するSaaS
・既存顧客維持率が上昇継続しておりアップセルが進む
・特に大企業顧客の利用が拡大しており顧客あたり年間契約額も淡々と上昇
・Q4’19ではFCFマージンもプラ転https://t.co/Uf8F1BhWlg— 米国株 決算マン (@KessanMan) 2019年3月19日
<Q2’19までの注目ポイント>
サブスクリプション売上高比率が94%だった2016年4月と比べると、徐々にプロフェッショナルサービス比率が上昇してサブスクリプション売上高比率がFY19Q2(2018年7月)時点で88.4%に下がっている。
これは驚異的なリテンションレート(ドルベースのネット既存顧客維持率)を見るに、ビジネスモデルが変わったというより、引き合いが強くて導入サポートが先行していると見た方が良さそうだ。
基本的なビジネスモデルとしてはサブスクリプションモデルで売上見通しが良い。
組織全体で最も重要な作業プロセスで使われているなどかなりコアに使われているSmartsheetだけあって、ACV(年間契約額)の伸びも著しく、大口顧客比率も増加。
既存顧客維持率(ネット売上ベース)が極めて高く、しかも年々上昇している。
超絶なるマイナスチャーン… つまり退会よりもアップセルが大幅に上回る。
フリーキャッシュフローのプラ転までの財務コントロールをどう着地させていくのかが見もの。
デジタルトランスフォーメーションで成長するサービスナウや、ビジネス向けチャットのslackや、競合でチームのコラボレーションを支援するアトラシアン(TrelloやJIRA)の急成長っぷりをみる限り、デジタル転換/コラボレーション領域は市場拡大ペースが予想以上なのかもしれない。
また、ファイル共有のboxやDropboxもファイル共有からコラボレーション領域に進出している。
SmartsheetのFY18の売上高は73.2%が米国からと、FY2016では米国比率が66%だったことをふまえるとボトムアップ型(セルフサービス型)アプローチで小さいカスタマーをつかまえて、徐々に米国グローバル企業の採用が増えていったのかもしれない。
2010年の大幅リニューアルから現在の軌道にのったSmartsheet
2006年創業当初のスマートシートのコラボレーション・ツールはそれほどでもなく、抜本的に機能を削減しシンプルな使いやすさを追求した2010年の大幅リニューアルから現在までの勢いある成長軌道にのった。
ということで、もう少しだけSmartsheetについて補足。
全てのデータをひとまとめにし可視化したワンストップ作業プラットフォームでチームが情報を更新すれば、それぞれの最新の作業ステータスや進捗状況が自動更新・同期され、意思決定のスピードを上げることができる。
料金設定は比較的安価で、Fortune 500企業の72%以上(2018年7月時点)がSmartsheetを導入している。
Office 365、G Suiteなどの主なエンタープライズツールや業務アプリとの連携が可能という、SaaS(Software as a Service)の鉄板エコシステム形成。
コラボレーションのためのファイル共有に簡単なプラットフォームを提供するSmartsheetは、ビジネスファイル共有のDropbox、Box、Egnyte、Google Drive(Google One)、OneDriveからデータをシームレスに扱うことが可能。
また、コラボレーションツールのSlackやQuip(Salesforceが買収)、競合するAtlassianのJIRA、Skype、ID管理のOkta、ワークフロー効率化のServiceNowやZapier、BI(データビジュアル化)のTableau SoftwareやMicrosoft PowerBI、電子署名のDocuSign
マーケティングオートメーションのMarketoなどとシステム間でシームレスに作業可能。
たとえばCRMのSalesforceと連携しプロジェクト・顧客データをSalesforceから自動収集、などとデータが自動的に同期されるコネクタが提供され、共同作業が効率化できる。
開発ロードマップの約95%が顧客からのフィードバックと顧客との対話からのインプットによって推進されているとSmartsheetは言う。
また、パートナー企業がSmartsheetプラットフォー上にソリューションを構築できるようにするプラットフォーム戦略を推進していくとのこと。
フォレスターリサーチ調査によるとSmartsheetはチームコラボレーションツールでリーディングカンパニー。Asana(アサナ)も競合として強いようでこちらも非公開企業ながら成長している。
Smartsheetの株価
2018年5月にIPOしたばかり。
Smartsheet共同創設者であり取締役であるBrent Freiは創業したCRMベンダーのOnyx Softwareを売却した後、2006年にSmartsheetを設立した。現在はTerraClearを創業しそちらに夢中のようだ。
現在のSmartsheetのCEOであるMark Mader氏もOnyx Software(グローバル サービス部門シニア バイス プレジデント)でSmartsheet創業者とは同僚だった。
元AWSエンタープライズ アプリケーション サービスでバイス プレジデントを勤めていたGene Farrell氏はその経歴からCEOよりも高い待遇。
Smartsheetの決算を時系列でまとめる
<Smartsheet ’19 Q4決算> 2019/3/19
EPS(Non-GAAP) -$0.07 予想 +$0.06
売上 $52.15M (+58.2% Y/Y) 予想 +$2.43M
<Smartsheet ’19 Q3決算> 2018/12/4
EPS -$0.09 予想 +$0.07
売上 $46.87M (+59.5% Y/Y) 予想 +$2.75M
Q4売上ガイダンス +50% Y/Y
$49M~$50M (予: $45.67M)
ACV(年間契約額)が>5万ドルの顧客数が前年比148%と大口需要拡大で売上ベースのネット・リテンションレートもさらに上昇し132%。
<Smartsheet ’19 Q2決算> 2018/9/4
EPS -$0.08 予想 +$0.05
売上 $42.38M (+58.9% Y/Y) 予想 +$3.15M
尋常じゃなく高いドルベースのNet Retention Rateだが、これはChurn(解約)で減少した分とアップセルも含めた額によるもの。
Gross Retention Rateだとそこまで高くはない。決算カンファレンスコールではLoss rateは11%だったが10.5%に近づいている(改善している)と回答している。
エンタープライズ向けというより、個人契約ユーザーやスモールビジネス契約者も多くいるセルフサービスSaaS的なサービスでもあるので比較的高いLoss rateにはなっている。
<Q3ガイダンス>
売上 $43.5M~$44.5M (コンセンサス: $41.24M)
EPS -$0.16~-$0.15 (同: -$0.17)
<FY19ガイダンス>
売上 $167M~$169M (同: $161.21M)
EPS -$0.56~-$0.52 (同: -$0.57)
マルチプル見ると株価はすでに高く評価されているのでボラティリティの激しい空中戦には注意したい。
<Smartsheet ’19 Q1決算> 2018/6/4
EPS -$0.12 予想 +$0.06
売上 $36.32M (+63.3% Y/Y) 予想 +$3.16M
スマートシート決算
Smartsheet (NYSE:SMAR) Q1
EPS -$0.12 予想 +$0.06
売上 $36.32M (+63.3% Y/Y) 予想 +$3.16MIPO以来初決算は良好。株価はすでにガンガンあがっていたが。
Smartsheet: 共同作業を管理・自動化するコラボレーションツールhttps://t.co/LJVzgQWzEZ
KPIと決算データを最新に更新 pic.twitter.com/B5BhweJri6— 米国株 決算マン (@KessanMan) June 5, 2018
IPO以来初決算はコンセンサスを上回る着地。
2018年にビジネスオートメーション企業のConverse.AIを買収する動きはサービスナウの動きに近く、SaaSは結局いずれ領域が重複してくるのだなという…。