2U, Inc.【NASDAQ:TWOU】
2U(トゥーユー)はクラウドベースで学位プログラムとコースを提供する米国の教育SaaS企業。
主に米国の大学院と提携し学生の獲得から修了までのオンライン大学院教育のライフサイクルを包括的にバックエンドで支えるプラットフォームを提供するSaaSベンダー。
授業はネットで双方向性をもって配信されるため「全ての学生が最前列」でやりとりできる(No Back Row)。
たとえばビジネスパーソンが働きながらキャリアに役立つ知識を得るにはオンライン教育は最適だ。
米国はMOOC大国でEduTechも活発
EduTech(Education+Technology)は米国で活発で競争も激しい。
北米EduTech主要27社のカテゴリ分け(2013年)が興味深かった。ここからでかくなった企業もいくつかある。
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— 気になる企業調べる🐘 (@kininaruzou) May 5, 2018
MOOC(MOOC:Massive Open Online Course)とは世界の有名大学の授業をオンラインで提供する大規模オンライン教育プラットフォームで、ほとんどの場合MOOCといえばCoursera(コーセラ)やedXのような基本無料のコースが多い(コースを修了して資格を得たい場合は有料で、その資格の価値ブランディングがMOOCの収益性の課題となる)。
2008年創業の2Uも上記の米国EduTechカテゴリ分けではMOOCに分類されているが、実際のところはedXやCourseraのような世界的に広くカバーする方向性(ユーザーの約8割弱は米国外)とは異なり、2Uはもっと個々の米国の大学のニーズに個別にカスタマイズして対応していくサービスだ。
2Uは米国の大学院とパートナーとなって学位プログラムを提供し、米国のオンライン大学院教育市場の約5~6%程度を占めている。
2Uがアメリカのオンライン大学院教育の市場シェアをどこまでとれるかどうかはともかく、長期的には米国外の大学院、あるいは国内の大学の学部課程など含めるとTAM(Total Addressable Market)としては大きいが、レベニューシェアで深くコミットするSaaSなので当面は米国の大学院を中心に顧客を拡げてる。
2Uのパートナーとなっている大学は一番最初のパートナー大学であり最も積極的に2Uを採用しているUniversity of Southern California(USC:南カリフォルニア大学)を中心に、徐々に2Uの採用が進んでいる。
学位プログラムも徐々に複数の専門で提供できるようになってきている。
オンライン上の仮想キャンパスのオンライン教室でインタラクティブにディスカッション可能なインターネット授業配信・セッションを提供するだけではなく、例えばイェール大学と2Uの学位プログラムにおいては、大学、病院、その他の全米ネットワークを提供し、臨床研修ローテーションなどもサポートしている。
2Uの米国大学院の学位プログラムであるDGP(Domestic Graduate Program)は2Uのコアビジネスで、データ分析と機械学習で最適化などSaaSプラットフォームの利点を活かしつつ、データ主導で授業満足度をコントロールしながら大規模にスケールすることを可能にしている。
また、買収によってオンライン短期コースにも進出している。
オンライン短期コースを提供するgetsmarterの買収(あとで説明)によって、2Uのビジネスの資金回収サイクルに拡がりができている。
2Uと契約したパートナーの学位プログラムで3万2000人以上が学び、それに伴い生成される授業料収入も右肩上がり。
SaaSの定番のサブスクリプションモデルとはまた違うが、成果に応じて2Uとパートナーとで売上を分け合うレベニューシェアによる提携はsame boat(運命共同体)であり、こちらもカスタマーサクセスに構造的にフォーカスしやすい。
参考までにMOOC大手のCourseraもレベニューシェアモデルを採用しており、売上を半々で分けている。
パートナー大学の顧客維持率は極めて高く、最古のパートナーのUSCが複数の学位プログラムを拡張しているように、突然契約を失うリスクは低い。
早くとも次の契約更新は2021年まで予定されていないほど長期契約(10~15年)で、そのため2Uにとっては長期的ビジョンに基づいた経営判断がしやすい。
一番最初の顧客USC(南カリフォルニア大学)とは2030~2032年までの長期契約と深い関係を築いている。
2Uが短期コースをオンラインで提供するGetsmarterを買収
Getsmarterは南アフリカのケープタウンが本拠。
短期コースのパートナー大学は主にケープタウン大学(南アフリカ最古の大学)で、他にハーバード大学やケンブリッジ大学、マサチューセッツ工科大学など名門校。
例えばハーバードならサイバーセキュリティを専門とした短期コース、ケンブリッジならビジネスの持続可能性に関するコースなどを提供。
仕事を続けながら自分のキャリアに役立つ知識を習得したり資格をとるにあたってオンラインは最適で、世界的にトレンドが変わってきている。
MOOCや2U、そしてGetsmarterのユーザーのほとんどはすでに大学の学位をもっており、プラスアルファの位置づけで、大学にとってはMOOCなどのオンラインにとって代わられるわけではなく共存している。
基本無料のMOOCでは主に大学の認知度向上、2UやGetsmarterでは収益化前提のデジタルへの適応を徐々にテストしている段階だ。
2Uは収益化までは時間がかかる長期プログラム中心のDGPがコア事業だったが、授業料はDGPより安いが短期間で修了しサイクルが短い事業モデルのGetsmarter買収によってより多様性のあるビジネスサイクルの拡がりを得ることができた。
2Uの業績推移グラフ
売上は急成長しているが利益は出していない。
SaaSの中でもかなり長いスパンで先行投資し回収していくタイプの事業で、長期契約が中心で見込まれているキャッシュフローを前提に攻めた経営をしている。
これまでの流れを見る限り一般管理費をここまで下げられるのかは謎だが、長期目標としては上記のように提示している。
2Uの株価
2014年にIPOし、2016年から株価4倍とチキンレースなアップトレンドが続いている。(追記:そしてチキンレースは終わった)
顧客維持率は高く、既存顧客に関しては長期契約によってかなり先の売上見込みは想定しやすい。
しかし、新規顧客開拓の予測可能性は高いわけではなく、株価はかなり高い期待で評価されているので、ちょっとした見通しの修正でいつ暴落してもおかしくはない。
競合に関しては追跡して調査し、追記していきたい。
2Uの決算を時系列でまとめる
<2U ’18 Q3決算> 2018/11/6
Non-GAAP EPS -$0.01 予想 +$0.01
売上 $106.96M (+52.3% Y/Y) 予想 +$0.48M
<2U ’18 Q2決算> 2018/8/2
EPS -$0.19 予想 +$0.03
売上 $97.4M (+49.8% Y/Y) 予想 +$1.56M
2U決算<8/2>
2U (NASDAQ:TWOU) Q2
EPS -$0.19 予想 +$0.03
売上 $97.4M (+49.8% Y/Y) 予想 +$1.56Mオンライン大学院教育の学位プログラムとコースを提供する米国のEduTechhttps://t.co/8Fn7DPJmZkhttps://t.co/L2HCEspzpk pic.twitter.com/9PwipBtn1A
— 米国株 決算マン (@KessanMan) August 3, 2018
<2U ’18 Q1決算> 2018/5/3
EPS -$0.12 予想 +$0.01
売上 $92.3M (+42.4% Y/Y) 予想 +$0.86M
WeWorkと提携して2Uが提供するプログラムを利用した学習者同士のコラボレーションの拠点を提供することとなった。
2U決算 (NASDAQ:TWOU) Q1
EPS -$0.12 予想 +$0.01
売上 $92.3M (+42.4% Y/Y) 予想 +$0.86M<解説>
米国のEduTechで、大学院教育をオンラインで提供するSaaS企業。https://t.co/8Fn7DPJmZk pic.twitter.com/7hqBp6l1cK— 米国株 決算マン (@KessanMan) May 6, 2018