Stitch Fix【NASDAQ:SFIX】の最新の決算およびビジネス状況を四半期ごとに定点観測し追記していく記事。
Stitch Fixはデータ+AIでサポートされたスタイリスト達とユーザーとスタイルに合う好みの服をマッチングしてくれるスタイリングECサービス。
Stitch Fixのビジネスモデルについては以前記事にしているのであわせて参考にしてください。
以下、Stitch Fixの決算データのまとめと、Stitch Fixのビジネスの定点観測。
Stitch Fixの業績推移と最新データ
スティッチフィックスQ2'19決算の補足
・AIサポートの4000人のスタイリストがスタイルに合う好みの服を選んでくれるスタイリングEC
・Q4から英国事業開始
・Q2で広告絞ったがQ3では従来と違うタイプのブランディング広告投下
・顧客あたり売上高+6.1% Y/Yhttps://t.co/4QEC0YySYn— 米国株 決算マン (@KessanMan) March 12, 2019
アクティブクライアント数は過去12ヶ月の間にStitch Fixを一度でも利用したユーザー数で約300万人。
<Q1’19までのまとめ>
グロスマージンはシッピング・運送コスト増が負担となっているが、倉庫の効率、在庫管理効率を上げたことで相殺。
短期的に回収可能なバランスにおさえつつも広告費は増えている。インハウス化によって相対的にはコストを削減し知見を得られたという。
前年比ではフリーキャッシュフロー・マージンやEBITDAマージンを改善。
Stitch Fix Plus(サイズの大きい女性用)やStitch Fix Kidsなどのカテゴリーの拡大、積極的に広告投下、そしてイギリス進出を発表。
Stitch Fixのビジネスを掘り下げるデータ補足
米国のアパレル市場のうちオンライン比率は20.4%(2017年時点)だが、年平均成長率は13.8%と予想されているオンラインの比率はさらに高まる見込み。
Stitch Fixは提携アパレルメーカーのファッションアイテムだけでなく、Stitch Fixのブランドも混ぜることで利益率を上げようとしている。
顧客の好みのデータを直接保有する顧客に一番近いレイヤーをおさえているからこそ、このプライベートブランドのポテンシャルはありそうだ。(日本でいえばプラットフォーマーであるZOZOも同様にPBで攻めている)
だいたい前回の記事で概説したが、改めてStitch Fixについて解説すると、まずは登録時に入力してもらったデータを元にアルゴリズムでStitch Fixの3700人以上のスタイリストとマッチングし、送付した5つの商品フィードバックによって精度を上げていく構造。
全て返品可能で、スタイリングフィー(送料含む)を20ドル支払うだけで、1つでも購入すればその20ドル分は割り引かれる。
AIがフィーチャーされがちだが、Stitch Fixにとってスタイリストは重要(3700人もいる)。
AIはデータを元にスタイリストをサポートしている。
だが、いくらデータによるマッチングとはいえ、好みを把握することはそう簡単な話ではない。
送られてきた5つの商品だけで好みを把握することはデータサンプルが少なく、その問題を解決するためにStyle Shuffleという自分の好みをTinderみたいに(スワイプではないが)有りか無しか選択していくゲームを2017年からテストしはじめ、2018年1月にMessengerで投入し、好評のためStitch Fixアプリで全ユーザーが利用可能となっている。
AI+3700人のスタイリストによるスタイリングECのStitch Fix
…のStyle Shuffleっていう自分の好みをTinderみたいに(スワイプではないが)有りか無しか選択していくゲーム
Stitch Fixで自分の好みの服が提案される精度が上がりそうでいいね。https://t.co/0wojqDB56v pic.twitter.com/rwK9ndb1RI
— 気になる企業調べる🐘 (@kininaruzou) October 1, 2018
オプションでしかないが、好みの商品が送られてこないと不満足なユーザーにはStyle Shuffleを使うことを奨励しているようだ。
だが、そうなってくると自分でECで商品を探しに行くこととユーザーの労力とのギャップが縮まる気もするが。それこそシャッフルしている間に「この商品が欲しい」けどStyle Shuffleじゃ買えない、なんてことにならないのだろうか…。
Stitch Fixによると、顧客満足度とリレーションはこれによって改善できたという。
具体的にはQ4’18でこのスタイルシャッフルから得られたデータを実際に顧客に送付するアイテムの選定アルゴリズムに反映したところ、平均注文額が上昇したとのこと。
ARPU(ユーザーあたり売上高)のコホートはぼちぼち。
いずれにせよ、Stitch Fixはオールラウンドに女性版・男性版・キッズ版・太めの女性版と幅広いカテゴリを攻めているが、それぞれのジャンルに特化した競合がひしめいている市場で排他的で強力なMoatがあるかというとそれほどない。
サブスクリプションサービスでもないのでマインドシェアの維持が極めて重要。
ECの課題である試着してから気に入った商品だけ購入できるという点ではAmazonもプライムワードローブで気軽に返品できる取り組みを行っているのでその圧力がどの程度あるか見極めが必要。
Stitch Fixの株価
株価は数ヶ月で2倍になっていたがQ4’18決算の成長率鈍化をうけて株価は時間外で-20%と下落。
Stitch Fixの決算を時系列でまとめる
<Stitch Fix ’19 Q2決算> 2019/3/11
EPS(Non-GAAP) $0.12 予想 +$0.07
売上 $370.28M (+25.1% Y/Y) 予想 +$5.42M
調整後EBITDA $19.2M 予想 +$7.9M
<Stitch Fix ’19 Q1決算> 2018/12/10
EPS $0.10 予想 +$0.07
売上 $366.24M (+23.9% Y/Y) 予想 +$8.18M
<Q2ガイダンス>
売上 $360~$368M (予:$362.7M) 22%~24% Y/Y
調整後EBITDA $8~$12M (予:$12.8M) 2.2%~3.3% margin
<FY19ガイダンス>
売上 $1.49~$1.53B (予:$1.51B) 21%~25% Y/Y
調整後EBITDA $20~$40M (予:$34.8M) 1.3%~2.6% margin
この地合いだと微妙な決算。
リードタイム短縮やパーソナライズの改善などの結果、女性顧客に関して、送付したアイテムの購入件数が記録的に最高レベルに達したとのこと。
<Stitch Fix ’18 Q4決算> 2018/10/1
EPS $0.17 予想 +$0.13
売上 $318.3M (+23.2% Y/Y) in-line
<Q3時点で発表していたQ4ガイダンスと比較>
売上 20~24%(前年比成長率) ⇒結果23.2%(前年比)
Adjusted EBITDA margin 1.9~3.4% ⇒結果3.49%
英国版Stitch Fixを発表。現在はウェイトリスト登録可能にとどまる。
2017年以降、在庫ラインナップに、低価格商品(1アイテム20〜50ドル)とプレミアムブランド(1アイテム100〜600ドル)の両端を拡張し、これらがQ4’18で2倍に成長。
ミレニアル世代はコスパよいアイテムにささるし、高価格帯ブランドの品揃えの向上はストック効果か50歳以上のユーザーの満足度が向上したようだ。
インハウス化しつつある広告やマーケティングの効率性を高めるため、様々なテストを行う中で、10週に渡って全米規模のテレビ広告を止めてみたところ、結論するとテレビ広告は予想していたよりも効果が高いと分かったようだ。
今回のテストによって得られた知見によりテレビ広告とその他のマーケティング戦略における比率を最適化していくという。
<Q1’19ガイダンス>
売上 $354~$360M 20%~22%(Y/Y)
調整後EBITDAマージン 1.4%~2.5%
<FY2019ガイダンス>
売上 $1.47~$1.53B 20%~25%(Y/Y)
調整後EBITDAマージン 1.4%~2.6%
このガイダンスには英国版Stitch Fixのインパクトは含まれていない。
<Stitch Fix ’18 Q3決算> 2018/6/7
EPS $0.09 予想 +$0.06
売上 $316.74M (+29.2% Y/Y) 予想 +$10.39M
<FY18ガイダンス引き上げ>
売上 $1.22B~$1.23B(コンセンサス: $1.21B)
成長と利益のバランスをとっていくと。