WD-40 Company(NASDAQ:WDFC)は日本でいうKURE 5-56(クレ 556)のような防錆潤滑剤「WD-40」を世界176ヶ国で販売するほぼ潤滑剤一本打法のメーカー。
同社の名前にもなっている防錆潤滑剤の主力製品「WD-40」は約5ミクロンの薄膜で対象の表面を覆うことで湿気や酸素から金属を保護しサビや腐食から防ぐ製品で、米国の家庭の8割にWD-40が常備されている。
コカ・コーラの秘蔵レシピと同じく「特許を取らない(で守る)という選択肢をあえてとった」というのがWD-40の面白いポイントの1つ。
本記事は note 米国の家庭の8割で常備されるNASAクオリティの防錆潤滑剤メーカー「WD-40」1. 特許をあえてとらず秘蔵レシピ化、2.中核事業はコツコツ成長を持続 の無料部分として公開しています。詳しい業績が知りたい方は上記noteを参照ください。
WD-40決算まとめ
・米国の家庭の8割で常備される防錆潤滑剤メーカー
・2025年までに売上高$700Mを目標
・WD-40ブランド中心に成長
・コスト増も、55%ルールのグロスマージンを値上げ(昨年6月)で達成https://t.co/Gpu9DW4cnT— 米国株 決算マン (@KessanMan) 2019年4月10日
読者にわかりやすいように、まずはWD-40類似商品として「クレ556」ならご存知かと思われるのでそこから解説していこう。
WD-40は1953年設立、クレ556の開発元の米国CRC Industriesは当初は腐食(サビ等)防止製品を主力として1958年創業。日本では呉工業が1962年からCRCの浸透潤滑剤CRC5-56を導入している。
というわけでWD-40の方が元祖というわけですね。
それどころか、WD-40はもともと宇宙ロケットに求められる基準をクリアできる超浸透性防錆潤滑剤を研究していたノーム・ラーソン氏(創業者)が40回目の試作でようやく完成させた防錆・除錆剤。
それゆえもともとの社名はロケットケミカルカンパニーでした。
NASAの整備用に指定されているほどプロフェッショナル・クオリティ(日本防錆技術協会の防錆剤性能試験によると他社製品に比べ持続性160%という防錆効果 出所:エステー)で、米国の8割の家庭にWD-40というように、シェアはWD-40が圧倒的。
サビ落とし・サビ防止ともに日本ではよりポピュラーなクレ556より有能ではないかと筆者は考えます(個人の感想です)。
「特許を取ればいいってもんじゃない」 WD-40が特許を取らなかった理由。
NASAで正式採用されるほどの製品を開発したのならば特許をとっていてもおかしくはないところ、あえて特許を取らなかったWD-40
コカ・コーラやケンタッキーがレシピを秘蔵の門外不出として、特許を取らない理由は、ざっくりいえば「特許を取ると世界に公開されてしまう」ので特許をとったら必ずしもビジネスが守られるかというとそういうわけではない、という点。
特許をとったら安心という誤解がありがちですが、実際のところ特許をとったら制度的に公開されてしまい、競合他社に研究材料をあたえてしまうので、ノウハウレベルであれば門外不出とした方が良い場合があるということですね。
特許取得が有効だった例としてはAmazonの1クリック特許はサンプルでしょうか。
Amazonは米国において1997年にAmazonが特許出願し、そして2017年に1-Click特許が失効したことが話題でした。このように出願日から20年経ったらその特許の独占権は消滅します。
ただ、100年以上のスパンでビジネスの保護をみすえた場合、レシピや製法など特定の領域の話ではありますが、特許をとらないこともビジネスとしての選択肢なのですね。
知的財産に対する考え方は戦略が多岐に渡って面白いです。公開すべきか、ノウハウとして門外不出とするか。
防錆潤滑剤でコツコツ成長してきたWD-40
1953年創業のWD-40の社名の由来はこうです。
“It took them 40 attempts to get their Water Displacing formula to work, but on the 40th attempt, they got it right in a big way.”
腐食防止のための水置換(Water Displacement:水に濡れた物質の表面からその水を剥がす)40回目に成功し製品が誕生したという経緯から。
まさに一家に一台、保護・防錆(サビの防止)などの目的で使われる。使用量でみると工場や現場などでの需要が主体となる。
また、上図のようなプロフェッショナル向け(スペシャリスト・ラインナップ)の伸びが大きい。
WD-40自体の製品のマージン拡大に寄与する高付加価値版のラインナップ増強。
たとえばWD-40 EZ-REACHは強度のあるノズルで届きづらい場所に噴射しやすいなど。クレ556のようなスティックタイプは販売していないようだ。
WD-40は規律あるビジネスモデルとして55/30/25目標を設けている。
グロスマージン55%、ビジネスに直接関係のあるコスト35%、EBITDAマージン25%
WD-40の最も一般的な缶のコスト内訳を見ると興味深い。
そういえばプラスチックは今世界的に問題となっているので影響はどの程度だろうか?
プラスチックごみの最大の輸出先だった中国の禁輸をうけて元々海洋汚染で問題視されていたプラスチックゴミ問題が急速に世界的緊急課題に浮上。
石油を原料とするプラスチックはクレディスイスによるとかなりのペースで増え続ける予想だったので…プラスチックに依存していたのはこんなかんじ pic.twitter.com/3F4elAuLqd
— アメリカ部/米国株投資アンテナ (@america_kabu) October 20, 2018
WD-40は2025年の目標を上記のように掲げている。
地域別でいうとアジア・太平洋での伸びに期待しているようだ。
WD-40がみる国別の市場機会は上記のようになっている。
スペシャリスト・ラインナップ拡大で補強。
この下段のWD-40ブランド製品群がなぜダメだと思うのか?について書きたかったが全部書いてしまうとマガジン購読者に申し訳ないので興味がある方はWD-40にデータを中心に詳細にまとめたマガジンを読んでいただきたい。
セグメントで分けると上記の通り。
従業員のエンゲージメントは高いようだ。
WD-40の業績推移グラフ
このグラフ元データはMorningstarからで、筆者はノーチェックなので必ずしも正確なわけではないことを注記しておく。実際ROICが会社資料と違うし、参考程度で。
筆者自身が過去IRをつぶさにチェックして構成した会社資料に基づくセグメント別売上高推移グラフ、地域別売上高成長率、20年間の売上高・グロスマージン推移、などビジネスデータはnote「月刊 米国株決算祭り」でマガジン形式で提供しているので、より深いデータや考察および最新の決算について知りたい場合は以下を参考にしてください。
WD-40決算 (NASDAQ:WDFC) <1/9>
EPS $0.95 予想 +$0.03
売上 $101.28M (+3.8% Y/Y) 予想 +$2.18M米国の家庭の8割で常備されるNASAクオリティの防錆潤滑剤メーカー「WD-40」https://t.co/M95FCHbyGU
クレ556が日本では有名ですが米国ではコレ。 特許をあえてとらず秘蔵レシピ化してるのが面白い。— 米国株 決算マン (@KessanMan) January 12, 2019
<WD-40の株価>
WD-40の決算を時系列でまとめる
<WD-40 ’19 Q1決算> 2019/1/9
EPS $0.95 予想 +$0.03
売上 $101.28M (+3.8% Y/Y) 予想 +$2.18M
みんなの投資分析とコメント
たまたまこちらのサイトを発見しましたが、面白いですね。大変勉強になります。ちなみに、アメリカ文化の影響が色濃い沖縄では誰もが知っている商品です。