MuleSoft, Inc.【NYSE:MULE】
ミュールソフトは企業があらゆるアプリケーションとデータをAPIベースでクラウドもオンプレミス間でも接続・連携する統合プラットフォームを提供するiPaaSプロバイダ。
Integration Platform as a Service(サービスとしての統合プラットフォーム)
具体的にはパブリッククラウド間やパブリッククラウドとオンプレミスを連携させるためのPaaS。企業のクラウド採用の障害となっているレガシーシステム・オンプレミスアプリとクラウドサービスの統合によってコストや複雑さを軽減し、SaaSアプリケーション等を相互に接続する統合ロジックで開発スピードを短縮。
iPaaSの強さは「全てのシステムの関係を把握できるポジション」であり事業領域の拡大がしやすい。
急成長中のミュールソフトの業績を確認してみると、サブスクリプション売上比率が8割近くあり、顧客維持率も安定し予測可能性の高い売上見通し。
SaaSの拡大、そしてiPaaSとミュールソフトが台頭するまで。
導入スピードやイニシャルコスト、保守不要、場所の制約からの解放はもちろんのこと、SaaSの強さの1つは、たとえばCRMクラウドとHRクラウドと会計クラウドなど特化したソフトウェア(Horizontal SaaS)の機能を共有しあって(エコシステムの形成)、ユーザーの利便性を向上させるアプリケーション同士のAPIベースの連携のしやすさでもある。
(MuleSoftもSaaSの40%ルール↑を満たしている。)
SaaS(software as a service)
2000年代に登場したSalesforceなど。
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IaaS(Infrastructure as a service)
AWS(Amazon Web Services)など。
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PaaS(Platform as a service)
Google App Engine、Heroku、Cloud Foundry、Microsoft Azureなど開発者の生産性向上と運用負荷の低減。IaaSとの融合も。
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iPaaS(Integration Platform as a Service: サービスとしての統合のプラットフォーム)
MuleSoftのようなクラウドサービス間の接続、クラウドとオンプレミスの統合プラットフォームサービス。
クラウドとオンプレミスとのデータ連携箇所を統合しまとめることで管理コストやセキュリティリスクを軽減でき、複数のSaaSアプリケーションやクラウドサービスを統合するソリューションがSaaSの拡大と共に求められるようになってきている。
というのも、SaaSの拡大とともに2万近くあるパブリックAPIの連携は複雑化し、課題化している。ニッチなSaaSは今も増え続けている。
=Application Programming Interface
ざっくりいえば、あるソフトウェアに他のソフトウェアの機能を呼び出して外部から使えるようにするための仕組み。
そこでミュールソフトはiPaaSと呼ばれるような統合プラットフォームサービスで、あらゆるアプリケーション・サービスとの効率の良い接続やオーケストレーションを実現。
MuleSoft Anypoint Platform
Anypoint Platformはクラウドアプリケーションを相互に、そしてオンプレミスおよびレガシーアプリケーションと統合するための次世代統合プラットフォーム。
あらゆるSaaS、API、SOAの接続性を高め、オンプレミスの接続、クラウドとの接続、モバイルやデバイス(IoTも)の接続など、幅広い接続ソリューションを提供。
Anypoint PlatformのコンポーネントにはCloudHubなど、クライアント実装の中でも時間がかかる他のシステムとの統合の実装時間短縮ソリューションが備わっている。
また、ITマネージャーや技術力の高い開発者だけでなく、コーディング経験がないビジネスラインの従業員でも、テスト済みの信頼性の高いサポートされたAPIコネクタやベストプラクティスな統合テンプレートなどIT資産を使いやすくする”ITのセルフサービス“を支援する。
MuleSoftの方向性としては誰でも簡単に使えるようにする使いやすさの向上をすすめている。
MasterCardやマクドナルド、ネスレ、ユニリーバなど大企業の顧客も多く抱える。
SaaSとオンプレミスの統合、アプリケーションの統合においてもSaaS同様にスピードと安価な価格設定が求められはじめ、それがiPaaSの利用拡大につながっている。
iPaaSはエラスティック(ピーク時やその落差の激しさに柔軟に対応できる)かつスケーラブルで(拡張性が高く容量計画に心配がいらない)、サブスクリプションモデル(あるいは従量課金モデル)の採用でコスト削減につながる。
パートナー企業とのエコシステム形成では、クラウドCRMのセールスフォース(Salesforce)やクラウドERPのネットスイート(Netsuite)、人事管理クラウドのワークデイ(Workday)、サブスクリプション型ビジネスを支援するSaaSのズオラ(Zuora)、クラウド会計のインテュイット(Intuit)などのSaaSベンダーの統合をサポートしている。
iPaaSやAPIマネジメントにおける競合他社
Source: Gartner Enterprise Integration Platform as a Service (iPaaS)
調査会社ガートナーによるエンタープライズiPaaS(サービスとしてのインテグレーションプラットフォーム)のリーダー企業にはMulesoft以外に競合として、メタデータと機械学習を基盤としたiPaaSのインフォマティカ(Informatica)、DELLが2010年に買収したiPaaS企業のデル・ブーミー(DELL Boomi)など。
Source: Gartner API Management
2016年の調査だがAPI Managementでもリーダー企業に選定されている。
Apigeeは2016年にGoogleが買収。他にProgrammableWeb, RapidAPIなどライバルは多いが、API管理の市場は2017年度の成長率は30%以上の成長市場で、2022年までには3500億円に拡大すると予想されている。
MuleSoftの業績推移グラフ
サブスクリプションモデルの良いところは、継続してもらうことが重要なので変な売り方はしても無駄で、仕組み的に自然とカスタマーサクセスにフォーカスしやすい、顧客維持率やコホートなどKPIもシンプルで売上見通しもクリアでクロスセルもしやすく、ミュールソフトも同様だ。
MuleSoftはAPI主導のiPaaSというすべてのシステムの関係を把握できるポジションを活かして、すべてのシステム、データをリアルタイムに可視化し分析・異常検知するようなセキュリティとアナリティクス領域へ事業を拡張していく方針。
*aaSは成熟期に入ると、エコシステムを形成しているパートナー間で徐々に領域がかぶってくるのが興味深い。
長期目標としてグロスマージンは80~85%、営業利益率も20~25%に設定。
そのためセールス&マーケティングを2017年時点で60%程度から長期では35~40%まで落とす意向だが、比較的啓蒙が必要な事業でもあるためどの程度削れるのか注目したい。
ミュールソフトの株価
追記: Salesforceに買収されたため、直接投資することはできなくなっている。
2006年創業、2017年3月に上場。
ミュールソフトの決算を時系列でまとめる
<MuleSoft ’17 Q4決算> 2018/2/15
EPS -$0.12 in-line.
売上 $88.7M (+60.3% Y/Y) 予想 +$5.18M
<2/15>ミュールソフト決算
MuleSoft (NYSE:MULE) Q4
EPS -$0.12 in-line.
売上 $88.7M (+60.3% Y/Y) 予想 +$5.18M<解説>
昨年3月にIPOした急成長のiPaaSで、増え続けるSaaSの接続・統合を支援するAPI主導のプラットフォーム。https://t.co/23xmwpgMXa pic.twitter.com/EL7wBtBUu8— 米国株 決算マン (@KessanMan) March 13, 2018