- 米国のコンドーム購買客の40%が女性(日本でも4人に1人が女性)
- 店舗での売上が下がり、オンラインでの購入が増えている
- それに伴い新規参入も増えてきており世界各地でシェアの変動が起きそうだ
- 性感染症の回避にコンドームは必須の常識
- コンドームの避妊失敗率は意外に高い(2~15%)
- 完全な避妊を求めて避妊率がより高い様々な手法が開発されつつある
- 世界最薄コンドーム(0.01ミリ)で先行する日本のオカモトと相模ゴム
- 世界のコンドームシェアはTOP3メーカーが6割を支配してきた
- その中の世界2位の豪アンセルのコンドームブランドを中国勢が買収
- 一方、コンドーム工場のマレーシアが小売と組んでプライベートブランドを量産しはじめた
- しかし世界の最先端はハイドロゲルコンドームで勢力が一気に変わる可能性
米国ではコンドームを買うのは女性が40%でオンラインシフト
ローマ帝国の戦士のロゴマークのTrojan(トロージャン)は米国コンドームシェアNo.1で世界3位のコンドームブランドだ。
しかし、実店舗でコンドームを買う顧客がどんどん減っている。
想像に難くない「コンドームを買うならネットで」というオンラインシフトである。対面よりも買いやすくなったことや意識の変化で、アメリカにおいてコンドームを買う比率は3人に1人が女性だ(Church & Dwight調べ)。
そんな女性のコンドーム購買層としての台頭にも関わらず、コンドームメーカーは長らく男性を中心にマーケティングされていたため、そのギャップに目をつけた米国の女性起業家ミカ・ホランダーが創業した地球にやさしいコンドーム「Sustain」がシェア奪取を狙っている。後述するプライベートラベルの安価なコンドームも伸びてきている。
ちなみに、日本でもコンドームを買う人の4人に1人が女性だ(コンドーム日本最大シェアのオカモト調べ)
コンドームは避妊具として意外に使われていない
インドの既婚15-49歳の女性で男性用コンドームで避妊するのはたった6%で、中国でも8.3%(日本では46%)である(国連調べ)。
確かに、日本産婦人科医会の調査によると
男性用コンドーム 避妊失敗率2-15%
女性用コンドーム 避妊失敗率5-21%
低用量経口避妊薬(ピル) 避妊失敗率0.3%-8%
と、あまり避妊具として完璧であるとは言い切れない。
男性用コンドームは正しい使用の際の失敗率は2-3%で、天然ゴムは油分で劣化するため、成分不明の安価なローションや化粧品や整髪剤のついた部位をさわった後にゴムを触る等での破損なども影響しているのだろうか。
避妊ゼリー(殺精子剤)、避妊インプラント、IUS、IUD、ペッサリー、女性用コンドーム、背中にシールを貼る避妊パッチ、精管に注入する避妊用ジェル、そしてビル・ゲイツ財団が支援している遠隔操作で16年使用可能な避妊チップ「MicroCHIPS」と、様々な代替・併用技術が開発されている。
それでも、性感染症(STD)やエイズウイルス(HIV)を防ぐ確率は98%と高く、他の避妊ソリューションが出てきたとしてもコンドームは感染症対策には需要があるはずだ。
世界のコンドームブランド シェア6割を3社が支配
1位 デュレックス(Durex)
世界の4分の1のシェアを占める。
2010年にイギリスのレキットベンキーザー(Reckitt Benckiser)が買収。
2位 ジスボン(Jissbon)
世界2位のコンドームブランドで、2017年にオーストラリアのゴム製品大手アンセル(Ansell)から中国の人福医薬集団とCITICが、アンセルのコンドーム部門を6億ドル買収。
ちなみに中国のコンドーム産業は年率12%で成長している。
3位 トロージャン(Trojan)
チャーチ・アンド・ドワイト(Church & Dwight)のアメリカNo.1シェアのコンドームブランド。
この3社のブランドが世界のコンドームブランドの60%を占める。
コンドーム”製造”の世界1位はマレーシアのカレックス
世界のコンドーム”ブランド”は英米中3社に寡占されているものの、製造はマレーシアの企業のシェアが高い。
なんとマレーシアには14社もコンドームメーカーが存在する世界のコンドーム工場なのだ。
コンドーム製造最大手のカレックス・インダストリーズ(Karex)は世界で消費される15%のコンドームを生産している。
政府機関や非政府組織(NGO)向けや、世界のコンドームブランドのOEMや、小売店のPB(プライベートブランド)などが主な顧客だ。
また、カレックスは1988年創業の米コンドームメーカーのグローバル・プロテクション・コープの株式55%を取得するなど最大手としての地盤を固めている。
さらに、ゴム手袋製造・販売で世界1位のマレーシアのトップグローブ・コーポレーションも最近コンドーム事業に参入した。
世界の医療用ゴム手袋の4枚に1枚がトップ・グローブ製であり規模面・営業力では優位性がある。
マレーシアは天然ゴムの生産量世界3位と原料コストで地の利があり、従来のゴム産業より付加価値の高い(利益率が高い)医療・コンドーム生産にシフトしている背景がある。
コンドームブランドとしてはサプライヤーの競争激化は歓迎だろう。
世界最薄コンドーム(0.01ミリ)で先行する日本のオカモトと相模ゴム
日本でコンドームといえば最大シェアのオカモトだ。
オカモトは薄さ0.03ミリの天然ゴムラテックスコンドーム(オカモト003)で業界を長らくリードしてきた。
しかし相模ゴムが最薄競争に乗り込み、0.01ミリの両社のブランドが激突している。
オカモトゼロワンもサガミオリジナル001も0.01ミリのコンドームなのだが、薄さ実現のためにポリウレタンを採用している。
素材であるポリウレタンはゴムに比べると伸縮性に欠ける(かたい)が天然ゴムアレルギーの人にはいいのかもしれない。
天然ゴムもポリウレタンももう古い?次世代ハイドロゲルコンドーム
ビル&メリンダ・ゲイツ財団が開発支援する次世代コンドーム「ハイドロゲルコンドーム」が注目されている。
ハイドロゲルを使った次世代感ある取り組みといえば、砂漠でもトマトを栽培できることで有名なメビオールのアイメック(フィルム農法)の実績を思い出す。
食糧問題も水問題もメビオール社のアイメック(フィルム農法)が将来貢献してくれそうですね。https://t.co/Ao2d0HCniW
砂漠でも農業できるうえ、この農法でつくったトマトは金賞受賞しています。 https://t.co/kpa0lFgqKf— アメリカ部/米国株投資アンテナ (@america_kabu) January 23, 2017
ハイドロゲルはすでに医療現場やコンタクトレンズでも使われており、ほとんど水で構成された柔らかな物質という特性からコンドームの素材としては問題なく、オーストラリアのウーロンゴン大学の研究チームが開発したタフハイドロゲル(tough hydrogel)は期待できそうだ。
さらにテキサスA&Mヘルスサイエンスセンターの科学者チームが開発したハイドロゲルコンドームには植物由来の酸化防止剤が含まれており、万が一コンドームが破れてしまった場合でもエイズを発症させるウィルスを殺すことが出来るメリットを強調している。
というわけで、日本勢が薄さで競争している間に、長い目でみるとハイドロゲルコンドームが主流になるリスクもあり(問題は値段だ)、また世界シェアも変わってくるかもしれない。