ウェイボー【WB】Twitterを抜き、中国の動画コンテンツプラットフォームとしても成長中

Weibo

Weibo Corporation【NASDAQ:WB】
ウェイボー(新浪微博)は中国版Twitter的サービスとして2009年に設立された中国最大級のソーシャルメディアプラットフォーム。

ウェイボーはすでにTwitterのユーザー数を抜いている。

ちなみに、Weibo(微博)は正確には1つではない。

当記事で扱うウェイボーは上記ソーシャルメディアのユーザー数資料でもSina Weiboと記載されている。

微博がやられたようだな…だが、やつは四天王で最弱。

この記事で解説するウェイボーのサービス名は正式には新浪微博(Sina Weibo)と表記する。

というのも「微博」とは微=マイクロ、博は中国語でブログを意味する「博客」の短縮で、微博=マイクロブログというジャンル名なのだ。

当記事で扱うウェイボーこと新浪微博は、もともとは新浪(NASDAQ:SINA)の1サービスとして開設されたもので、その後「新浪微博」としてスピンオフしNASDAQに上場した。

2009年に新浪微博(Sina Weibo)は開設されたが、ウェイボーは今のような1強状態になる前は、他社のマイクロブログを含めて四大微博と呼ばれる競争時期があった。

中国の2大IT企業テンセントの腾讯微博を筆頭に、捜狐(NASDAQ:SOHU)の微博、網易(NASDAQ:NTES)の微博などポータルサイトの微博も参戦していた。

しかし新浪微博(Sina Weibo)の勢いが最も強く、腾讯微博は現状維持でそれ以外は淘汰され、今やWeiboと言ったら実質的に新浪微博(Sina Weibo)のことを指す。

なお、中国版Twitterとしては新浪微博(Sina Weibo)が中国で元祖というわけではなく、中国初のTwitterクローンの微博は飯否(Fanfou)という微博だった。

飯否は「飯食った?」という中国の定型あいさつをうまくもじったサービス名で、Twitterが「今なにしてる?」というコンセプトだったことを参考にしたのだろう。

しかし、飯否は新疆ウイグル自治区の大規模な争乱に関する(中国当局に都合の悪い)投稿が相次いだことで中国当局に閉鎖されてしまった。

その後、当局が統制しやすい大企業である新浪やテンセントが微博を作る流れとなり、現在に至る。

中国による圧力と、それが結果的に微博の防壁になっている点について

中国の体制の都合上か、金盾工程と呼ばれている中国政府の検閲システムで特定のキーワードの検索をできなくしたり削除したりしている。

金盾においてアクセスを遮断するグレート・ファイアウォールは万里の長城をもじったもので、TwitterやFacebookなどは中国国内ではVPNなどによるすり抜けをしなければアクセスすることができない。

そのため強敵であるTwitterとの直接対決をウェイボーは避けることができていた。

天安門事件などが検索できなかったりするように、ネットサービスは当局に不都合な状態にしたまま(政治批判など)だと国家権力でつぶされたり、圧力がかけられるリスクは抱えるが、Weiboは積極的に検閲に協力しているため閉鎖リスクは少ないだろう。

ウェイボーの成長を牽引するモバイルユーザー数の増加

月間アクティブユーザー数(MAU)は4億6200万人(2018/Q4時点)でモバイル比率は93%と高い。

デイリーアクティブユーザー数(DAU)は2億人(2018/Q4時点)。

Weiboジャンル全体の伸びも大きい。一時期はWeiboジャンルの伸びが鈍化したことで新浪微博もオワコンか?と見られていた時期もあったが、他社の微博が競争力を失って新浪微博に集約される過程の現象だった。

(以下、Sina WeiboをWeiboと省略して表記する。)

Weibo-user

また、上記資料によると、Weiboユーザーの大半が18歳~30歳の若者で、裕福な都市部の比較的学歴の高い層の比率が他のサービスより高いため、広告を出したい企業にとってもWeiboは重要な広告出稿先候補となってきている。

中国のモバイル・インターネットユーザー数はこのように急増している。

そして、Weiboの月間アクティブユーザー数は中国のネット人口の半分をカバーしている規模であるということが分かる。

OPPOやVivoなどの急成長中のスマホメーカーとの提携でWeiboアプリがプリインストールされているのも大きいだろう。

アリババが大株主である意味

もともと新浪(Sina Corp)からスピンオフされたウェイボーだが、新浪はウェイボーの株式の46%(議決権の72%)を保有する筆頭株主。

また、2013年にアリババがウェイボーに5.86億ドル投資し18%の株式を取得し、現在はウェイボーの31.5%(議決権の15.2%)の株式を保有する大株主となっている。

ウェイボーに出資したアリババとの戦略的提携でユーザーデータの共有による広告・ECの連携などで、2016年には広告・マーケティング売上高のうち10%がアリババ関連となっている。

このようにアリババは中国のインターネットにおいて広い影響圏を構築しており、ウェイボーもアリババ陣営として色分けされている。

アリババがテンセントのソーシャルメディア・コミュニケーションチャネルに対抗するためにウェイボーはアリババにとって重要なピースという位置づけとなっている。

ウェイボーにとって動画とライブストリーミングが成長ドライバー

Weiboは単なるテキスト投稿サイトではなく、動画シェアリングとライブコンテンツを成長ドライバーにして成長している。

また、ウェイボーにとって動画が重要になっており、急成長の動画アプリ開発企業Yixia Technology(一下科技)との連携も成長ドライバーになってきそうだ。

Yixiaが運営するサービスは秒拍(Miaopai)という10秒ビデオ共有サイトと、小咖秀(Xiaokaxiu)、そしてライブストリーミングアプリの一直播(Yizhibo)とどれもすさまじいDAUで成長している。

2011年設立のYixiaに途中の投資ラウンドからウェイボーは出資し、Weiboと機能面で統合させることでYixiaの成長を促進させ(一直播などのトラフィックのほとんどはWeiboから)、またこの提携によってWeiboのコンテンツプラットフォームとしての魅力を向上させてきた。

ちなみにこれはテンセントの勝ちパターンでもある。出資と共にその膨大なトラフィックを送りこみ投資リターンを肥大化させる。

中国のライブストリーミングは成長著しく、商品をライブで売るライブコマースも伸びるほど。

ライブコマース(Live Commerce)は分かりやすくいえば、従来のTVショッピングの双方向コミュニケーション型ネット版で、ネッ...

Weiboで直接見ることができる利便性のある一直播(イージーボー)は芸能人アカウントを多く集め、ライブストリーミングサービスとしては4大ライブアプリ(競合は映客、花椒、YY)にはいる競争力のあるポジションで、ライブコマースにも挑戦している。

ライブストリーミングもライブコマースもプラットフォームとして競争力を高めるためにはKOL(Key Opinion Leader: フォロワー数が極めて多く拡散力・影響力があるインフルエンサー)の確保が重要であり、実際Weiboのトラフィックの多くがKOLのコンテンツへのアクセスとなっている。

そして、すでにインフルエンサーとの幅広いエコシステムを形成したウェイボーとのシナジーは大きい。

たとえばWeiboでは通常の広告以外に、KOL網を活かした企業向けマーケティング支援サービスがあり、拡散力というウェイボーのプロモーション面での差別化が発揮されている。

Weibo-KOL
Source: 新浪日本微博株式会社

存在感でいえば網紅(ワンホン)も話題だが、網紅といえばライブストリーミングで女性がダンスを踊って仮想ギフト(現金の視覚化)をもらうようなネットアイドルのイメージも強いため、企業向けマーケティング観点からはここではインフルエンサーはKOLと表記を統一する。

要は、Weiboはやや商業色を増してKOLや芸能人にとって稼げる発信プラットフォームとなってきている。

Yixiaの動画アプリケーションを組み込むことでインタラクティブ性を増して、KOLはWeibo上で情報を発信し、動画を投稿し、ライブ配信し仮想ギフトを得ることもできるし商品を売ることもできる。

KOLを勝たせることでウェイボーも勝つというプラットフォーム戦略で、単なる140字のテキスト投稿サイトにとどまることなく、写真・動画やライブなどのコンテンツプラットフォームとしての拡張はKOL支援という観点からはフォロワー動員力をそのまま活かせるワンストップ感があって良いのではないだろうか。

Weiboアカウント必須時代

ちなみに最近ミランダ・カーもWeiboアカウントを開設したことも話題で、中国の莫大な消費力を前に中国向け広報のために海外からのアカウント開設も増えている。

特に企業が中国においてプレゼンスを高めるためにWeiboアカウントの開設は必須レベルで、すでに130万社以上の企業アカウントが開設されている。

たとえば早いうちからWeiboに進出したユニクロは1000万人以上のフォロワー数を獲得している。

(ユニクロの日本語版Twitterは58万フォロワーしかない。)

なお、社運をかけて中国で大規模出店攻勢をかけているスターバックスのWeiboフォロワー数は136万人。

広告依存が高いウェイボーだが動画広告の伸びしろがある

Weiboのユーザーは主に北京、上海、深セン、広州の中国のなかでも裕福な4大都市に集中していたが、2015年からは内陸部など幅広い地域でのプロモーションを本格化、これら地域のユーザーの増加により中国全土に広がる広告効果も期待できるようになる。

ウェイボーの売上は広告比率が高く2016年は87.07%が広告収入によるもので広告依存が高い。

広告事業以外の付加サービス(VAS)事業として微博支付(ウェイボーペイメント)などもあるが、競合であり決済2強のWeChat PayやAlipayがある中であまり期待できない。

広告依存が高いとはいえ、中国のデジタル広告市場におけるウェイボーのシェアは非常に小さいので伸びしろはあると思われる。

この広告シェアの拡大においては動画コンテンツの拡大も重要になってくる。

Weiboにおける画像や動画などの投稿が急速に増えており、ウェイボーの広告収益は主に動画広告の増加による寄与が大きい。

Weiboは中国版Twitterというよりも、もはやInstagramやYouTubeやFacebookなどの機能を統合したコンテンツプラットフォームへ舵をきっており、ユーザー投稿コンテンツだけではなく、積極的に主要テレビ局や動画サイトなどと協力し様々なコンテンツを配信している。

Weiboにおける独占配信コンテンツはもちろん、NBAやNFLなどもWeibo上で試合の動画配信を開始している。

動画プラットフォームはアリババが買収したYouku(中国版YouTube)が1強というわけではなく、乱立した状態であるため、ウェイボーの動画プラットフォーム強化戦略は手堅い。

ウェイボーの要注意の競合他社はテンセントとToutiao

見ての通り動画・ライブアプリは1強なき乱立状態。

動画やライブストリーミング単体以外の導線をもったソーシャルメディア・プラットフォームであるウェイボーは良い立場にあるだろう。

要注意の競合の1社はテンセントで、テンセントの最大の競合であるアリババがウェイボーの大株主とアリババ影響圏であることから、共存ではなく正面きって競合サービスをぶつけてくるなどの競争激化・動向に注意が必要だ。

しかし、WeChat(Weixin)の勢いがすごすぎてWeiboはオワコンかと言われていたが、WeChatは友人・知人をベースにしたメッセージングプラットフォームがコアであるのに対し、Weiboは関心によって広くつながる閉じられていないサービスで方向性が違う。

もう1社気になる競合で潜在的には最大の競合になりかねないのがニュースアグリゲーターのToutiao(今日头条/今日頭条)運営元の字節跳動科技(ByteDance:バイトダンステクノロジー)だ。

ToutiaoはDAUでいえばWeiboクラスの億人レベルの接触頻度の高い動員力をもっている。

Weiboの利用動向のうちニュース収集をあげるユーザーも多く、Toutiaoにニュース及び話題のコンテンツ配信プラットフォームにおけるシェアを奪われていくリスクがある。

AIによるユーザーにカスタマイズされたプッシュ型コンテンツ配信のToutiao対策に、Weiboも「フォローしている通常のタブ」以外に「HOTタブ」を作ってAIを駆使してユーザーの関心に合わせたフィードのプッシュ配信戦略を試みている。

Weiboの強みはその高いインタラクティブ性であり、今後の拡張性に期待だが、ByteDanceもミュージックビデオソーシャルのTik Tok(抖音)を急成長させ、上海拠点のショート動画編集アプリであるmusical.lyを買収するなど、単なるニュースアプリでとどまるつもりがない(ただし筆者が個人的に視認する範囲ではバイトダンス運営のメディアでは中国当局に圧力をかけられるリスクの高い配信を放置していることが他の大手陣営より多いようだが…)。

今後は特にToutiaoとの競争の激化を想定する必要がありそうだ。

ウェイボーの業績と決算

黒字転換を果たし、まさに成長株といった銘柄だが株価にも高い期待が反映されている。

Toutiaoなど競合の動向に注意しつつ、動画・ライブ等コンテンツプラットフォームとしての拡がりとそれに伴う1ユーザー当たり収益の増加がどれほどか注目したい。

ウェイボーの業績推移グラフ

<ウェイボーの株価 NASDAQ:WB>

<ウェイボー筆頭株主の新浪の株価 NASDAQ:SINA>

2017年12月現在では新浪の方がWeiboより時価総額がかなり小さい。

Weiboの決算を時系列でまとめる

Weibo ’18 Q4決算> 2019/3/5
EPS(Non-GAAP) $0.80 予想 +$0.05
売上 $481.88M (+27.7% Y/Y) 予想 =

MAU 4億6200万人 +17.9% Y/Y
DAU 2億人 16.3% Y/Y

Weibo ’18 Q3決算> 2018/11/28
EPS $0.75 予想 +$0.05
売上 $460.17M (+43.8% Y/Y) 予想 +$1.85M

Weibo ’18 Q2決算> 2018/8/8
EPS $0.68 予想 +$0.02
売上 $426.6M (+68.4% Y/Y) 予想 +$3.1M

Q3ガイダンス
売上 $465M~$475M (コンセンサス: $469.33M)

Weibo ’18 Q1決算> 2018/5/9
EPS $0.50 予想 +$0.03
売上 $349.88M (+75.6% Y/Y) 予想 +$7.41M

Weibo ’17 Q4決算> 2018/2/13
EPS $0.64 予想 +$0.06
売上 $377.4M (+77.4% Y/Y) 予想 +$14.76M

Weibo ’17 Q3決算> 2017/11/7
EPS $0.51 予想 +$0.06
売上 $320M (+80.9% Y/Y)
アナリスト予想よりもかなり高いMAUおよびDAUの伸びだった。